197話 不死身な身体
天魔の聖堂では、今、朱希羅たちと閻の戦いが始まろうとしていた。
「セレシア！閻に向かって突風を飛ばせ！奴は必ず突風を避けるはずだ！閻が突風を避けた瞬間、江川と俺で叩きかける！」
と朱希羅は言うと、セレシアは海王の扇子を大きく振り、荒々しい突風を発生させた。
その突風は閻に向かって激しく飛んで行った。
「朱希羅、お前たちの力を見せてみろ」
と閻は言うと、突風を左にステップして避けた。
しかし、突風を避けた閻の目の前に朱希羅と江川がそれぞれの悪魔武器を構え、攻撃を仕掛けていた。
「なんだ……つまらん作戦だな」
と閻は言うと、炎で覆われた江川の死神の黒刀Ⅱを何も装備していない素手で白刃どりした。
ジュウウウゥゥ‼‼
とまるで肉が美味しく焼けてるような音が、閻の素手から鳴った。
「手の皮膚が炎で溶けたんじゃないか？」
と江川は言うと、朱希羅が閻にパンチを放とうとした。
だが、閻は平気な顔でそのまま炎の剣を白刃どりした状態で、剣ごと江川を振り回し、朱希羅を江川で叩きつけた。
「ぐあ！」
と朱希羅は言いながら、江川とともに地面に倒れ込んでしまった。
「残念だが、どんな炎であれ、どんな攻撃であっても、この俺には傷一つつけられない」
と閻は言うと、ラーシが閻の素手を指差して言った。
「奴の手……あの激しい炎の剣を素手で止めたのに……溶けてるどころか……焼け跡一つ無いぞ！」
「一体どうなってんだ⁉」
と朱希羅は起き上がりながら言うと、江川はその場にいる皆に言った。
「悪魔王選出試験のときもそうだった……。奴は灼熱の素手による炎の攻撃が通じない！」
すると朱希羅は閻に聞こえないような声で言った。
「最初に仕掛けたセレシアの突風攻撃も効かないのか……？だがなぜ効かない攻撃を奴は避けたんだ……？」
「どうやら、奴に効かないのは炎だけみたいだな」
と江川は言うと、朱希羅は閻に向かって走り出した。
「うおおおおおお‼」
と朱希羅は雄叫びを上げながら、閻に向かってパンチを放った。
閻もパンチを放ち、連続の殴り合いになった。
しかし、朱希羅はタイミングをズラし、閻の背後に回り込み、後ろから閻に抱え込み、拘束した。
「今だ！セレシア！」
と朱希羅は言うと、ヒュードラッド仙人が朱希羅に手を向け、言った。
「お前さんもダメージを受ける！ワシのできることはこれくらいじゃ！」
するとヒュードラッド仙人の魔術により、朱希羅の身体を魔力でてきたバリアが覆った。
「くらえ‼」
とセレシアは言うと、閻に向かって突風を起こした。
「この突風はカマイタチの塊とも考えて良い、身体中が風によって切り刻まれるぞ！」
とセレシアは言うと、突風が閻を襲った。
朱希羅も突風の中にいたが、魔力のバリアのおかげで無傷だった。
朱希羅は閻の身体を見ると、朱希羅の表情は驚いた表情になった。
突風が止むと、朱希羅は閻に殴り飛ばされてしまった。
「ぐあっ！」
「大丈夫か！」
と江川が朱希羅の近くに駆け寄ると、セレシアが閻の身体を見て言った。
「無傷だ……」
そう、閻の身体は激しい突風の中にいても無傷だったのだ。
「おい！まさか朱希羅だけじゃなくて、閻の身体まで魔力のバリアを張ったんじゃないだろうな⁉」
と江川はヒュードラッド仙人に聞くと、ラーシが答えた。
「いや、奴の身体にはバリアも何もなかった……」
「じゃあ……まさか奴は不死身なのか⁉」
と江川は言うと、朱希羅は少しニヤつき、閻を指差して言った。
「わかったぜ、閻。お前の無傷の理由が！」
