211話 もう一人のジン
ジンとの戦闘中、突然真っ白な異空間に飛ばされてしまった僕とレン。
僕たちは何もない異空間に飛ばされたのと同時に、それぞれの身体
に分離してしまった。
さらに僕たちの前に鎖が身体中に結びつかれていたジンが現れた。
「ジン!この異空間も奴の魔術か何かか⁉」
と僕は聞くと、レンは鎖で拘束されているジンを見て言った。
「この人は……さっきまで戦っていたジンさんじゃない……」
「じゃあ……誰だよ?」
と僕は聞くと、鎖で拘束されたジンは答えた。
「お前たち、信じられないだろうが……。ジン・ジオールは俺を含めて二人いる」
するとレンは鎖で拘束されているジンに言った。
「今のあなたは、俺に武術を教えてくれたジンさんですね?」
「なっ⁉どういうことだよ⁉」
と僕は聞くと、僕たちの前にいるジンは僕たちに言った。
「今から、俺のすべてを教えてやる」
すると、真っ白な空間が変化し、僕とレンと鎖で拘束されたジンは、いつのまにか森の中にいた。
「この森は……」
とレンは言うと、ジンは答えた。
「そうだ。俺とお前が毎日修行していた森だ」
すると、森の向こうから馬に乗り、せっせと走るジンがやってきた。
僕はやってきたジンを見て言った。
「あれは!もう一人のジン‼」
「いや、ちがう。この森とあの馬も馬に乗っている俺も、すべて幻だ。今、お前たちか見ているのは、俺の中の記憶だ」
と鎖で拘束されているジンは答えた。
「あの馬に乗っているジンさんは、ハウセング城に武器と資材の宅配をしに行ったジンさんですね?」
とレンは聞くと、僕は思い出した。
最強の魔術師の遺品に触れて、見ることがてきたレンの記憶と同じなのだ。
この後、村に獣のような化け物が現れていた。
この頃、サラさんがかつてのレンに羽ペンをプレゼントしていた頃だ。
すると、馬に乗っているかつてのジンの目の前に突然、黒い稲妻とともにあの化け物が現れた。
「なんだ⁉この獣?」
とかつてのジンは言うと、その化け物は答えた。
「見つけたぞ。もう一つの器……」
と獣のような化け物は言い、かつてのジンを指差して言った。
「俺の名はスフォルザント。ジン・ジオール、俺と一つになれ」
「なぜ俺の名を知っている⁉そしてなぜ言葉を話せる⁉」
とかつてのジンは聞くと、化け物は答えた。
「俺の正体は、お前だ!ジン!」
すると、化け物から魔力が放たれ、その魔力はかつてのジンに命中した。
「ぐっ!なにを⁉」
とかつてのジンは言うと、かつてのジンの目の前にいたのは化け物ではなく、もう一人のジンだった。
「久しぶりの肉体だ。フン、お前の姿をよく見ろ」
ともう一人のジンは言うと、かつてのジンは化け物の姿になっていた。
「これは⁉そんな……‼」
と化け物の姿になったかつてジンは言うと、もう一人のジンは化け物を指差して言った。
「その姿で仲間たちの前に現れたら、仲間たちはお前をお前と認識してくれるのかな?」
「これは魔術なのか⁉だがこんな魔術聞いたことがない!」
と化け物の姿になったジンは言うと、もう一人のジンは答えた。
「俺の魔術を、貴様たちのような魔法ごっこといっしょにするな。いいか、この世は今だ戦いに満ち溢れている。お前が今、配達しようとしている武器も、争いのために使われ、人の生命を消し去る残酷な武器だ。この世界に平和なんてあるのか、俺は悩み、悩み、悩み苦しんだ……。そして、俺は、世界を平和にする方法を考えついた。人類が皆、一つの意思を持つことができる!争いは消え、本当の平和を築く!」
すると化け物の姿になったジンは答えた。
「そんなことがあるはずないだろう。この争いはいずれ誰かが止めなければいけない。俺は今、世界のために弟子と共に世界を旅するつもりだ。そして、争いを無くすために各国々の長と話をしようと思っている」
「では、今からその弟子のところに行ってこい。どうなるのかは俺にはわかる」
ともう一人のジンは言うと、化け物の姿になったジンさんは村に向かって走り出した。
村では警備をしていた村人が化け物が村にやってくる姿を見て、大声で怒鳴った。
「うわああぁぁぁぁ!!!!化け物だ!!村に来るぞ!!」
「っ!!サラ、お前は家に戻っていろ!」
とレンは言うと、レンは自分の背中に背負っている木刀を構え、村に来た獣のような怪物に攻撃を仕掛けた。
そう、その化け物がジンとは知らずに。
「グルルル……」
と獣の姿のジンは黙ってレンを見ていた。
(レン!俺はジンだ!よく見ろ!この眼を‼)
と獣の姿のジンは心の中で思っていると、レンは獣の姿のジンの左目を木刀で斬りつけた。
「ガアアアア!!!!!!」
と獣の姿のジンは左目を手で押さえて苦しんでいた。
(なぜだ⁉レン⁉お前でも……わかってくれないのか⁉)
と獣の姿のジンは言いながら、左目を押さえ、立ち止まっていた。
左目から血がダラダラ垂れていくのを見た村人たちは獣の姿のジンに向かって石ころを投げつけていた。
「帰れ!」
「ここはお前が来る場所じゃない!」
「そうだ!今度来たら飯にしてやるぞ!」
そして、村人から石ころを投げつけられているジンはもう一人のジンの言葉を思い出した。
『その姿で仲間たちの前に現れたら、仲間たちはお前をお前と認識してくれるのかな』
『俺と一つになれ、ジン』
『俺は、世界を平和にする方法を考えついた。人類が皆、一つの意思を持つことができる!争いは消え、本当の平和を築く!』
そして獣の姿のジンは決意した。
(本当の平和、争いの無い世界……。創ろう……。創るしかない!)
そして獣の姿のジンは村人に抵抗せず、そのまま森のほうに走って行った。
「……決意したか?ジン」
ともう一人のジンは聞くと、獣の姿のジンは言った。
「平和を築くぞ、その前に聞いておこう。俺と融合してどうする?」
「俺の魔力を増幅させ、無数の生命体を創る。そして、人々と生命体を融合させる。そうすれば人々はその生命体を通じて意思が固まり合い、協力し、団結し、平和を創ることができる」
ともう一人のジンは言い、獣のジンともう一人のジンは融合した。
「「うああああああ‼‼」」
と融合したジンは頭を抱え、倒れ込んでしまった。
そのとき、僕たちがいた異空間が再び真っ白になり、鎖で拘束されているジンは僕たちに言った。
「そして、次目覚めたとき、俺はこのように鎖で拘束されていて、魔力を奴に吸い取られていた。俺は奴と融合したのではなく、奴に吸収されてしまっていたようだ……。俺が奴と融合を求めたのは、あってはいけない失敗だった……。許してくれ……」
すると、レンは鎖で拘束されているジンに言った。
「すいません!ジンさん!俺……ジンさんだと気がつかなくて……左目に傷を……‼」
「だが、お前が俺の左目を傷つけてから奴に吸収されたから、奴の左目も傷跡ができて視界がよく見えないらしい。未来を見ることはできるが……」
と鎖で拘束されているジンは言うと、僕は答えた。
「一体、もう一人のジンは何者なんですか⁉」
と僕は聞いた。鎖で拘束されているジンは答えた。
「奴はパラレルワールドで別れたもう一人の俺だ。奴は幼い日に天魔の聖堂にやってきた。そして奴は“神の扉”を開けてしまった」
「神の扉を⁉じゃあ……」
とレンは言うと、ジンは答えた。
「そうだ。1975年に奴は時を超えてやってきたのだ。そして一人の人間に拾われ、奴はその人間の子供として育っていった。だが、普通に育っていた彼の前に現れのが……呪われし小悪魔 カルラだった」
僕は聞き返した。
「カルラが⁉」
ジンは話を続けた。
「それでもう一人のジンはカルラの呪憎裏を解いた。自らに呪いをかけ……。そのおかげで人間たちからは酷い扱いを受け、またこの時代に戻ってきたらしい。この世界を支配する方法を考えながらな……」
するとレンはジンに聞いた。
「いまいち理解に難しい……」
するとジンは答えた。
「今からこの世界のすべて、もう一人の俺のすべての秘密を話す。そして奴を倒す方法もな!」