103話 兄のために…
「へへ…勝った…」
と僕は座り込み言うと、マースさんが僕に言いながら歩いてきた。
「すごいぜ隼人!よくやったな!」
「あ…ありがとうございます…」
と僕は言うと、セレシアが僕に言った。
「ケガが多いな…タクシーで病院へ連れて行ってやろう。代金のことは気にするな。マースが全部払ってくれる」
「俺かよ!」
とマースさんはセレシアにツッコミんだ。すると、聖弥が天真に肩を組みながら、僕のところに歩いてきて、天真は僕に言った。
「ありがとう隼人…俺を守ってくれて…」
「別にそんな…礼はいいよ…。守り合うのが友達ってもんだろ…」
「ゴメン、俺ってば何も役に立てなくて…足ばっか引っ張ってさ…」
「そんなことないさ、お前がいなかったら狩武が二人になったとき、瞬殺されてたかもしれないんだからさ…」
「そういえば、なんでいきなり強くなったんだよ…?」
と天真は言うと、僕は空を見て言った。
「父さんにあったんだ…」
「父さんって松田直人のことか?」
「あぁ」
と僕は言うと、もちろん皆信じられない顔をしていた。だが、唯一、天真は普通の顔だった。
「ケガは大丈夫か?隼人」
とレアルが僕に言ってきた。
「あぁ、たいしたことは…痛っ…!」
と僕は身体を起こそうとしたとき、背中に痛みを感じた。
「…しばらく学校休んで、休養をとらないとな」
とマースさんが僕に言った。まぁ、学校を休めるならいいか…。と僕は無意識に思った。そのとき、レアルが僕に言った。
「狩武ことはどうする?今ここでトドメを刺すか、お前の父…松田直人のようにブラックホールに封印するか…。隼人、お前が決めろ」
「お…俺!?」
「そうだ」
とレアルは言うと、僕は答えた。
「…父さんは近所の住民から、狩武が存在していた記憶を頭の中に重力を流して抹消したんだ。なら、俺にも悪魔の邪眼があるから…頑張れば…狩武から神や悪魔や…そういう記憶を抹消することはできるんじゃないかな…?」
「…成功するかはわからないぞ」
とラーシは言うと、僕は言った。
「でも、僕は兄さんをできれば殺したくないんだ。だからって封印もしたくもない。昔から兄弟が欲しかった俺に…兄さんがいたっていう事実を知って最初は少し嬉しかったんだ。そして、今兄さんを生まれ変わらせることもできるかもしれない…これは…僕たち兄弟が兄弟らしくなるチャンスかもしれないんだ。だから…!!」
と僕は言うと、気を失って倒れている狩武を見て言った。
「だから…もう一度、狩武と俺にチャンスをくれないか…?」
すると、レアルは皆に言った。
「皆はどう思う?アタシは、隼人を信じてみる」
すると天真が言った。
「俺も隼人に賛成だ」
真司も言った。
「また暴れたら倒せばいいしな!」
この調子でどんどん皆は僕の意見に賛成してくれた。
「ありがとう…みんな…」
と僕は言うと、倒れている狩武に向かって歩き出した。そして僕は狩武の頭を手で押さえた。
「しかし、記憶を消すと言ってもどうすれば…脳を刺激すればいいのかな…?」
と僕は悩んでいると、黒鳥がいつの間にか悪魔界に行っていて、たった今、黒い箱の中から悪魔界の病院にいた顔面崩壊の悪魔といっしょに来た。
「黒鳥!いつの間にか悪魔界に行ってたのか!(まったく気づかなかったぜ…)」
と僕は言い、思うと黒鳥は言った。
「きっと隼人さんのことだから記憶の消し方もわからないで挑戦するのかと思い、悪魔界にいた医者を呼んだんです。この人ならきっと知ってるかと思って…」
と黒鳥が説明していると、顔面崩壊の悪魔は言った。
「また会ったの、直人の息子よ」
「久しぶりです…」
と僕はあいさつした。すると顔面崩壊の悪魔は言った。
「こいつの記憶を消すのか?」
「はい、神や悪魔の記憶を…」
「そうか、ならそいつの頭を触れてみぃ」
と顔面崩壊の悪魔は言うと、僕は狩武の頭をもう一度押さえた。
「わかるか?血の流れが…頭の中に流れる血の流れが」
「はい…」
「その流れを重力によって逆に流すのじゃ。そうすれば、血は脳の中に入っていき、だいたいの記憶…いや、すべての記憶は消えるじゃろう。ほれ、何をグズグズしておる。早くやってみぃ」
「ハイッ!」
と僕は言うと、狩武の頭を押さえ、悪魔の邪眼の重力の力で狩武の頭の中の血の流れを逆にしようとした。
狩武の記憶は無事、消えるのか…!?