155話 老人と少女
「ついて来なさい」
と老人は言うと、僕はその老人について行った。
「は……はい!」
と僕は言い、その聖堂を後にした。
外に出るとそこはある高い山の頂上だった。雲が下に広がっていて、真上は雲一つなかった。
僕はそのときもう一つふと気付いた。空が紫色ではない。ということはここは神話時代の悪魔界ではないのか……?
「何をしておる、早く来なさい」
と色々考えている僕に老人は言うと、険しい山道を降りて行った。僕はその老人について行った。
「ワシの家は少し降りた場所にある洞窟の中にある。足場に気を付けろ」
と老人は言いながら、どんどん降りて行った。
そのとき、僕は一瞬パニックになった。
「おっとっとっと!」
足を踏み外し、一気に下に滑り落ちそうになった。
僕は無事だったが、僕の足元にあった石ころがガラガラと下に転がっていった。
「あ……危ねぇ……。」
「大丈夫か小僧?アレだ」
と老人は言いながら指を指すと、老人の指先には壁に掘られた洞窟があった。
老人と僕はその洞窟の中に入って行った。
真っ暗だ。明かりも何も無く、ピチャンという水滴の音と、僕と老人の足音しか聞こえてこない。
しばらく真っ暗な洞窟を一直線に進んで行くと、ある眩しい光が現れた。
「なんだ!?」
僕は目を薄めて光の正体を見ると、その光は洞窟の中に建てられた家の明かりだった。
「スープでも飲んでゆっくりするといい。ゆっくり話もしたいしの」
と老人は言いながら、家の玄関を開けた。
「あら、おじいちゃん。その人はお客さん?」
と僕と同じくらいの少女が家から現れ、老人に聞いた。老人は答えた。
「あぁ、サリア。スープを作ってくれないか?」
「はーい」
と少女は言いながら、棚のような物の中から蜂の巣と水が入ったビンとその他もろもろを取り出した。
「さぁ、上がりなさい」
と老人は僕に言ってきたので、僕は家に上がることにした。
その家はすべて木材で建てられていた。
「椅子に座りなさい。少し話をしようじゃないか」
と老人は言い、椅子に座った。僕も椅子に座ると、老人が僕に聞いてきた。
「君の名前をおしえてくれ」
「松田隼人です」
「松田隼人か……。さっきは怒鳴ってしまってすまなかったね。ワシの名はヒュウ。あの頂上にある神殿を建設した一人じゃよ」
「あの神殿を創ったんですか!?」
「そうじゃ、あの神殿はワシの遥か先祖が山の頂上で神に出会い、神から託された使命でその神殿を建設することを決めたのじゃ。そして先祖代々その神殿を創っていき、ワシの代でようやく完成したんじゃ。完成したのは64年前じゃな。あのときはまだまだ若かったわい」
「ここは悪魔界なんですか?それとも人間界なんですか?」
と僕は思ったことを聞くと、老人は答えた。
「はて、知らんなぁ。悪魔界とは何のことじゃ?人間界なんて言葉も聞いたことないなぁ……」
「えっ!!?」
僕は驚いた。まさか悪魔界のことを知らないのか?だとしたらここは人間界……。いや、もしもここが人間界なら僕がいた時代の人間界のエレベストの頂上にも神殿は建設されているはず……。
何がどうなっているんだ……!?
「スープできたわよ」
とサリアは言い、テーブルの上にスープを置いた。
さっき取り出した物からして怪しい食べ物だが……。飲まなきゃ失礼だよな……。
僕は恐る恐るスープを飲むと、以外な味に驚いた。
美味だ。口の中がとろけそうだった。
僕はその美味なスープを飲みながら、老人と話を続けた。