187話 ヒューブラッド仙人
「待て!狩武!」
と僕は黒いオーラに包まれ消えていく狩武に言ったが、待ってくれるはずもなく、敵はいなくなった。
「まさか狩武が敵になるなんて……」
と真司は言うと、僕は皆に言った。
「今から、奴らのアジトを探す!康彦を助け出して、狩武を連れ戻す!」
「じゃが、奴らのアジトがどこにあるのか、わかりはせんぞ。それに今の隼人じゃあジンに太刀打ちできるかわからん。奴は無限の魔術を持っている。“最強の魔術師”を育て、殺した男じゃ……」
とルークさんは言うと、黒鳥がルークさんに言った。
「でも、隼人には悪魔化以外にも鬼神化や、究極悪魔化があります!スフォルザント……いや、ジンさんにも太刀打ちできるはず!」
「……いや、あれは正直、究極悪魔化を超えていた……」
と僕は言い切った。そして僕は深く考えた。
「ジンさんを倒す方法はないのか……?」
するとジャックが僕に言った。
「悪魔の継承を持つ者よ。最強の魔術師がこの世界に残した“遺品”をすべてそろえれば、魔術を発動していた記憶を戻し、魔術を扱うことができるはずではないか?」
「遺品……。つまりレンがスフォルザントと戦うまでの記憶をすべて集めろと……」
「そうだ」
とジャックは答えると、天真が答えた。
「それは無理じゃないか?だって後二つの“遺品”はジンっていう人が所持している!それに奴の言う通りならば、魔法結晶っていう結晶石が無ければ魔術は発動できない!」
するとジャックさんが答えた。
「魔法結晶を生み出す方法が一つある」
「なに!?」
と僕は言うと、ジャックさんは答えた。
「この世界にはある一つの目的のために建設されたという神殿が六つある」
とジャックは言うと、朱希羅が答えた。
「確かガンさんが言っていた!砂漠の神殿に深緑の神殿……それと……」
と朱希羅は言うと、ジャックさんが続きを答えた。
「火山の神殿、海流の神殿、霊鬼の神殿、天魔の聖堂だ」
「ここも!?」
と僕は言うと、ある老人の声が聞こえた。
「この“天魔の聖堂”は、“天魔の神殿”と言われていると、最初に言わなかったかの?」
それはこの山に住む老人、ヒュウじいさんだった。
「あなたは!ヒューブラッド仙人!なぜここに……!?」
とジャックはヒュウじいさんに聞くと、ヒュウじいさんは答えた。
「この山の洞窟に住んでるからじゃよ。あ、これは人々には秘密じゃよ?」
「あの……、仙人って……?」
と僕は聞くと、ジャックは答えた。
「この方はヒューブラッド仙人で、魔法結晶を作る方法を編み出した方だ」
「そんなすごかったんですか!?」
と僕は言うと、ヒューブラッドは答えた。
「まぁな、それより、魔法結晶を作る方法は、六つの神殿にあるそれぞれの聖水を混ぜ合わせ、一つの結晶体とすることじゃ」
「聖水っていうのは?」
と江川は聞くと、ジャックが答えた。
「この聖堂にもあるはずだ。銅像の中から水が流れているのがな」
とジャックは言うと、マースさんが見つけた。
「あれじゃないのか?」
確かに天使のような人間の銅像の口部分からきれいな水が流れていた。
「これね……聖水って……」
とルリは言うと、ヒューブラッドがルリを指差して答えた。
「それじゃ!ワシが夢で見た武器じゃ!」
「武器!?」
とルリは言いながら背負っている悪魔武器を見た。
「夢で見ただと?」
と江川は言うと、ジャックは江川に言った。
「ヒューブラッド仙人は未来を予知することができる。夢でな」
「どんな夢なの?」
とルリは聞くと、ヒューブラッドは答えた。
「ワシが、その武器を創って、何百年後にある者に渡したんじゃ。渡すまでは使いこなしていたのぅ……その刀を……」
とヒューブラッドは言うと、ルリは江川に言った。
「隗……この人って……」
「おそらく、俺の師匠の前世か、老ける前の師匠だな」
と江川は答えた。
「これは隗が師匠から授かった武器なんです」
とルリは言うと、ヒューブラッドは答えた。
「フッ、ワシも長生きするのかのぉ?」
はたして、江川のもう一つの悪魔武器とはなんなのか?