一人称が変わりました
一話一話が短いのですが、なるべく長く続けていこうと思うので読んでください。
俺が学習したのと同じで絢香も学習していたらしく、俺の言葉は信用できないということらしくいまだに絢香の暴走は止まっていない。
とりあえず絢香を教室の外に連れ出して、人気の少ない所に向かっていた。人気の少ないところはやっぱりあの木が一本しかない場所がいいだろうと思ったので絢香の手を掴んで早歩きでそこまで行った。
「……で、絢香は俺にどうしろって言うんだよ。俺はこのままの自分でいることが一番だと思うんだが」
「まず俺って言うのをやめる!」
いきなり俺の一人称を否定された。まあ昔から否定され続けてきたから言い分はわかってる。
「俺だとどうしても男って感じがするんだろ? でも一人称は関係ないんだと思うんだよ。それにもうみんなの前で俺って言っちゃってるし、クラスのやつらはわかってるから、いきなり私とか言い出したら気味悪がるだろ」
「大丈夫! まだ出会って日が浅いから変えても違和感ないよ!」
絢香はどうしても俺に女の子らしい言い方をさせたいらしく一歩も引かない。
「じゃあ、俺がいきなり私とか言い出したらどう思うんだ?」
「ナオがとうとう恋に目覚めた!」
駄目だ、回避方法なんかない。変に思うどころかそんな解釈で終わるのはこいつだけだと思うんだけど。
でも俺が私って言うのはキャラじゃなさすぎる。
「俺が私って言うのはどうかと思うぞ」
「私って言わなきゃいけないなんて言ってないよ。ナオだったら『あたし』とかがいいと思うよ?」
確かにそれならまだいいかもしれない、私よりは。
「じゃあ試しに言ってみてよ」
なんか強制的にやることになってしまった。でもここは断る方向で……。
「もしかして本当は好きな人がいてその人の前でしか女の子らしくしないって気見てるとか?」
「あたしは好きな人はいない!」
変な誤解をされる前に、もう誤解されたけどさっさとこの話を終わらせたかったのでとりあえず言ってみた。
俺が『あたし』って言ったのが気に入ったのか、手を頬に当ててうっとりしている。もしかしたらこれは絢香の趣味でこうなっているのかもしれない。
「やっぱり良い~。そっちのほうが似合うよ!」
「絢香、一つ聞きたいんだが、これはおまえの趣味でやらされてるんじゃないよな?」
俺が聞くと綾香はきょとんとした。まるで『何で私の趣味でこんなことさせなきゃいけないの』と思っているかのようだ。
「もういい、わかった。とりあえずあたしでやってみるから」
「そうそう、それが一番だよ!」
満面の笑みで、とても嬉しそうに言った。
チャイムが鳴るのでそろそろ教室に戻ることにした。
とりあえず簡単に済ますためにわたしで過ごすことにした。