163話 天真の作戦
僕とルークさんが出航した頃、ある火山ではある三人が山道を歩いていた。
「なぁ~みんなどこに行ったんだよォ~。俺もう疲れたぞ~」
と弱音を吐いていたのは聖弥だった。
「ここはどこかの火山だね……、“神の扉”の中に入ったんだ……ここはきっと神話時代だろうね……」
と聖弥に状況を説明していたのはラーシの弟、ラースだった。
ラースは魔神に選ばれし三悪魔ではなかったため、今もなお成長している。背丈はあきらかに兄であるラーシより高いのだ。
「スフォルザントを倒す前に、まずは皆と合流せねばいけないな。何か連絡が取れる物は無いのか?」
とセレシアがラースに聞いたが、ラースは答えた。
「ないね。自力で合流するしかない。アレを見てみろ」
とラースは言いながら、ある方向を指差した。
すると聖弥はラースに聞いた。
「どこ指差してんだ?」
「よく見ろ、この山を下り3㎞ぐらい歩いた場所に街がある。まずはあそこに行き、情報収集するぞ」
とラースは言った。確かにラースが指差した先には街があった。
「よし、日が暮れぬうちに行こう」
とセレシアは言うと、ラースとセレシアは歩き出した。
「もう疲れたのによ~!行くしかねぇか……」
と聖弥はいやいやついて行った。
そのころ、呪いの森では天真がラーシに作戦を説明した。
しかし、ラーシはその作戦に反対した。
「そんなこと!危険があり過ぎる!!」
「大丈夫だ。俺には天使の継承がある。自らの精神を一定時間腕輪に移すことができるから支配されることはない。ラーシ、お前は俺の中に亡霊が入った後、時間稼ぎをしててくれ。時間稼ぎと言っても5秒あれば十分だ。その5秒の内に俺の身体に憑依した亡霊を天使の継承の中の異空間に引きずり込んで、消滅させる!」
「わかった。上手くやれよ」
「あぁ!」
と天真は言うと、天真は2体の亡霊に言った。
「いくぞ!!」
と天真は言うと、天使化し、亡霊に攻撃を仕掛けた。
しかし、天真の放つパンチはすり抜けてしまった。
「天真!憑依する攻撃が来るぞ!!!」
とラーシは言うと、天真は目を閉じた。
その亡霊の攻撃は天真に直撃し、天真は憑依されてしまった。
「クククク……やっと人間の身体に乗り移れたわ……」
と憑依された天真は言うと、ラーシはひとり言を言った。
「時間稼ぎするなら時間停止はあまり乱用できないな……なんとか自力で攻撃を避け続けなければ!」
そう言うと、天真に憑依した亡霊はラーシに笑いながら言った。
「ヒャハハハ、時間稼ぎだと?君は何を言っているんだ?」
すると憑依された天真の動きが突然停止した。憑依された天真にはさっきの余裕の笑みは消え、見苦しい表情で言った。
「なっ……まさか……この腕輪は……!!」
「ほぅ、この腕輪を知っているのか。なのに……残念だったね。ここで終わりだ」
とラーシは言うと、天真は急に地面に倒れ込んだ。
「後はもう一体。君だけだね」
とラーシはもう一体の亡霊を見て言った。
そのころ、真っ暗闇の異空間に天真に憑依した亡霊が閉じ込められていた。
「ここはな、天使の継承が創りだす異空間だ。ここには俺とお前しかいないぜ、亡霊野郎」
と天真は亡霊に言った。
そう、天真は憑依される直前に天使の継承が創りだす異空間に精神だけを移動して、憑依された自分の身体から身体の中に入る亡霊を異空間に引きずり込んだのだ。
「ぐぎぎぎぎぎぎ……」
「どうやら何かしらの者に憑依しないと喋ることもできないようだな。この空間はあくまで精神だけの存在となる。つまり、お前が身体を幽体化しようが、俺の攻撃は必ずお前にあたる」
「ぎええええええ!!!!」
と亡霊は凄まじい怒鳴り声を放ちながら、天真に向かって攻撃を仕掛けたが、天真は瞬時に天使化し、亡霊を殴り砕いた。
「悪く思うなよ、亡霊野郎」
と天真は言い、自分の身体に意識を取り戻した。