19話 決戦
僕は頭のてっぺんから足のつま先まで完全に悪魔化した。
ゼルキルムも80㎏の上着を脱いで、本来の力を引き出した。
「うおおおおおお!」
と僕は雄たけびを上げながら攻撃を仕掛けた。
ゼルキルムは悪魔化した僕の拳をつかみ、投げ飛ばした。
投げ飛ばされた僕は黒い翼で高く飛んだ。
そして急降下でゼルキルムに攻撃を仕掛けた。
ゼルキルムは避けきれなかったのか、防御の姿勢になった。
しかし、僕の重い攻撃は防御しきれなかった。
ゼルキルムの足は地面にめり込んだ。
僕はゼルキルムから後ろに距離をとった。
ゼルキルムは地面から足を抜いている。
「まだまだぁ!」と僕は言い、ゼルキルムに再び攻撃を仕掛けた。
ゼルキルムも攻撃を仕掛けた。
激しい殴り合いが続く中、ベトベトな汗が飛ぶ。
聞こえる音は殴ったときのにぶい音と蹴りの音だけだった。
「こざかしい人間がぁ!」とゼルキルムは叫んだ。
悪魔化している僕は拳を強く握りしめ、ゼルキルムに向かって怒鳴った。
「人間なめんじゃねえ!!」
強く握りしめた硬い僕の拳はゼルキルムの顔面を殴り飛ばした。
その威力は壮絶だったらしく、ゼルキルムは起き上がれなかった。
口からも緑色の血が出ている。
悪魔化した僕は倒れ込んでいるゼルキルムに近づいた。
ゼルキルムを見下した後、質問した。
「一つ聞きたい。悪魔六剣士の一人、ネロスが言っていた。悪魔の誕生には秘密があると…。
その秘密は何だ…?」
ゼルキルムは言った。
「そんなに知りたいか…。いいだろう…。
悪魔の誕生…。並みの悪魔なら死んだ人間の魂が悪魔界に転送され、悪魔となる…。
だが、俺様を含め悪魔界の何人かの悪魔は、悪魔界の科学者が生み出した造られし悪魔。
悪魔の中にはその造られし悪魔をこう呼ぶ者もいる…。
ヴィルドデビルと…。」
悪魔化した僕は再び聞く。
「造られし悪魔……?」
ゼルキルムは話を進めた。
「だがこの俺様も誕生の秘密は知らない…。
フッ…。残念だったな…。」
僕は聞いた。
「あのラーシとネロスも造られし悪魔なのか?」
ゼルキルムは睨みこう言った。
「一つという約束だ…。」
悪魔化した僕は黙り込んだ。
するとゼルキルムが話しかけた。
「こっちの質問にも答えてもらおう…。」
悪魔化した僕は言った。
「なんだ…?」
ゼルキルムは言った。
「お前の黒い箱には悪魔界に転送できぬよう細工したはずだ…。
どうやって直した?」
悪魔化した僕は言った。
「俺にはわかんねぇ…。この身体の持ち主がやったことだからな…。」
ゼルキルムは聞いた。
「その身体の持ち主に換われるか?」
悪魔化した僕は「ああ…。」と言うと、僕の悪魔化が徐々に解けていった…。
正気を取り戻した僕は目の前に倒れているゼルキルムを見て怖気づいた。
僕を睨むゼルキルムを見て僕は質問した。
「何の用ですか…!?」
ゼルキルムはさっきの質問を繰り返した。
僕は質問に答えた。
「黒い箱にこの悪魔の継承を触れさせたら直りました…。」
僕は思った。
なぜ敵に対して敬語なんだ…?
ゼルキルムは笑みを浮かべていた。
そのとき、悪魔城の兵士たちが現れた。
「あの悪魔を投獄するぞ!」
と言うとゼルキルムは手錠を付けられ、城に連れて行かれた。
レアルは気がついた。
ラーシがいない…。
いつの間に消えていたのだ…。
レアルは魔力でマースさんを浮かせながら、僕は真司に肩を貸しながら人間界に戻った。
幸いにも死人は一人もいなかった。
人間界でも悪魔界でもない空間。
まさに闇ともいえる空間にラーシはいた。
「僕の仕事は終わった。もう休んでいいか…?」
とラーシは言った。
するとどこからともなく声が聞こえた。
「いや……まだお前には働いてもらう…。」
「やっと休めると思ったのに…。ガッカリだよ…。」
とラーシはため息をついた。
また声が聞こえた。
「ゼルキルムはどうなった…?」
ラーシは答えた。
「あの雑魚は人間に倒されて悪魔の兵士に捕まった…。ホント哀れすぎて失望したよ…。
ゼルキルムには…。」
またまた謎の声が聞こえた。
「だが目的を達成するには我慢も必要だ…。
魔神に選ばれし三悪魔の一人、憎まれし小悪魔ラーシよ…。
お前もそれくらいはわかっているはずだ…。」
と言うと声は聞こえなくなった。
ラーシはその空間から姿を消した。