暗闇と過去。
真っ暗な空間だ…
ここには僕しかいないようだ。
ここは…どこ?
さっき、車に轢かれて、意識を失って…
そっか、僕は死んだのか…
人生15年かー 短かったような、長かったような…
真っ暗な空間で、僕は自分の人生を振り返っていた。そして、ここ数年の出来事は、僕の人生に大きな影響を与えている事に気がついた。良くも、悪くも。
僕にはアキラという友人、否、親友がいた。
小学校の頃から仲良しで、よく一緒に悪さをしては、木村先生に怒られていたっけ…
中高一貫校に上がると僕が言った時も、アキラはついて来た。僕らは決して成績も素行も良いわけじゃなかったが、木村先生の熱意ある指導と内申書のごまかしで何とか無事、合格した。
僕らは中学でも親友だった。
中学で新しく知り合った庄司や智則と、夏休みは遊び歩いた。そのせいで、夏休みの宿題をすっぽかして、先生にマヂギレされて一ヶ月補習になったけど。
あの頃は一番青春していたと思う。
でも、楽しい事は長くは続かないというのが世の定めなのか…それにしても、なぜアキラが…
いじめ、自殺…
僕らには縁がないワードだと思っていた。
テレビの向こうの世界の出来事だと。
でも、僕の親友は、いじめを苦に、自殺した。
二年生の秋。
クラスの中心になっている真司が、教師に怒られた腹いせに、一番体の小さいアキラを殴ったのが始まりだった。
最初こそ、真司とその取り巻きだけでいじめは行われていたし、僕や庄司、智則が庇っていたから、あまり酷くならなかった。
しかし、真司は傍観者を脅し、仲間にし、執拗かつ悪質ないじめをした。
アキラの靴がメチャクチャになる事もあった。菌扱いもした。ワザとぶつかった。
ある日、真司はアキラの口を殴り、大きなケガを作った。アキラは何も言わず過ごしていたが、その頃にはクラスのほとんど全員が敵で、腫れた顔をみんなして笑っていた。
ガマンは限度を超え、僕は担任に事実を告げようとした。
しかし、担任を待っている時、近くにいた庄司と智則の話を聞いてしまった。
2人も、いつからか敵になっていた。
2人は、庇っているふりをしていたのだ。
だって…2人とも、アキラの事をバカにしていたのだから。
ショックだった…結局その日は先生に相談する事ができずに帰ってしまった…
翌日の朝、アキラは自分の部屋で首をくくって死んでいたのを発見された。
マスコミによって、この事件は報道され、真司たちは転校を余儀なくされた。
そして、加害者になっていた元傍観者は、ようやく過ちに気づき、葬式で泣いて詫びていた。
僕は?泣いてなかった…
涙が、出なかった…
もしかしたら、涙が出ない体になったのかも、と思うこともあった。
僕は何なんだ?
友達って、何?
彼の死は、僕に深い傷を与え、僕に友達を捨てる決意をさせた。
友達なんていらない。
始めからなければ、失うことはないんだから。
でも…
何で、今、泣いてるんだろう…
淋しい…誰か…
誰か…!
バーカ。私はここにいるよ。
ボクもいるよ♪
リイナとショーの声が聞こえる…
僕は、一人じゃない…のか。
不意に、両手に暖かみを感じた。
まるで、誰かが握ってるみたいだ。
僕は、そっと握り返した。
暗闇が、白く染まる。
そして、白の空間から、色が、形が、増えてゆき、病室のような空間を作った。
僕は、目を…覚ました。




