191話 深緑の民
「グランジュルさん!!」
と天真は大声を上げながら、深緑の神殿の中に入った。
「お前……俺の名前知ってたのか?」
と神殿の奥にいた大男、グランジュルは言うとラーシはグランジュルに聞いた。
「なんでここに!?それにあの遺言のような手紙は一体!?」
「あぁ……この神殿はこの森の生命そのものでな。この神殿がこの森の礎なのだ。だが、この神殿の核であるこの樹木が枯れかけてしまったのだよ……」
「つまりその樹木が枯れたらこの神殿は力を無くし、この森も滅びるということだな?」
と天真は言うと、ドラッグが天真たちに言った。
「だったら、この大樹の種を植えれば!」
「それがダメなんだ」
とグランジュルは答えると、ラーシがグランジュルに聞いた。
「なんでダメなんですか……?」
「大樹の種を植えてから芽が生えるまでものすごい年月がかかる……。芽が出る前に森が枯れてしまう。なら、どうすればよいか。俺はお前たちに大樹の種を取りに行かせてから、ずっと考えていた。そして、一つの可能性を見つけた」
「可能性?」
と天真は聞くと、グランジュルは答えた。
「深緑の民は自然と一体化し、永遠の大樹として生き続けることができる」
「それって……大樹になるってことですか!?」
と天真は聞くと、グランジュルは答えた。
「そうだ。深緑の民は俺が最後の生き残り。俺もみんなの下へ行ける。お前たちはなぜこの神殿に来た?」
といグランジュルは聞くと、天真は答えた。
「グランジュルさんを助けるのと、この神殿の聖水を取りに来ました」
「助ける?」
とグランジュルは聞くと、ラーシは答えた。
「どうしてもあなたが犠牲にならなければいけないんですか?」
「あぁ、もう決めた。俺も長生きし過ぎた。もう充分だ。覚悟はできてるだから邪魔しないでくれ」
とグランジュルは言うと、枯れかけた樹木に手を添えた。
「お前ら、よく見とけ。深緑の民は魔術を使うことができる」
「魔術!?」
と天真は驚いて聞くと、グランジュルは答えた。
「魔術といっても我々が使える魔術は生命エネルギーを自然物に分け与えるだけだがな」
とグランジュルは言うと、グランジュルの身体が輝きだし、その光は枯れかけた樹木の中に入って行った。
「この神殿の聖水を持って言っても何も害は無い。安心して持って行け」
とグランジュルは言い、樹木と一体となった。
樹木は急成長し、大樹となり、大樹の根の部分からきれいな水があふれ出てきた。
「これは……、聖水なのか?」
と天真は言い、ラーシはその聖水をビンの中に入れた。
「よし、天真の聖堂に戻ろう」
とラーシは言うと、デリットが二人に言った。
「ひょっとしたらさっきの大男の魂はその聖水の中に入るのかもな」
「……あぁ、そうだな」
と天真は言い、三人は深緑の神殿から天真の聖堂へと向かった。