59話 隼人誕生と親友の戦い
【直人三十六歳】
母さんが出産手術中のとき、狩武は病院の屋上に俺を呼んで正体を現した。
狩武は、天界道のトップに君臨した神。ゼウスと、地獄道…つまり悪魔界のトップに君臨した初代悪魔王。ルシファーデーモン。そして、俺の親友。河原 勝人の生まれ変わりだったのだ。
狩武は俺に言った。
「覚えてるかい父さん?アンタが大学生のとき俺に言った言葉。絶対にお前より信頼される教師になるってな。俺はもう昔とはちがう。教師じゃなくて、この世の支配者を目指す!」
俺はそのとき、
そんなことできようはずがないだろう。と思ったが、
天界のトップと悪魔界のトップの生まれ変わりなら可能なのかもしれない。
そもそも、そんなことをしようとすれば狩武と人間、つまり神&魔王vs人間という戦争を生み出してしまう。
狩武には俺の声は届かなかった。
そして俺は選択した。狩武を封印することに。
だが、そのときの俺はまだ悪魔の邪眼ではなかった。
そもそも悪魔の邪眼という悪魔武器は心臓に取り付ける機械のようなものだった。
悪魔王 デスターヌの目玉から生み出される武器だったのだ。
まぁ、デスターヌは失明したわけではない。再生能力が高かったため、一ヶ月で目玉は回復した。
そして松田家に代々受け継がれる遺品が、今、俺の心臓にある悪魔の邪眼だった。
俺は自宅に入り、箱の中から機械の塊を出し、それを飲み込んだ。
想像を絶する吐き気、そして身体中が重力でゴチャゴチャした感じだった。
そして、その日 俺は悪魔の邪眼になった。
その後、病院の屋上に戻り狩武の前に立った。
そして狩武と戦い…封印した。自力では出ることのできない無の世界に…。
そのときだった。
屋上に看護婦さんが来て、言ったのだ。
「生まれました!元気な男の子ですよ!」と…。
その言葉と同時に空が晴れた。
狩武を封印したとき、狩武の持つ神と魔王の力を二つに分けた。
それが、後に天使の継承と悪魔の継承になる。
その後、
俺は母さんの記憶から狩武の情報を抹消し、狩武の知り合いの記憶から狩武の情報を抹消した。
そして、狩武のことを知っているのは奴の仲間と…、俺だけになった。
【現在】
「じゃあ、悪魔の継承ってのは、その狩武の力だっていうのか…?」
と僕は父さんに聞くと、父さんは答えた。
「そうだ。狩武をこの世に解き放したら戦争が起こる。この天使と悪魔の戦いは、俺と勝人…俺たち親子が引き起こした戦いなんだ。どうか力になってくれ…隼人…」
「うッス!!」
と僕が返事を返したとき、マースさんと黒鳥が起き上がった。
そして、僕たちは天真の捜索を開始した。