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そんな告白最低だ!  作者: 3206
第三章 イベントは行事じゃない
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電話の本当の理由

「でも、この選択肢だと必然的に三番になっちゃうよね~」

「え? なんで?」

勝手に決められそうになったので疑問。

「だってさ、ナオは王様ゲーム嫌いでしょ? 前のやつもあるんだし」

「確かに、好きではないな」

昔のやつを思い出すと、鬱になる。

「じゃあさ、あたしに仕返しするのは成功したの?」

「…………してないな」

結局メイド服着せても恥ずかしがらなかったしな。

「ってことはこの二つは消えるってことじゃん」

「ちょっと待て、二つ目のやつはそうでもないだろ? 今回は楽しかったんだし――」

「でも結局仕返しは成功しなかった。ゲームを好きになる要素がないよ?」

そういわれるとそうだ。そうなると最後のしかない。

「……もうちょっと考えさせてくれ」

そして考える時間がほしい。質問が立て続けにきすぎだ。

「じゃあもう一個質問~。ナオさぁ」


――優人君が王様ゲームに参加してたらいいなーって思った?


……いきなり何を言い出すんだ? まるで一個前の質問と同じようなもんじゃないか。

「これは簡単なはずだよ。ハイかイイエで答えればいいんだもん。ただし正直にね」

「イイエ」

「……そう、じゃ、さっきの質問に戻ろうか。そろそろ答え出たんじゃない?」

「…………」

「まだなの? ずいぶん悩むねぇ」

「……たぶん……ゲーム自体が楽しかったから……」

「…………そう、じゃあ、今回楽しいと思った要素は?」

「今答えただろ。ゲーム自体が――」

「ナオ気付かない? それ、何の答えにもなってないよ」

……何言ってるんだ? 蘭が選択肢に入れたんじゃないのか?

「あたしは『王様ゲームは楽しかったですか?』って聞いた。ナオの答えは『それなりに』だったよね。で、理由はってことで『ゲーム自体が楽しかったから』……おかしくない? 理由を説明してほしいのにただ『楽しかった』、だけじゃん」

確かに、言われてみればそうじゃないか。答えになってない。でもだったら、

「なんでこれを選択肢の中に入れたんだ?」

「…………逃げ道を罠にするため」

「……どういうことだ?」

「仕返しができたから楽しかった、それは否定したよね。違うって。だからそれは楽しい要素に入らない。で、優人君がいたから楽しかっていう答え。これは否定できなかった。で、それを選んだ時、いつものナオなら簡単に気付くはず。なんの答えにもなってないって。じゃあ、のこってる選択肢は?」

「…………それは、強引すぎないか?」

「だったらナオがほかの答えを出せばいいだけだよ。けど、出せなかった。逃げることしかできなかった。そうでしょ?」

いつもの蘭の口調のままだ。いつもと同じなんだ。なのに……。

いつもとは全然違う、温かさがない。ただひたすらに冷たい。

「逃げることしかできなかった。つまり、言えないんだよね、本当の答え。優人君がいたから楽しかったって」

「違う」

「そう? じゃあ、また保留ね。……プリクラの時、なんで微妙なの?」

まだ質問があるのか。でもこれなら簡単に答えられる。

「だからあの一件があったから――」

「晴也と仲良くなって、嫌だったの?」

「違う、そうじゃなくてただ」

「プリクラであんな表情をしちゃったのが嫌だった。ってことだね。じゃあ、一緒に撮る相手が違ったら?」

「……また優人だとかいうのか?」

「そう。優人君だったらどう?」

「あたしは萱沼に頼んで萱沼と撮ったんだ。優人を避けてた」

「なんで避けてたの?」

「王様ゲームのやつで優人がキスしようとしたからだ」

「結局やったのはナオだったよ」

「あいつは口にやろうとしてただろ」

「なんでそれだけで過剰反応しちゃうの?」

「だって普通なら――」

「普通って何? いまはナオに聞いてるんだよ?」

「…………」

なんで、何も言えないんだ? 言えばいいんだよ、正直に。

「……あたしは――」

「ナオはひたすら優人君を避けたよね、カラオケの時も。なんで?」

「だから今言った通り――」

「理由を聞いてるの、答えて」

それはつまり、王様ゲームのことを引きずってるって答えてもダメってことか?

「優人くんが一緒に撮ったならどうなの? 優人君はナオが嫌がってることを無意味にやったりはしないと思うよ」

「自己満足ってことじゃないのかよ」

「ナオ、ちゃんと言わなきゃ何も伝わらないよ」

「だから言ってる……ちゃんと!」

「正直に言ってるわけじゃない。全部正直に言えば全部答えられるはずだよ」

分かってるよ! でもいざ改めて考えると出てこない時ってあるだろ! それと同じなんだよ! パッと出てこないんだよ!

「…………ナオさ……」

蘭は、そこでいったん言葉を区切る。蘭が今、あたしの言葉に対してどんなふうに思っているのか、蘭が何のためにメールじゃなくて電話という方法を使ったのか、それが分かった気がした。

次に出された言葉は、何の変哲もない蘭の声……のはずだった。


――いい加減逃げるなよ……!



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