184話 レンと隼人 【後編】
「悪魔化した俺が……レンだったってことか……」
と僕は聞くと、ジンさんは答えた。
「そうだ。でもなぜ、その腕輪を使用した者が死んでいったか、わかるか?」
「答えろ!」
と僕は強調して聞くと、ジンさんは答えた。
「悪魔の継承に宿っているレンの魂とその使用者の魂がリンクしなかったからだ。だが、松田隼人、お前は腕輪の力を使用しても死ななかった。それに悪魔化もしっかりと成功した。それはお前の魂とレンの魂がリンクしたからだ。実際、お前が悪魔の継承を使用したと聞いた二代目悪魔王は驚いていなかったか?」
「どうなんだ?隼人?」
と真司は僕に聞いてくると、僕は昔のことを思い出しながら答えた。
「……あのときはそこまで考えていなかったが、確かに悪魔王は驚いていた……」
「その意味がわかるか?二代目悪魔王はそのとき、お前が“最強の魔術師”の生まれ変わりだと知ったのだ」
とジンさんは答えると、マースさんがジンさんに聞いた。
「つまり、悪魔化したときの隼人は隼人じゃなく最強の魔術師のレンで、隼人だけが悪魔の継承を使いこなせる理由は隼人がレンの生まれ変わりだからということか!」
「そういうことだ、だがまだ使いこなせたという訳ではない。“最強の魔術師”は自分の魂を“生”と“精”に分け、“生”の魂は新たな命となり松田隼人と生まれ変わり、“精”の魂は悪魔の継承の中に入っていった。さて、この話は終わりだ」
とジンさんは答えると、アルべラム大臣が僕たちに言った。
「それがわかったところで君たちに勝機はない。諦めて現代へ帰りたまえ。そのときにはもう、世界は完全なる平和となっているだろう」
「帰ってたまるか!ここでお前たちを倒す!」
と僕は言うと、悪魔化した。
悪魔化した僕はいつもより大人しかった。
僕はジンさんに言った。
「まさか、あなたがスフォルザントだったなんて……」
「フッ、レン。少し記憶を取り戻したせいか、松田隼人とのちがいがだいぶでてきたな。いいだろう、レン。少し相手をしてやる」
とジンさんは言うと、黒いコートのボタンを開け、結晶がからまった首飾りをレンに見せた。
「お前が記憶を取り戻したとしても、この魔法結晶がなければ魔術は発動できない」
「魔術が使えなくても、この拳で倒してみせる!」
と僕は悪魔化した左腕をジンさんに見せると、高速のような速さでジンさんに攻撃を仕掛けた。
「うおおおおおおお!!!」
と僕はジンさんにパンチを放つと、ジンさんは左手で僕のパンチを受け止めた。
「レン、今のお前には、お前が“最強の魔術師”となって、2500万という数の死神を全滅させ、このスフォルザントに戦いを挑んだ記憶はないだろう。そのとき、お前が俺に敗れたこの魔術を今、発動しよう」
とジンさんは言うと、僕を左手で投げ飛ばした。
僕は空中で体勢を整え、着地した。
「今の隼人は……最強の魔術師なのか……!」
とラーシは混乱していた。
ジンさんは自分の刀傷の跡がある左目に触れながら僕に言った。
「これがお前を死に陥れた最強の眼、魔術を帯びた邪眼だ」
とジンさんは言うと、ジンさんの左目の瞳が三つになっていた。
「瞳が三つも!」
と真司は言うと、朱希羅が言った。
「一つの眼で三つの視界を見ることができるってことか!?」
するとジンさんが答えた。
「ちがう、この三つの瞳は一つに繋がっている故、未来を見ることができる!!」