220話 圧倒的な反撃‼
天魔の錫杖を構えた僕を見て、ジンは思った。
(今の奴は最強の魔術師とほぼ同じ存在……。さすが元最強の魔術師とその生まれ変わりだ……)
そのとき、激しく大地が揺れ、空が歪み始めた。
「なんだ⁉この揺れは⁉」
と僕は言うと、ジンは答えた。
「まもなく世界は四つに別れる。だが、別れる前に、お前を倒す」
「倒されるのはお前だ!ジン!」
と僕は言うと、両者は互いに攻撃を仕掛けた。
一方、山のふもとの町では朱希羅も混乱していた。
「なんだ⁉地震か⁉しかも空も歪んでる!」
と路上の上で朱希羅は言うと、江川は朱希羅に言う。
「そんなことより、まずはこいつらだ‼」
と江川は襲いかかってくる二体の死神を見て言うと、一体の死神を炎を帯びた二刀流で斬り裂き、もう一体の頭をつかみ、そのまま炎で二体目を溶かした。
「ふぅ~、ざっと死神は片付けたな。あぁ~、疲れた」
と朱希羅は言うと、その路上にセレシアがやって来た。
「町の住民の避難は全員終わった。お前らも討伐は終わったか?」
とセレシアは聞くと、朱希羅は答えた。
「あぁ、こっちも全員片付けた。……多分」
「よし、ならすぐにジンのアジトに行き、隼人の援護をしに行くぞ」
と江川は言うと、三人にある声が聞こえた。
「待ちんさい!死神はまだおるぞよ!」
「な⁉」
と朱希羅は言い、朱希羅たちは後ろを振り向いた。
そこにいたのはヒュードラッド仙人だった。
「あなたは!無事だったんですか⁉」
と江川は言うと、ヒュードラッド仙人は答えた。
「フォフォフォ、あの程度で殺られるようなワシではないわい!」
セレシアはヒュードラッド仙人に聞いた。
「それより、死神がまだいるというのは本当か?」
「当たり前じゃ。ここで嘘をついてどうする。奴らはこの町の建物内に隠れておるぞ」
「建物内に⁉よし、すぐに捜索だ!」
と朱希羅は言うと、ヒュードラッド仙人は朱希羅に言う。
「フォフォフォ、お前さんたちはワシに任せて、ここで見てなさい。」
「見てなさい。って……一人で戦う気ですか⁉危険です!俺たちが……」
と江川がヒュードラッド仙人に言おうとしたとき、ヒュードラッド仙人は江川に言う。
「ワシを誰だと思っとる。最強の魔術師の師じゃぞ」
とヒュードラッド仙人は言うと、地面に手を添える。
すると、地面から光り輝く魔法陣が出現した。
「死神の数は……16、いや、18じゃな……」
とヒュードラッド仙人は言うと、光り輝く魔法陣から18体の龍が現れた。
「これも魔術なのか⁉」
と朱希羅は歪んだ空を飛んでいる18体の龍を見て言うと、ヒュードラッド仙人は手を動かし、龍たちに命令すると、18体の龍はそれぞれ違う建物の屋根を突き破り、建物内に入って行った。
ヒュードラッド仙人が江川たちに説明した。
「これはワシが創り出した魔術じゃ。敵と同じ数の龍を黄泉の国から召喚させ、召喚された龍に捕えられた者は、黄泉の国。つまりあの世へと連れていかれる」
すると、またそれぞれの龍屋根を突き破って、空を飛んだ。
それぞれの龍は死神を口にくわえている。
そして、18体の龍は死神ごと光り輝く魔法陣へと戻って行った。
「これで終わりじゃ」
とヒュードラッド仙人は言うと、江川たちは口をポカーンと開けていた。
以外にこの老人は強かったことに驚いたのだ……。
そのころ、ジンの部屋ではジンと僕が激しい戦闘を繰り広げていた。
僕はジンに向かって、魔力で創り出した炎を飛ばした。
(やはり魔術を使いこなしている……)
とジンは思うと、炎を右にステップして避け、魔力で創り出した十数個の氷の塊を僕に向かって飛ばした。
「魔術で返して来たか!」
と僕は言うと、僕は目の前に魔法陣を出現させ、魔法陣を盾にして、十数個の氷を防いだ。
そして、僕は天魔の錫杖を地面に突き刺し、ジンに向かって超高速で走り出した。
「究極悪魔化より動きが速いっ⁉」
とジンは言うと、僕はジンの背後に回り込み、ジンを蹴り上げた。
そして、すぐにジャンプの態勢になり、空中に蹴り上げられたジンの目の前までジャンプしたとき、僕はジンの胸の第三の眼を手で押さえた。
第三の眼の視界を見えなくさせれば、ジンは瞬間移動できないからだ。
そして、右手で第三の眼を押さえている僕は左手を勢いよく何かを引っ張るように、自分のほうに引き寄せた。
すると、先ほど床に突き刺した錫杖が僕に向かって動き出した。
そして、僕は自分に向かって飛んでくる錫杖を手に取ると、ジンの目の前で魔術を発動した。
「くそ!動けない!」
とジンは言うと、僕の魔術で生み出した氷の柱がジンの身体の第三の眼を貫通した。
「ガハッ‼」
とジンは血を吐くと、僕は床に着地し、ジンに言う。
「第三の眼がなければ、ただの人か?」
「貴様……。時空間の眼の視界を閉ざすだけでなく、俺の身体に魔力の鎖を!」
「やっぱ気づいたか……」
と僕は答えると、ジンが吐血しながら僕に言う。
「錫杖が勝手に動きだしたのも魔力の鎖か……。貴様が床に錫杖を突き刺したとき、貴様は左手と錫杖を魔力の鎖で繋いだんだな……。そして、空中から錫杖を手にしたとき、ご丁寧に俺の身体に魔力の鎖を絡まらせた。ということか……」
「そうでもしないと、お前は次の攻撃を避けてたからな。第三の眼は封じても、未来を見る眼と攻撃を見切る目は封じてなかったからな。だが、鎖を絡まらせたおかげで、次の攻撃が命中した。いくら攻撃を予知しようが、見切ようが、動けなければ回避できない」
と僕は答えると、身体に氷が貫通しているジンを見上げてさらに言う。
「お前の負けだ。ジン。俺の魔術で創り出した氷の柱はお前の第三の眼を貫いた。もう、瞬間移動は使えないだろう。それにお前の身体からの出血も酷いからな……。氷を砕くほどの力も、魔術を扱う魔力も無いはずだ。もう、終わりにしよう」
と僕は言うと、ジンは血を吐きながら笑いだした。
その笑い方はまるで悪魔のようだった。
「そうだ‼この身体ではもう戦えん‼この身体ではなぁ‼」
そう言うと、ジンの口から、ドス黒い塊が滝のように飛び出した。
「しつこい奴だな。まだ何かあるのか」
と僕は言うと、ジンの身体から飛び出した黒い塊は巨人の形になり、黒い巨人は僕に向かって怒鳴った。
「お前だけは、生きては帰さん!」
「それがジンさんを利用した、化け物のお前の正体か……。加減は無しだ!全力で行く!」
と僕は言い、天魔の錫杖を構え、黒い巨人に向かって走り出した。