189話 浅はかなる撃退
「死神の黒刀Ⅱだと!?」
とデューラは言うと、江川は黒鳥たちに言った。
「下がっていてくれ、こいつは俺が倒す」
「でも……一人で大丈夫ですか?」
と黒鳥は聞くと。ルリが答えた。
「大丈夫よ!今の江川は松田隼人に勝てるかもしれないくらい強いんだから!」
「いくぞ、チビ野郎」
と江川は言うと、宙に浮いているデューラに向かって走り出した。
「まっすぐ突っ込んでくるとは……愚かしいですね」
とデューラは言うと、鋼鉄の刃を江川に飛ばした。が、江川はその鋼鉄の刃を切り裂き、どんどんデューラに向かって走っていた。
(まただ……なぜ超鋼鉄製の刃がたかが炎を帯びた刀ごときに切断される……?あの黒刀にも何か秘密が……?)
とデューラは思っていると、江川は答えた。
「いや、ネタは熱伝導することしかない。そう、ただの黒刀だ」
「俺の心が読めるのか!?」
とデューラは驚いて聞くと、江川は答えた。
「どうせお前は死ぬから教えてやる。俺は読心という能力を持っていてな、お前の考えていることはバレバレだ。それにこの刀が超鋼鉄製を切断できる理由は簡単だ」
「簡単だと?」
「刃の表面に燃え上がっている炎、これが刃と鋼鉄が触れる直前に、炎が鋼鉄を溶かすのさ、そしてある程度溶けた鋼鉄の硬度は普段の約7分の1となり、この刀で切断することなんて造作もなくなる。この刀を防ぐことはどんな岩でもどんな鋼鉄でも防ぐことは不可能」
と江川は言うと、デューラは鋼鉄の刃を手に持って、江川に向かって飛んでいった。
「そんなことがあるわけ……!!」
とデューラは言いながら、江川を刃で攻撃しようとしたが、江川はその黒刀で刃を切り裂いた。
そしてデューラの顔面を左手でつかむと、江川は左手から炎を噴出しながら言った。
「終わりだ」
「うぎゃあああああ!!!」
とデューラは悲鳴を上げながら、頭が溶けきってしまった。
「…………」
と江川はそのまま黙り込んでいたが、黒鳥が江川に言った。
「すごいです!倒しましたね!デューラを!」
「……いや、わからない」
と朱希羅が言った。朱希羅も江川と同じで何だかそわそわしていた。
「朱希羅、お前にもわかるか?」
と江川は朱希羅を見て言うと、ルリは江川に聞いた。
「どういうこと?まだ死んでないの?頭は完全に溶けちゃったのに?」
「……いや、こいつはデューラじゃないような気がする……」
と江川は答えると、朱希羅も答えた。
「悪魔王選出試験の審査委員をしていたあの悪魔が、こんなすぐに倒されるわけがない……。それにあの冷静っぽい感じがしなかった……」
「考え過ぎじゃない?それにもしデューラじゃなかったら、誰なのよ?」
とルリは朱希羅と江川に聞くと、江川は答えた。
「……わからない。奴らの力は未知数だからな……」
と江川たちはデューラの死体を見つめつつ話していた。
そのころ、ジンさんのアジトではある男がジンさんと会話していた。
「松田狩武の様子はどうだね?アルべラム」
とジンさんはアルべラム大臣に聞くと、アルべラム大臣は答えた。
「松田狩武は498号室で精神統一をしています。今のところ我々に刃向う様子は見られません。次に村川漢頭ですが、天使武器無しとなると脱獄はできない様子です」
「そうか」
とジンさんは言うと、その部屋にある男が入ってきた。
「ごくろう、デューラ」
とジンさんは言うと、部屋に入って来たデューラはジンさんに報告した。
「分身体は江川 隗によって破滅されました。しかし、江川たちはまだ本物の私ではないと気付いていません。少々矢崎朱希羅と江川 隗は感づいているようですが……。しかし、さすがスフォルザント様の黒魔術、魔体生成……。ほぼ私と能力は同じでした」
とデューラは言うと、ジンさんはデューラに言った。
「だが、元が元だ。魔体生成とは人間の魂にオリジナルのDNA情報を注ぎ込み、そして魔術を放つことで、オリジナルのクローンとして作動する。しかしオリジナルが強くとも、その魔術を発動するための生贄の戦闘能力が弱ければ意味がない。今回のように瞬殺されてしまう」
とジンさんは言うと、デューラはジンさんに言った。
「しかし、報告はそれだけではありません。奴らはまた何かを計画して行動しています。ワタシが遭遇したのは江川 隗と矢崎朱希羅、そして先代憎まれし小悪魔ルリと黒鳥鉄尾でした。おそらく少人数に分かれてそれぞれ行動しております。それと」
「往生際の悪い奴らだ……」
とジンさんは言うと、デューラはさらに言った。
「それと……江川 隗の戦闘データを入手しました」