その言葉の意味は
柴原? それって優人と…………。
「あたしと優人は二卵性の双子の姉弟。これで分かった?」
ま、今の話だとそんなに関係ないのかもだけどね。
信じられなかった。小説や漫画なんかみたいに作り物の中でならこういうのはある。結構べたかもしれない。けど、それが現実で起こるってことは、簡単には想像できない。特にあたしみたいな、現実をフィクションは何のつながりもないって思ってるやつは。
でも実際はそんなことなかった。目の前で起きてるんだ、そんなことが。
「……で、でも……蘭はあたしの気持ちを知ってるわけじゃない……」
「そうだね。知らないよ、ナオがその時どんなふうに思ったかなんて。……でもね。あたしの予想だとそうなってるの。ナオはその時から優人のことが好きだって」
いつの間にか、蘭が『優人君』ではなく『優人』と呼んでいることに気付いた。
「でもあたしは嫌いだって言った!」
「嫌いだって、優人に言ったの?」
「…………それ……は……」
蘭は「やっぱりね」と言う。そして……。
「言いたくないんでしょ、優人にだけは。ほかの誰かにはあいつなんか嫌いだって言えても、本人に嘘をつくのは嫌なんでしょ?」
「…………あたしは嘘なんか――」
またあたしの言葉は途中で途切れてしまう。蘭は絶対に言わせない気だ、あたしに優人のことが本当に嫌いだって。
「自分の気持ちに嘘ついてるとか言うラノベチックなのじゃないよ、ナオのは。ナオは自分の言葉に嘘をついてる。ほんとはわかってる、ナオはただ――」
「それ以上言わないで!!」
あたしは電話口――蘭に向かって思いっきり怒鳴った。
声は大きくして怒鳴ったつもりだけど、言葉はただの懇願だった。
なんで懇願なのか、それが示してるものなんて蘭なら簡単にわかる。
蘭はまたすぐにしゃべり始める。
「あたしがなにを言おうとしたのか、わかってるんだよね? だったら、もう電話の必要もないかもしれないね。けど、もう少し話し――」
「お姉ちゃん? どうしたの大きな声出して」
と、あたしの部屋のドアを心配そうな声とともに入っていた妹の姿を見て、とっさにケータイを自分の背に隠してしまう。
「なんかあったの?」
と、心配そうな声でもう一度聞いてくる。
「……大丈夫、ちょっとケータイで音楽聞いてたら間違えて音量上げちゃって」
「……」
こんな言葉、なんの言い訳にもなってない。だって、あたしは音楽なんてイヤホンしないと聞かないから、こんなことは起こらない。璃菜だって知ってるんだから。
「……そう、ならいいんだけど……。じゃ、お休み」
と、妹は気づいたはずなのにそれ以上何も言わずにドアを閉めて出て行った。
気を…………使われた……。
そんなことはすぐにわかった。
「…………蘭、悪いけど、また今度にしてもらえないかな……?」
今は、気分が悪い。最悪だ。
「……わかったよ。じゃ、お休み」
蘭は素直に応じてくれた。電話口から『ツ―――、ツ―――』という音が聞こえてくるので、耳から電話を離す。けど、電話のボタンを押して、その音を消すことはできなかった。