173話 レンの故郷
薄暗い曇り空のしたにある荒々しい火山の近くにある立派な城があった。
その城の中にいたのはあの仮面の身に着けた男だった。
「スフォルザント様」
と矢崎 閻が立派な椅子に座っているスフォルザントに言うと、スフォルザントは答えた。
「なんだ?松田隼人たちによる情報か?」
「確信はしていませんが、ハームタウンの魂狩りに行かせた死神からの連絡が途絶えました。おそらく奴らの手によって殺されたのだと……」
「そうか……」
とスフォルザントは言うと、矢崎 閻は聞いた。
「しかし、なぜこんな火山の奥にこんな立派な城があったのでしょうか……?この時代の誰かが創られたのでしょうか?」
「ん?お前にもまだ言ってなかったか?」
とスフォルザントは聞くと、閻は答えた。
「はい、何も……」
「そうか、この城は俺がかつて神話時代に来た時に創りだした城だ。そうだな……スフォルザントになる前だ」
「スフォルザントになる前……?」
と閻は聞き返すと同時にさらに質問した。
「ところでワタシは今までスフォルザント様の右腕として働いていました。しかし、まだ一度もあなたの素顔を見たことはありません。もしよろしければ見せてもらえないでしょうか?」
と閻は聞くと、スフォルザントは言った。
「俺の素顔を見て何になる?それにこの世界ではこの顔で生きていくには少し面倒だ……」
「……?」
と閻は理解できなかった。するとスフォルザントは閻に言って去って行った。
「俺は少し地下室の死神たちの様子を見てくる。俺の正体は……まぁ、時期わかる」
そのころ、僕たちは自然豊かな森を歩きつづけていた。
「村はもうすぐ歩いた辺りにあったはずじゃ」
とルークさんは言うと、目の前に木製の門が見えてきた。
「あれか!」
と僕は言い、門の前に立ち、門を開けた。
すると江川が僕に聞いてきた。
「勝手に門を開けて大丈夫なのか?」
「後で説明すれば大丈夫だろ」
と僕は言い、村の中に入った。村の中は小さな小川や、池や、木製の家がたくさんあった。
「まずは村長の家に行こう。多分、あの一番デカい家じゃろ」
とルークさんは言い、僕たちはそのデカい家に向かって歩き出した。
そのデカい家の目の前に立った時、僕は気づいた。
そのデカい家の庭……、あのレンっていう人とジンっていう人が薪割りしていた場所によく似てると……。
「ノックするぞ」
とルークさんは言い、ドアをノックした。
「はーい」
と声が聞こえると、その家の中から僕と同じくらいの少女が出てきた。
またもやその時、気付いたこの人は確か……。
と思っていた瞬間、その少女の目はいきなりうるうるしだし、少女は僕に飛びついてきた。
「うわぁ!!」
と僕は地面に倒れ込んだとき、その少女は目から少し涙を流しながら僕に言った。
「おかえり!レン!」
「…………はぁ?」
と僕は言い、説明した。
「俺はレンじゃなくて松田隼人なんですけど……」
「え?なに言ってるのよ、冗談やめてよレン」
とその少女は言ったとき、江川も説明した。
「いや、マジで人違いです」
「え……あ……?えー!!!?」
とその少女は起き上がり、僕たちに謝った。
「ごめんなさい!ワタシてっきり幼なじみの人かと勘違いしちゃって……!ワタシの名前はサラ。よろしくお願いします」
「……あなたの言葉からして、そのレンっていう人はこの村にはいない。ということですか?」
「はい、二年前に旅立っちゃって……。とりあえず中にどうぞ」
とサラは僕たちを家の中に誘導した。
僕は用意された椅子に座り、その少女に話した。
「この“ミサンガ”に見覚えありませんか?」
と僕は言い、“ミサンガ”をサラに見せた。
「それは、ジンさんがレンにプレゼントした“ミサンガ”じゃないですか……!なぜあなたが持っているんですか……!?」
「これは“最強の魔術師”が僕たちに授けた“ミサンガ”なんです。どうやらレンさんは“最強の魔術師”と関係があったのか……。それともレンさんが“最強の魔術師”なのか……。それを確かめにこの村に来たんです」
と僕は答えると、サラはそわそわした雰囲気で答えた。
「そうだったんですか……。レンは今頃何をしているのかわかりませんが……。そうだ、レンの写真を見ていきますか?少しは得になると思うんです。」
「はい、僕もあなたたちの存在は知っていましたが、顔までは覚えていない……。是非その写真を見せてください」
と僕は言い、僕たちはサラの部屋に入った。
「これです」
と言って、サラはレンが映った写真を持ち出した。
僕たちはその写真を見て、息が詰まった。
「な……」
とクールな江川も驚いていた。
「こりゃあ人違いするにも無理ないな……」
とルークさんは言いながら、その写真に映っているレンさんを見つめていた。
「素顔が……隼人とまったく同じじゃないか……!!」
とルークさんは言い、僕もそのときはまだ信じられなかった。
まるで僕のクローン人間、いや、僕と言っていいほど素顔が同じなのだ。