蘭からの最後
あたしは電話をかけていた。理由は簡単だった。
「……もしもし、蘭」
「もしも~し。早速お電話ですね、ナオさん。と言っても前の電話から二週間くらいかな?」
そう、あたしが蘭に電話するのは遅そうで、結構速かった。
でも、蘭は自分からかけてくることはなかった。今はいつもと同じ陽気な声だけど、ずっと気を使ってくれたたんだと思う。
「うん、蘭に頼みたいことがあるんだ。いいかな?」
「うん、いいよ。けど、女口調のままだね、もうちょっと男っぽくてもいいのに」
「ううん、これくらいがいいの。で、用件なんだけど――」
――優人と合わせてほしいの。
「……本気? それ」
蘭の口調が変わる。大丈夫だ、蘭なら協力してくれる。
「本気。あたしは優人と会いたい」
「……でもそれなら学校で――」
「優人が、あたしのことを避けてる。だから、蘭にお願いすることにしたの」
「……そっ、優人もバカなことしてくれるねー」
あの日からずっと、優人はあたしを避けてる。中庭にはいないし、すれ違ってもまるで何もないみたいに通り過ぎるだけ。前から挨拶をしたりする中じゃなかったかもしれないけど、明らかにあれはおかしい。不自然だもん。
「だから、優人に合わせてほしいの。場所は中庭って言っといてくれる?」
「ナオが直接連絡した方が……優人だからダメか」
蘭がそう思うならそうだろう。それにあたしは優人の電話番号もメールアドレスも知らない。
「……方法は蘭に任せるから。強制はしないでね」
「分かった、誘うだけだね。失敗しても怒んないでよ~」
「怒んないって。じゃ、よろしくね」
と言って電話を切る。一方的な電話なのに蘭は嫌だなんて言わなかった。
ごめんね、蘭。ありがとう。
心の中でそういった。
しばらくしてから、蘭かメールが送られてきた。
『ミッションクリア! 時間は明後日の五時半! これがあたしの協力する最後のチャンスだからね。大切にしなよ!!』
…………最後のチャンス。そうだ、その通りだ。
ここでまた失敗したら、本当にチャンスなんてもうない。あたしの考えたことが外れてたら、もう一度泣いてしまうだろう。
だから、これが失敗したらもう自分からは告白なんかしない。
もう、これで終わりにする。