78話 鍵となる者
「村川漢頭…?こいつには名前なんてなかったはずでは…?」
とピエーヌは村上漢頭を指差して言った。
「彼に名前はない。俺が名づけた、仮の名前だ」
とデリットは言った。
ピエーヌはデリットに聞いた。
「なぜそんな人間を守ろうとするのです?デリット…」
「こいつは俺の呪憎裏の‘鍵,となる者だ。俺と同じ宿命、‘裏切られる,のな…」
とデリットは答えた。
「鍵?鍵とはなんです…?」
とピエーヌは聞いたが、デリットは言った。
「それ以上答える筋合いはない。天国にいる奴らから聞いてくれ…」
「いや、ワタクシはきっと地獄に行くと思いますがねぇ!!」
とピエーヌは言い、デリットに襲い掛かった。
すると村上漢頭は亡霊の番傘を開いた。
それと同時にデリットの手から亡霊の番傘とまったく同じ物が出てきた。
デリットはその傘を使い、ピエーヌのパンチを防御した。
「技鏡ですか…。厄介な能力ですね…」
とピエーヌはデリットから距離を取り言った。
デリットは傘を閉じ、ピエーヌに言った。
「こいつの悪魔武器は絶対防御とも言われ、まるで傘に守護霊が取りついているのではないかという説がある。そして俺は、ピエーヌ…お前より威力の高い攻撃を放つことができる!!」
そう言うと、デリットの額は赤い♥に変わり、口から炎が出てきた。
しかし、その炎は強烈な閃光によって砕け散ってしまった。
「さがれ、ピエーヌ」
という言葉を聞いたピエーヌは「はっ!」と言い、退いた。
狩武はデリットの前に立ち、言った。
「お前は…生かしておくと厄介だな…。デリット…」
「いよいよ親玉登場か…。来い」
とデリットは狩武に言った。
時刻は午前3時45分。
住宅街にある光は電柱柱と自動販売機だけになり、ほとんどの人々は眠りに落ちていた。
しかし、僕だけは起きていた。
眠れなかったのだ。実の兄が父さんの親友の生まれ変わりだってことと、今一体、兄は何をやっているのか…。僕は不安の気持ちで眠れなかった。
「眠れないのか…?隼人」
とレアルが黒い箱から出てきて言った。
「うわっ!!びっくりした~。幽霊かと思ったじゃないか…」
と僕はレアルに言った。
「悪魔って幽霊みたいなものだろ…」
とレアルは言い、僕の机に座った。
「なぁ、レアル…」
と僕はレアルに聞いた。
「ん?」
とレアルは言い、僕は聞いた。
「魔神に選ばれし三悪魔って一体なんなの?」
レアルは悲しい顔をした。
それに気づいた僕は「あっ、ごめん、聞いちゃいけなかったかな?」と聞いた。
しかし、レアルは「そうだな、そろそろ教えないとな」と言い、窓の外を見た。
空は真っ暗でただ満月だけが光っていた。
「魔神に選ばれし三悪魔とは、ある三つの宿命を持つ小悪魔のことを言う。アタシは幼いころ人間の賢者に呪われ、頭も運動も優れていたラーシは、他の悪魔から憎まれ、デリットは友に裏切られた。そして、アタシたちは魔神に小悪魔からの成長を止められた」
とレアルは満月を見つめて言った。
「つまりそれって…」と僕は聞いた。
「永遠に小悪魔の姿ってことだ。アタシはもう27年間生きている。が、いつまで経っても小悪魔のままだ…」
「なんとか、戻す方法はないのか…!?」
と僕は聞いたが、レアルは答えた。
「ダメだ。今はお前の兄をどうにかしなきゃいけない。それに、アタシの呪憎裏は三人の中で一番解けられないんだ…」