182話 それぞれの遺品
僕の頭の中にはある光景が映った。
そう、僕たちがこの前に行った村だ。レンとサラさんが川の近くで話していた。
「レン、誕生日おめでとう」
とサラさんは言いながらレンにある物を渡した。レンが受け取った物は白く輝く羽ペンだった。
「これがあればいつでも勉強できるよね、レン」
「嬉しけど……勉強はあまりしたくねぇな……ハハハ……」
とレンは苦笑いしていると、馬に乗ったジンさんがレンに言った。
「レン、今から俺はハウセング城に武器と資材の宅配するため出発する。その間の村の警護は任せたぞ」
「はい、ジンさん頑張ってください」
とレンは言うと、ジンさんは馬を走らせ、ハウセング城に向かって行った。
「ねぇ、レン」
「ん?」
とレンはサラさんを見ると、サラさんはレンを見て言った。
「レンもいつかはジンさんみたいに危険な仕事するんでしょ?旅の途中で何が起こるかわからないような仕事を……」
「あぁ、そのために今鍛えてるからな」
「……無茶はしないでね?」
「言われなくてもわかってるさ」
とレンは言うと、村の門の方から村人の声が聞こえた。
「うわああぁぁぁぁ!!!!化け物だ!!村に来るぞ!!」
「っ!!サラ、お前は家に戻っていろ!」
とレンは言うと、レンは自分の背中に背負っている木刀を構え、村に来た獣のような怪物に攻撃を仕掛けた。
「グルルル……」
と獣は黙ってレンを見ていたが、レンは怪物の左目を木刀で斬りつけた。
「ガアアアア!!!!!!」
と獣は左目を手で押さえて苦しんでいた。左目から血がダラダラ垂れていくのを見た村人たちは獣に向かって石ころを投げつけていた。
「帰れ!」
「ここはお前が来る場所じゃない!」
「そうだ!今度来たら飯にしてやるぞ!」
すると獣は何も抵抗なく、走り去って行った。
「今の獣のような怪物は一体?」
とレンは言っていると、サラさんがレンに言った。
「大丈夫!?けがはない!?」
「大丈夫だよ、無傷さ。お前は心配し過ぎだよ、ハハハ」
とレンは言い、笑っていた。
そしてレンはサラさんにこう言った。
「今日は危ないから早く帰ったほうが良い、獣の群れがくるかもしれない……」
そうレンは言うと、サラさんはうなずき、木でできた家へと戻って行った。
そして僕は意識を取り戻した。
「今のは……レンの記憶か……」
と僕は言っていると、スフォルザントは僕に言った。
「やはりお前だけにしか見えないか、松田隼人」
「あぁ、レンの記憶は俺だけしか見えないようだ。なぜだかわからんがな」
と僕は答えると、スフォルザントは僕に言ってきた。
「私ならその理由を知っているよ」
「なんだと?」
「私も、“最強の魔術師”の遺品を持っている。だが、私が触れても何も起きない。だが、松田隼人がこれに触れれば、レンが体験したこと……レンの記憶が松田隼人の中に入ってくる……。だが、実際は違う」
「違う?どういうことじゃ?」
とルークさんは聞くと、スフォルザントは答えた。
「この“最強の魔術師”の遺品は……松田隼人の脳の中に記憶が入っていたのではなく、脳の中に眠っていた記憶を掘り起こしたのだよ。まず、レンというのはただの村人だった。だが、ある日から世界を平和にしようと計画を企てた私の存在を知り、私や死神を倒すために、“最強の魔術師”となったのだ」
「つまり……俺が今まで見てた記憶は……“最強の魔術師”となる前のレンの記憶だったのか!」
と僕は言うと、スフォルザントは答えた。
「そうだ。奴は私が創造したアンドロイド……2500万体の死神を全滅させ、私に戦いを挑んできた。だが、所詮、奴の魔術は私の魔術には勝てなかった。魔術だけではない。戦闘経験の差も充分にな」
「“最強の魔術師”が勝てなかったのか!?」
と僕は聞くと、スフォルザントは答えた。
「なぜなら、奴に戦闘センスと魔術を教え込んだのは私だからな」
「……どういうことだ?」
と真司は言うと、僕は気づいた。
「まさか……あなたは……」
するとスフォルザントは仮面を取り外し、素顔を僕たちに見せてきた。
左目には刀傷の跡があり、金髪で、その姿はレンの師匠であり兄のような存在だったジンさんだった。
「じ……ジンさん?」
と僕は言うと、ジンさんは答えた。
「そうだ、私の本名はジン・ジオール。この世界の神となる者だ」