131話 本物と分身と幻覚
「これは圧倒的に隼人がピンチだ…」
と客席にいた朱希羅は言うと、一人の悪魔が朱希羅に話しかけた。
「あの人間の知り合いなのですか?」
「はい…」
と朱希羅は答え、後ろを振り向いて誰が話しかけてきたのか確認した。朱希羅に話しかけたのはカルラだった。
「あなたは…確かゼルキルムを倒した…カルラさんでしたっけ?」
「はい。あなたは矢崎朱希羅さんですね?」
「はいそうです」
と朱希羅は答えた。僕や朱希羅や客席にいた悪魔たちにはゼルキルムとカルラの会話が聞こえなかったため、僕たちはまだカルラの正体を知らなかった。
「人間なのに悪魔王候補とは…大変ですね」
「ハハハ、ホント…大変ですよ…」
「彼は強いのですか?」
「え?」
と朱希羅は聞くと、カルラはステージにいる僕を指差した。
「隼人のことですか?強いですよ。とても…」
「そうですか。ワタシはもしかしたら彼が悪魔王決定戦に進出するのではないかと思いましてね…。でも、今の状況は不利ですね…。13体のヤウルと幻覚による攻撃を何とかしなければいけないなんて…」
「でも、隼人はいつもどんな時でも諦めないんですよ」
と朱希羅は言うと、カルラと朱希羅は黙ってステージを見た。
「………さぁどう来る?ヤウル!」
と鬼神化した僕は戦闘態勢になり言うと、一体のヤウルが急に姿を現し、僕の背後から攻撃を仕掛けてきた。
「後ろがガラ空きですよ!!」
とヤウルは言うと、僕は背後から殴られてしまった。
「ぐっ!!」
と僕は言うと、今度は連続で5体のヤウルが攻撃を仕掛けてきた。
「どんどん行きますよォ!!!」
とヤウルは言い、5体のヤウルが連携で攻撃してきた。
なぜかすべて背中が攻撃されていた。
「あのガキやばいぞ…」
と客席にいた悪魔は言うと、他の悪魔が言った。
「しかし妙だ…。なぜヤウルは幻覚による攻撃をして来ないんだ…?」
「確かに…とっととフィニッシュしちまえばいいのによ…。まさか遊んでんのか…?」
(なぜだ…なぜ幻覚を使わず、分身による攻撃しかしてこない…!?)
と僕は殴られながら思った。すると僕は気づいた。
「まさか…」
と僕は言うと、また1体の分身のヤウルが攻撃を仕掛けてきた。
(俺の考えが正しければ目の前から攻撃を仕掛けているこのヤウルは幻覚!本物は…)
と僕は思いながら後ろを振り向くと、一体のヤウルが攻撃を仕掛けていた。
「すべて背後から攻撃しているッ!!」
と僕は言い、裏拳で背後から攻撃を仕掛けていた分身のヤウルを殴り飛ばした。殴り飛ばされたヤウルは消滅してしまった。
「残り12体…」
と僕は言うと、ヤウルは怒り出して言った。
「クソが!!」
とヤウルの声がスタジアム中に鳴り響くと、5体のヤウルが姿を現し、攻撃を仕掛けてきた。しかし、僕は5体の動きを完全に見切り、5体とも消滅させた。
「こっちは鬼神化してるんだ。鬼神をなめんなよ…」
「なぜだ!?なぜ今のが幻覚じゃないとわかった!?」
「なぜだろうな」
と僕は言うと、ヤウルはさらに怒り出したような声で言った。
「ならこれはどうだッ!!!」
とヤウルは言うと、50体位のヤウルが僕の前方から攻撃を仕掛けてきた。
「この中の6体が分身で1体が本物だ!貴様に見分けられるか!!?」
すると僕は答えた。
「どこまでも汚ねぇ奴だな…ヤウル」
「……なにっ!!?」
「俺の前にいるヤウルたちの中に本物も分身もいねぇ。本体は姿を隠して…分身は…」
と僕は言うと、後ろを振り向き言った。
「俺の背後だ!!!」
と僕は言うと、背後には6体のヤウルが攻撃態勢になっていた。
「「「「「「なにっ!!!?」」」」」」
と6体のヤウルは言うと、僕は電光石火で6体のヤウルを殴り飛ばし、消滅させた。
50体位のヤウルはすべて幻覚だったのだ。
「お前が何しようと無駄だ」
と僕は言うと、ヤウルは聞いた。
「なぜだ!!?なぜ幻覚と分身を見分けられた!!?言え!!」
「簡単さ、分身はその者のコピーという意味で幻覚はただの幻…」
「だから…なんだと言うのだ!!?」
「つまり…本物と分身にはあるが、幻覚には無いものがある!!」
と僕は言うと、前方からヤウルが攻撃を仕掛けてきた。すると僕はすぐに背後を振り向いた。そこには攻撃を仕掛けていたヤウルがいた。
「前方にいるワタクシと背後にいるワタクシ、どちらが本物かわかるか!!?」
すると僕は何もせずに答えた。
「…どちらも幻覚だろ?」
するとヤウルが放つパンチはどちらもすり抜けてしまった。
「なぜだ!!?なぜバレている!!?」
とヤウルの声がスタジアム中に鳴り響くと、僕の前方から100体位のヤウルが現れた。
「どれが本物か…わかるというのかぁ!!!?」
「あぁ…本物や分身にはあって幻覚には無いもの…それは本物と偽物を区別することができる唯一のもの…」
「うおおおおお!!!」
とヤウルの声がスタジアム中に鳴り響くと、僕は100体の中の一人のヤウルに向かって攻撃を仕掛けた。
「それは…」
と僕は言い、本物のヤウルをステージの壁に殴り飛ばした。
「本物と分身にはあって幻覚には無いもの…それは影だ!!!」