195話 聖堂に現れた者
天魔の聖堂に集まり、魔法結晶をヒュードラッド仙人によって創ってもらった僕たち。
だが、聖堂に思いもしなかった人物が現れた。
「康彦じゃないか!!」
と僕たちは言い、康彦の近くに走って行った。
康彦は僕たちに説明してくれた。
狩武が康彦を助けてくれたこと。そして今たった一人で戦っているということを。
僕は康彦に聞き返した。
「じゃあ……狩武はまだジンさんのアジトにいるのか?」
「ジンさん?」
「そっか、お前はまだ何も知らないんだよな」
と僕は言うと、今度は僕が説明した。
まず最強の魔術師の遺品のこと、そして僕はその魔術師であるレンの生まれ変わりということ。そしてスフォルザントの正体は僕の前世、レンの兄のような男、ジンさんだということ。
さすがに康彦も驚いたのか、口をぽかんと開け言った。
「……そんなことが……」
「康彦、お前にしか頼めない。ジンさんのアジトの場所をおしえてくれないか?」
と朱希羅は聞くと、康彦は答えた。
「あぁ、もちろんだ。俺がここに来たのはお前たちを案内するためだしな」
と康彦は言うと、僕はあることに気が付いた。
ヒュードラッド仙人の顔色が悪いのだ。
「どうしたんですか?」
と僕はヒュードラッド仙人に聞くと、ヒュードラッド仙人は険しい表情で答えた。
「……とてつもない……邪気が……近づいておるッ!!」
「邪気?」
と僕は聞き返すと、天魔の聖堂にまた新たな人物が現れた。
「……さて、スフォルザントのところに行くか」
と狩武は言うと、魔覇の神剣を持って、ホールの奥にあった階段を上って行った。
カツン……、カツン……。
と狩武が一段一段階段を上がるたびに、ホール中に小さな足音が響き渡った。
そして、ついに狩武はある部屋にたどり着いた。
「……君の様子はじっくり見させてもらったよ。松田狩武」
とジンさんは立派な椅子に腰かけながら狩武に言った。
そう、今、ジンさんの目の前にいるのは狩武だ。
「すぐに殺してやる!スフォルザント!」
「フフフ……ガキどもがウロチョロウロチョロ何をしているかと思ったら……どうやら魔法結晶を創ってたみたいだな……。くだらん」
と聖堂に現れた男は言った。
「お前は……!!」
と朱希羅は言い、僕たちは戦闘態勢になった。
そう、天魔の聖堂に現れたのは矢崎 閻だった。
「お前ら!そやつを甘く見るな!邪気であふれておる!」
とヒュードラッド仙人はガクガクしながら僕たちに警告した。
「あんたは……魔法結晶を最初に創りだしたと言われている仙人……だったな?」
「邪気に満ちた者よ、おぬしの質問に答える理由は無い!」
「フン、威勢が良いじいさんだな……」
と閻は言うと、朱希羅は僕にヒソっと言った。
「隼人、俺が奴の気を引くから、その内に皆でアジトに向かうんだ」
「は?おい、朱希羅!」
と僕は言ったが、朱希羅は悪魔の鉄拳を構え、閻に向かってパンチを放とうとした。
「うおおおおおお!!!!」
と朱希羅は雄たけびを上げ、閻に向かってパンチを放った。
しかし、閻は朱希羅のパンチを片手で受け止めた。
僕たちは朱希羅に言われた通り、天魔の聖堂から出て行った。
そして康彦の案内通りに山を下山していき、ジンさんのアジトを目指した。
パンチを受け止められた朱希羅はそのまま閻に蹴り飛ばされてしまった。
朱希羅は無事に着地すると、閻に聞いた。
「なぜだ?お前なら隼人たちを逃げさせないようにできたはずだ」
「気が変わったのさ」
と閻は言うと、朱希羅の背後にはまだ人がいた。
江川にマースさん、セレシアにラーシにヒュードラッド仙人だ。
「みんな!まだいたの!?」
と朱希羅は皆に聞くと、マースさんが答えた。
「お前だけここに置いて行けるかよ。それにお前が奴にパンチを放ちに走り出した瞬間、俺たちはここに残ってお前の援護するようにって隼人に任されたんだ」
「……隼人が!?」
と朱希羅は聞き返すと、閻が朱希羅たちに言った。
「フン、まとめてかかってこい。どうせお前たちは死ぬ」
と閻は言うと、江川は閻に言った。
「よくも自分の息子にそんなことを!!」
そう、閻は朱希羅の父親なのだ。だが、閻には父親の感情はなかった。
「いいんだ、江川」
と朱希羅は言うと、朱希羅は閻を睨みつけ言った。
「こいつは俺が、地獄に堕としてやる!!!」