216話 最後の記憶
ついに僕は最後の遺品、“指輪”に触れた。
それと同時に、頭の中に何かがものすごい勢いで入ってくる感覚を感じた。
そう、最強の魔術師の記憶が僕の頭の中で呼び起こされたのだ。
「ジンさんが行方不明⁉」
とかつてのレンが村人に聞いた。
レンの住んでいる村は混乱していた。
これはレンが村にきた獣のような怪物を追い払った後のことである。
森の中にある小さな村だが、今まで獣が村にやってくることはなかったし、何より村の人気者であり、レンの師匠のジンが行方不明になってしまった。
これでは城に配達もできないし、村の警備人が一人消えてしまった。
だが、レンは別のものを感じていた。
恐ろしい何かが来るような……。
考えているとレンは鳥肌が立ってきた。
そして、レンはグズグズしていられなくなり、村から出て行った。
そう、ジンを探しに……。
そして、長い年月レンは旅を続け、ある街で一人の老人に出会った。
「そこの若いの、名は何と言う?」
「いきなりなんですか?」
とレンは答えると、老人は答えた。
「すまん、すまん。ワシの名はヒュードラッド。お主の魔力が他の者とは格が違うものじゃから、魔術師なのかと思うてな」
「魔力?俺は魔術師ではないんで。失礼します」
「ワシがお前を魔術師に育て上げてやろう。フォフォフォ。さすれば、お主が求めている人物に出会えるかもぞ」
「……いいだろう」
レンはヒュードラッド仙人の下で魔術の修行を始めた。
ヒュードラッド仙人ならジンのことを知っているのかもしれない。そう思ったからだ。
レンは世界で一番高い山で修行を重ねた。
そして、時は経ち、レンは立派な魔術師になっていた。
そのとき、突然、火山から黒い溶岩が噴火したのだ。
「何じゃあれは⁉」
とヒュードラッド仙人は言うと、黒い溶岩の正体をレンは見切った。
「黒いコートを着た……骸骨だ!」
その骸骨たちの数はとても多かった。
だが、レンはローブを身にまとい、光り輝く杖を手に持ち、骸骨たちに戦いを挑んだ。
骸骨たちはその世界の人々の魂を次々と抜き取って行った。
「やめろ‼来るな‼」
と人々は言いながら、逃げ続けるが、首を切り落とされ、たくさんの命が消えて行った。
だが、一人の魔術師が現れた。
魔術を扱い、次々と黒き骸骨を打ち消していった。
そして、その魔術師はその黒き骸骨の発信源、火山へと足を踏み入れた。
そのにいたのは、コートに身を包んだ男だった。
「お前があの骸骨たちのリーダーか!」
とレンは言い、杖を構えると、その男は答えた。
「そうだ。立派になったな。レン」
その男は素顔を見せた。
レンの目の前にいるのはあのジンだったのだ。
「なっ⁉ジンさん⁉」
「さぁ、来い!レン!」
そして、かつての師弟は戦いあった。
修行とか、組手とかではない。
互いの命を懸けた、世界を懸けた戦いを……。
その戦いは、数々の戦いの跡を残し、ジンの勝利となった。
レンの腹には剣が突き刺さってあり、身体もボロボロ。ジンもボロボロだった。
そして、レンは最後の手段を選ぶ。
「俺は……あなたを救って見せる!」
とレンは言うと、転生の魔術を発動した。
己の命を転生させる魔術だ。
すると、杖が腕輪に変化した。
そして、死ぬ間際にレンはこの世界を四つに分けたのだ。
再びこのような悲劇を起こさないように。
レンは気づいていたのだ。
今戦っているジンはジンでは無いことを。
ジンはもう一人のジンに囚われていることを。
そして、パワレルワールドが混ざり合うことが今後無いように、世界を四つに分けることにしたのだ。
「くそっ!レン!」
とジンは言うと、レンはジンのそばまで歩いて行った。
そして、レンはジンにある物を渡した。
そう、指輪だ。
「今日……は……あなたの…誕生日でしたよね…」
とレンは笑いながらジンに言った。
そして、レンは死んだ。
未来に、生まれ変わる自分に、すべてを託して死んだのだ。
そして、レンが死んだと同時に、ジンは未来の死神界へと封印された。
世界は一時の平和を手にしたのだ。
人々は黒き骸骨を倒した一人の若者を最強の魔術師と称えた。
その勇気ある行動と、愛が込められた死に、世界は争いを止め、一つとなったのだ。
だが、その一つとなった世界も四つに分散され、やがて、それぞれの世界で争いが起きた。
悪魔界では悪魔王選出試験。
天空界では内乱が起き、
人間界では戦争が行われた。
そして、一人の運命の子が生まれる。
嵐の夜に、松田隼人という名の子が……。
そして、ここから、ジンとレンの戦いが再び始まっていたのだ。
闇に囚われた師を救うため、最強の魔術師は生まれ変わった自分と協力し、やがて二人は一つとなる。
隼人とレン、二人の魔術師が共闘するのは、奇跡なのかもしれない。
そして、僕は意識を取り戻した。
気がつくと、究極悪魔化は解けてしまっていた。
「ジン……お前はもう終わりだ!」
と僕は言うと、レアルのほうに駆け寄った。
僕はレアルに触れようとした瞬間、ジンは高速のような速さで僕たちに襲いかかってきた。
「これ以上、余計なことはさせん‼」
とジンは言い、僕とレアルに攻撃を仕掛けた。
レアルの呪憎裏は解除できるのか⁉