190話 残された手紙
「そういえば天真……」
とラーシが天真に聞いた。
天真とラーシそしてドラッグは深緑の神殿に向かっていた。
「なんだラーシ?」
「あの森の中に住んでいた大男が僕たちに頼んでいた大樹の実はあるのか?」
「大丈夫だよラーシ、あの砂漠の丘の上に見つけたときに、実はもう採取していたんだ。まずは大男の家に向おう。頼まれごとはとっとと終わらせた方がいいからな」
と天真は言うと、三人は森の中に入って行った。
森の中は小鳥のさえずりが響き渡っていた。
「確かここらへんに……アレだ!あの水車小屋だ!」
と天真は森の中の水車小屋を指差すと、その水車小屋に向かって走って行った。
「おい!走ると危ないぞ!」
とヤクザのボス、ドラッグは天真に注意したが、ドラッグ自身も天真に続いて落ち葉の上を駆けて行った。
コン、コン!
と天真はドアをノックし、大声で言った。
「あのー!誰かいますかー!」
「おい、天真。二回のノックじゃトイレノックだろ」
とラーシは天真に注意したが、天真はまたノックしながら答えた。
「別にこんな古い時代じゃトイレノックなんて知らないだろ」
と言いつつ、天真は四回ほどノックすると、ドアがスルッと開いてしまった。
ラーシ会話していたため、ドアが開いたことに気付かなかった天真は、そのまま大男の部屋の中に滑り込んでしまった。
「……アレ?」
と天真は周りを見渡した。誰もいないのだ。
「どういうことだ?薪割りでも行っているのか?」
とラーシは言うと、ドラッグは机の上にある物を見つけた。
「おい!置き手紙があるぞ!」
三人はその置手紙を見た。
『未来から来た少年へ
もう時間が無い。
君たちがこの手紙を読んでいる頃、私は深緑の神殿にいるだろう。いや、もうこの世にはいないのかもしれない。
遠い砂漠まで君たちを行かせたまま、すまない。
だが、私はかつてこの森で生活していた誇り高き一族……深緑の民の生き残りなのだ。
深緑の民として最期の仕事をしに行く。
グランジュルより』
「グランジュルってあの大男の名前かな?」
と天真は聞くと、ラーシは天真に言った。
「バカか!これは立派な遺言じゃないか!早く深緑の神殿に向かうぞ!」
とラーシは言うと、ドラッグは大樹の種を抱え、天真たちは深緑の神殿に向かって走って行った。