44話 無に生きる者
悪魔王が自爆したことにより、僕は爆発に巻き込まれ意識を失った。
そして目が覚めたとき、僕は光も音も何も無い空間にいた。
僕は身体を起こすと、目の前に僕にそっくりな人がいることに気がついた。
確かにそっくりだが僕より大人っぽいオーラを放っている。
おたがい見つめ合ったとき、僕にそっくりな人は僕に話しかけた。
「お前もここに来てしまったか…。」
「ここはどこなんです?」と僕は単刀直入に聞いた。
すると僕にそっくりな人は語り始めた。
「よくぞ聞いてくれました。この世には、四つの世界がある。まずお前たちがいる人間界。悪魔たちが生きている悪魔界。天使たちがいる天空界。そしてここは、何もない無の世界。」
「ここから出る方法は…!?」
僕は自分にそっくりな人に聞いた。するとその人は質問に答えた。
「出る方法なんてない、ここは爆発したことにより生み出されるブラックホールの中だ。吸い込まれたら終わり、ここで命が尽きるのを待つだけだ。」
「おい…おいおいおいっ!ウソだろ…!?」
と僕はその話が信じられなかった。
「俺たちがここにいる原因は、重力使いの自爆の技でブラックホールに吸い込まれたからだ。」
と僕にそっくりな人は言った。
僕はハッとした顔で聞いた。
「じゃあ…朱希羅は無事だったのか…、爆発の寸前に黒い箱を使って悪魔界に行ったんだな…。よかった…。」
「自分の心配をしたらどうだ?」と僕にそっくりな人は僕に聞いてきた。
僕はその人を見て聞いた。
「あなたは…一体何者なんです…?」
そっくりな人は答えた。
「名は無い、過去に記憶から消えた。自分が何者かは知ってるが、名は知らない。だが三大悪魔武器の一つ悪魔の邪眼の知り合いだ。」
「あのおじさんと…?」
僕はそう言うとそっくりな人は笑いながら僕に話しかけた。
「フッ…おじさん…ねぇ…。」
その頃、
人間界の住宅街では巨大なブラックホールが住宅街を覆っていた。
そこにレアルと朱希羅と真司とマースさんと黒鳥が黒い箱を使って、悪魔界から人間界に現れた。
「きっと隼人はあの中だ!」
と朱希羅はブラックホールを指差して言った。
「あのブラックホールに穴を開ければ、隼人が帰ってくる道を開けるかもしれない!やろう、みんな!」
と真司がみんなに声を上げ、皆一斉にブラックホールに向かって攻撃を仕掛けた。
一方、
ブラックホールの中にいる僕とそのそっくりな人はまだ話していた。
「オレは、かつて悪魔の邪眼と戦って、ここに封印された。今から15年前だ。」
とそっくりな人はいきなり話の話題を変えた。
「なんで封印なんかされたんですか!?あの人は悪い人じゃないはず…!!」
僕がそう言いかけた瞬間、そっくりな人は僕に言った。
「人間、いい人なんて存在しないんだ。」
その言葉を聞くと僕は「えっ!?」と聞き返してしまった。
そっくりな人は話を続けた。
「人間は自分を第一に考え、欲が減らない存在だ。だから戦争が起き、遥か昔から戦い続けてきた。お互い傷つけ合い、憎しみが生まれ、またその憎しみは新たな憎しみを生む。俺から見たら人間は怪物だ。」
「そんなことないですよ!」
と僕はそっくりな人に言った。
そっくりな人は僕を睨みつけ言った。
「…朱希羅とか言ったな?そいつだって、重力使いが自爆するとき、自分のために黒い箱を使って悪魔界に行ったのだろう?お前を置き去りにして。」
そのとき、
ドォン!!という音が聞こえた。
「なんだこの音は!?」僕は辺りを見渡して言った。
すると光が見えた。その光はだんだん大きくなっていった。
光の方から僕を呼ぶ声が聞こえた。
「この声は…!!」
僕はその光に飛び込もうとしたが、立ち止って後ろを振り向き、そっくりな人を見た。
「やっぱりあなたから先行ってくれ、15年もここにいたんだもんな。」
そっくりな人は驚いた表情で僕に言った。
「人間と言うのは、面白い存在だな。お前みたいな奴もいるのか…。」
そんなことを言っていると光がどんどん小さくなっていった。
そっくりな人は僕に言った。
「お前が行け、その者たちはお前を助けに来たんだろう?」
「でも…!!」と僕が言い返そうとした瞬間、突風が僕を光の方に飛ばした。
僕は光に包まれ、その空間から出る瞬間、そっくりな人に言った。
「助けに行くから!!それまで生きていてくれ!!絶対に助けに行くからなぁぁぁぁぁ!!!」
そして僕は住宅街に戻った。
ブラックホールは僕が現れたのと同時に消え、僕はみんなと再会を果たした。
レアルが僕たちに言った。
「よし、あとはサタンデーモンを倒すだけだ!!」
一方、
ブラックホールにいるそっくりな人は独り言を言っていた。
「お前も、いい仲間を持ったな……弟よ…。」