入院と見舞い。
目を覚ますと、思ったとおりリイナとショーの顔があった。
僕はなぜかとても安心した。
暖かい気持ちになった。
その後、検査等をされ、僕は医師に全治二ヶ月、三週間入院と宣告された。
仕方ない。
親は仕事が忙しく、ほとんど僕のところに来ることはなかった。代わりに、リイナとショーがやって来たので、大して退屈せずにすんだ。
ある日のこと。
コンコン
外で誰かが呼んでいる。まあ、リイナ達だろうけど。
「はい。」
僕は返事をした。
現れたのは、リイナだけだった。
「ショーは?」
「今日はデートだって。」
あの野郎…と一瞬思った俺が悔しい。
友達を作らないんじゃなかったのか?
「だから、今日は私とリクの二人きり。」
ウゲッ ラブフラグ。
そんな俺をよそに、リイナはリンゴを剥き始めた。
「リンゴ、好き?」
リイナが僕に聞いてきた。
「あ、まぁ…」
嘘ではない。リンゴは好きだ。小学生の頃はよく自分で買いに出かけたっけ…
「星野先生と木村先生から聞いたわ…リクの話…」
リンゴを剥きつつリイナが言う。
「あの、話か…」
あの日、死んだと思って回想していたエピソード…
イジメそのものは公にされて、被害者や加害者のことはリイナも知っているだろうが、僕が関わっていたことはあまり知られていなかったようだ…
「あれのせいなんだよね?リクが内向きになったのは。」
……そうだ。でも、口に出せない。
「仕方ないと思う。自分や親友が、仲間に裏切られたなんてことになったら。」
あっさりとリイナは言った。
「君に何がわかる。」
僕はまたリイナに言ってやった。
「わかんない…でも、想像はできる。」
こいつ…
リイナは、リンゴを剥き終え、皿に盛り、手を洗うとまた、あの日みたいに僕の手を握った。
「辛いと思ったら、一人で抱え込まなくていいから。私が、リクを全部受け止めるから。」
臭いセリフだ。でも、偽りは感じられない。
不思議だ。
なんか、泣けてきた。
「リイナ…」
気づけば、僕はリイナに抱きついていた。
普段じゃ絶対できない。いや、しない。
でも、そうでもしないと。凍りついた心が急速に解凍され、崩れてしまいそうで…
何かにしがみついていないとダメで…
「うん…甘えていいんだよ、リク。」
リイナは僕を受け止めながら言った。
しばらくして、僕はリイナから離れた。
かなり恥ずかしいことをしたと思う…
「リンゴ、食べてね。」
リイナはそう言って、病室から出て行った。
 




