表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪魔の継承  作者: 夜海 来火
最終章 二人の魔術師
229/231

222話 最後のメッセージ

「終わりだぁ‼‼」

魔神の拳を宿した強烈な一撃が黒い巨人に直撃した。


そして、黒い巨人は液体と化してしまい、もう、動かなかった。


「終わったのか……」

立ち上がり、床に突き刺さっている天魔の錫杖(ゴッドヘル)を手に持った僕は言う。


すると天魔の錫杖(ゴッドヘル)は光と共に消え、僕の天魔化および悪魔化と天使化は解け、元の人間に戻った。


だが、そのとき……。


「ぐぅ……‼あぁ……っ‼‼」

とうめき声を上げ、足を押さえながら僕はその場に横たわった。


とてつもない痛みが左足から感じる。

そう、あのときだ。

黒い巨人のパンチを避け切れず、左足に直撃したとき、天魔化したおかげでダメージは感じなかったが、実際、身体は大ダメージを受けていたのだ。


左足の骨が折れているのか、僕は歩くことも立ち上がることもできなくなってしまった。




ドカンンン‼‼



城の一部が爆発した。

どうやら、少しずつ爆発して行くのだろう。

僕のいるホールはまだ爆発していないが、いずれ爆発する。

僕は逃げたい気持ちでいっぱいだったが、逃げられなかった。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ‼‼


と地響きとともに、聞こえてくる爆発音。

死の恐怖が漂う中、立ち上がることができない僕は、空を見上げた。


天井はかなり遠いが開いていて、歪んだ空が見えたのだ。


「みんな……」


と一言、歪んだ空を見上げた僕は言うと、ポケットから携帯を取り出した。


携帯はボロボロだが、幸いにも中身は無事だった。

僕は携帯のメニューの通話機能を選択し、携帯を耳に当てた。






《ティリリリ♫》


ジンの城から離れるために、ジャックさんの車に乗り、移動する天真たち。


「おい!城が爆発したぞ!」

と気を取り戻した聖弥は言うと、突如、真司の携帯が鳴り始めた。


「なんじゃ⁉何事じゃ⁉」

と携帯を知らない神話時代のルークさんは着信音を聞いて混乱したが、真司は綺麗にルークさんをスルーし、携帯の通話ボタンを押した。


そして、僕に問いかけた。

「もしもし!隼人か!今はどうなっている⁉城が爆発してるぞ!」


《俺はもう……多分、ここで死ぬ》


という僕の返事を聞いた真司は僕に問いた。

少し震えた声で。


「死ぬってどういうことだ……?」


《奴を倒せばこの城は爆発することはわかってた。倒したらすぐに逃げようとしたが、先ほどの戦いで、足の骨を折られたんだ》


「おい、冗談よせよ。隼人」


《城は今もなお爆発し続けている。そのうち、俺がいるこのホールも……》


「ふざけんなよ‼‼」


と真司は携帯に向かっていきなり怒鳴った。


ジャックの車は城から少し離れた山道で停車した。

真司は携帯を耳に当てたまま、車から降り、山道から城のようすを見た。


所々爆発していた。

真司は携帯に向かってさらに怒鳴った。


「ここで死ぬなんて、おかしいだろ!お前は昔、俺たちに死ぬなよって何度も言ったのに!お前は勝手に死ぬ気かよ!」


《……あぁ、そうだ》


と僕は答えた。


そのとき、城の一部分が爆発した。


真司たちがいた山道にも爆発音は聞こえてくるが、害はなにもなかった。


「隼人⁉無事か⁉」

と真司は爆発した城のようすを見て言う。


《大丈夫だ……。だけど、火がホールに燃え移って来たな》


「なんだと⁉今ならまだ間に合う!」

と真司は言うと、僕は真司を止めた。


《よく聞いてくれ、真司。俺にとってお前は一番最初にできた友達なんだ。だから、友達をこれ以上、危険な目にはさせたくないんだ》


その声は真司だけでなく、真司の近くにいる人たちにも聞こえた。


《お前を含め、今の俺にはたくさんの仲間がいる。マースさんや黒鳥や朱希羅、天真たち天使に狩武、ジャックさんや、一緒に旅したルークさんと江川とルリ、デリットにラーシにラース……。そして……レアル。皆は俺のために、命を賭けてくれたんだ。だから、ここで死のうが、俺は良い!皆が平和な世の中で生きることができるなら!皆が幸せになれるなら!だから、皆は生きてくれ!俺の分まで!》


そして、通話が途切れた。


みんな、僕の死に涙目になっていた。

いやぁ、本当に良い仲間たちですね。


真司は涙目になりながら、次々と爆発して行く城を見た。


「……行こう」


と真司のとなりで城を眺めていたレアルは言った。

ジャックはレアルに聞く。

「行こうってどこに……?」


すると、黒鳥が答えた。

「行く場所は一つじゃないですか!」

そしてルークさんが言う。

「こんなムードで幸せになれるわけないじゃろう」

天真も立ち上がり言う。

「俺の天使の継承(インヘリタンス)もあいつが持ってるしな」

「よーし!行くぞ!」

と真司は言うと、皆はジャックの車に乗り込んだ。


「わかった!運転は俺に任せろ!」

とジャックは言い、車をUターンさせて、再び走り出した。




そのころ、爆発していく城のホールに横たわっていた僕は、歪んだ空を見上げていた。


《チャンチャカチャン♫》


と携帯がいきなり鳴り始めた。

このメロディーはメールがきた着信音だ。


僕は横たわったまま、携帯を開き、メールを見ると、なんだか涙が込み上げてきた。


『全員、生きて帰るぞ!』


というメッセージだけだった。

だが、それだけでも涙が出て来たのだ。


そのとき、ホールの壁が崩壊した。


崩壊した壁の向こうには皆が立っていた。

「帰るぞ、この野郎」

と真司は言うと、横たわっている僕の肩を組んだ。


「すぐにこの城から脱出するぞ!」

とレアルは言うと、僕たちは急いで車に乗り込み、城から脱出した。


脱出した瞬間、城が爆発し、僕たちは被害を受けなかったが、車が爆風で猛スピードで走っていった。


「よし、このまま天魔の聖堂の山のふもとの町まで行くぞ!」

とジャックは言い、僕たちが乗った車は山のふもとの町へと向かって行った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ