127話 カルラの過去 【前編】
腹を切り裂かれたゼルキルムは緑色の血を出しながらステージ上に倒れ落ちた。
「致命傷は避けましたが無理に身体を動かさないほうが良い。出血が止まらなくなり大量出血で死にますよ」
とカルラは言い、手に持っていた剣とステージに刺さっている剣とステージ上に落ちている剣を拾い、4本の剣を背負っている入れ物にしまった。
「デューラ君。ゼルキルム君にもはや勝ち目はないな…」
「はい。身体を動かせば出血で死ぬのならば、もう戦士としては動けません。よってこの勝負、カルラの勝利です」
「フッ、ゼルキルム君が敗者になるとは…最初は思っていなかったな」
とアルべラム大臣は言うと、放送が流れた。
《戦闘終了。ゼルキルムが戦闘不能となったため、第14回戦の勝者はカルラです》
「ゼルキルムが…負けた…」
と朱希羅は信じられない顔で言った。僕も信じられなかった。
「きっとカルラは悪魔王決定戦に進出するだろう…。あんな強い奴…狩武や天真以来だ…」
と僕は朱希羅に言った。
ステージでは倒れているゼルキルムにカルラが言った。
「最後に言っておきます。貴方がなぜ生き返っているのか…。知りたいですか?」
「……ッ!!?」
「興味はあるそうですね…」
「知っているのなら…おしえろ…。今すぐ…!!」
「はい。おしえましょう」
するとカルラは説明した。
「あなたは悪魔召喚という魔術で生き返ったのです」
「やはりそうか…。誰だ!?誰が俺を生き返した!?」
「ワタシが小悪魔だったころ…ワタシの呪憎裏の鍵となった者です」
「呪憎裏だと…!!?」
とゼルキルムは驚いた表情で言った。この会話は二人以外聞こえてはいなかった。
「じゃあ…お前は魔神に選ばれし三悪魔だったってのか…!?」
「そうです。魔神に選ばれし三悪魔とは100年に一度、三つのキーワードに当てはまった三人の小悪魔の成長を止めてしまうのです。停止された成長を再び再生するには自分と同じキーワードに当てはまった人間を探さなければならない。ワタシは最初に生まれた呪われし小悪魔だったのです。ワタシは人間界に行き、呪われた者…呪えそうな者を探しました」
「自分と同じ宿命を人間に負わせる…すると自分は再び成長するのか…」
「ワタシは長い年月、呪われた者を探しました。しかし、いませんでした。憎しみや裏切りとは違って呪いを背負う人間なんてそうそういない…。人間には呪われた者なんていない…。自分が呪われても良いなんて言う人間なんていない。そう思ったときだった…」
【過去】
「なんだこいつ…?」
と何人かの子供たちの中に一人だけワタシの姿が見えた者がいた。その者の友達は言った。
「なに言ってんだ?誰もいないじゃないか」
「え?いるじゃん」
とその子以外はワタシの姿が見えないのだ。見えないのが当たり前なのだが、ワタシは驚いた。そして思ったこの子には可能性があるかもしれないと…
その者とワタシが出会ったのは住宅街の中にある公園だった。
やがて時が経ち、その者は中学生になった。
その者は学校の登校中にワタシに言った。
「なぁ、カルラ。お前って魔神に選ばれし三悪魔っていう不幸な悪魔なんだろ?」
ワタシはその質問にこう答えた。
「そうですが?」
「それのせいでずっと小悪魔の姿なんだろ?」
「はい」
するとその者は言ったのだ。
「じゃあさ、それを解く方法はないの?」
「あるにはありますが、それは貴方を危険に巻き込みます」
「危険なのか…?」
その後、その者はワタシに再び成長させる方法を聞き続けてきました。ワタシはその者はなぜか危険な目に合わせたくなかった。だから言わなかったのです。しかし、その者はワタシの持っている黒い箱を使い、他の悪魔から魔神に選ばれし三悪魔のことについて全部聞いてしまったのです。
そして高校生になった彼はワタシに言いました。
「覚悟はできている。俺を呪ってくれ」と…