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そんな告白最低だ!  作者: 3206
第一章 もう一度あいつと会うことになるとは
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マシなことが起きない

毎度のことですが、すみません。

で、もうそろそろ止めてもいいんじゃなかろうか。もう俺は飽きた……あたしは飽きた。

なぜか心の中で一人称を直しているが、気にしない気にしない。

「ナオ、早く引けよ」

と、優人があたしに向かって割りばしを突き出してくる。

「……わかったよ」

そろそろ最後になるだろう。そう思ってあたしは引く。……少しずつ直ってきたかな? 一人称。

なぜ直そうとするのかはわからないが、とりあえず蘭がいる前では一人称をこれにしておいた方がいいだろうな。

「……もう俺抜きでやってくんない?」

ダルそうな声を上げる優人。だがそんなこと蘭がゲームに参加している時点で許可が下りることはない。

優人は割りばしを見せるようにあげてくる。そこにはしっかりと王と記されている。

「一番の奴に――」

「優人君さ、もうそれはさすがになしでしょ~。ほかのにしなよ」

と、蘭の静止が入る。

「……一番の奴に王様の権限を譲る」

結局それしか言わない優人であった。

「――と、全員番号提示」

なにやらもう一つ命令が追加されたが、いいのだろうか? 二つは。

「じゃ、みんな飽きてきた? 飽きてきたなら……これで最後にしておこうかな」

そう言いながら蘭は優人の前に手を出す。優人はその上に王と書かれた割りばしを乗せる。

「優人君がナオにキスすれば終わり」

「蘭、ちょっと待て。お前何番の割りばし持ってたんだよ?」

蘭は無言で割りばしを握りながら立てて、あたしの方に番号を見せてくる。表情は笑顔だ。

蘭の持っている割りばしに書かれた番号は……………………一番。

…………ボキッ

いい音が鳴ったな、その割りばし。ここで使うには勿体ない音だよ。

「……ナ、ナオさん……。割りばしを折っても結果は変わらないよ。わかってるよね? けどさ、だからって指まで一緒に曲げることないんじゃない……?」

それは蘭がいけないんじゃないかな? 親指を立ててるからいけないんだよ。

まぁ、曲げるで済んだならよかったよ。あまりにもいい音なったから、もしかしたら……って考えちゃったし。

「ナオ、あんたからする?」

親指を押さえながらあたしの方を向いていかにも『邪笑』という言葉が似合いそうな笑いを浮かべている。仕返しなのか?

「蘭、ここに転がってるDVD―RMは割れるのかな?」

と言いつつ、蘭の机にあったゲームRMを持ってくる。キャラクターが描かれているやつを、ケースの中からだして。

「ゴメン! ごめんなさい! だからそれはやめて! いや、全体的にだめなんだけど、それは特にダメなんだよ! 新発売したからまだインストしてないんだよ!」

そんな事情は知らんが、とりあえず机に上においてやる。ケースに入れないで。

すぐさま蘭はケースに入れて大事そうに抱える。

「うぅ~。もう何でもいいからさっさとキスしてよ! どっちからでもいいから!」

相当大切みたいだ、そのゲーム。涙目になってるし。制作会社はどこなんだろうか。

「……嫌だ」

あたしはもちろん拒絶。それやると本当に合コンになっちゃうからな。そんなものは体験したくない。

「……どっちでもいい」

このめんどくさがりな奴はまたこれだ。この答えはイコール了承になってしまうからやめた方がいいぞ。

「やれ」

「やれ」

「やってみたら?」

「…………」

当然のごとく蘭は命令してきたのだが……。なんで井口まで命令なんだ? それに絢香、お前はなぜ勧めてくるんだ? 萱沼もなんかぶつぶつ言ってるし。「…………優人も……けないな…………」というのが聞こえてきた。よくわからん。

集計するとだ。

拒否一人。

承諾三人。

どちらでも構わない二人。

…………やることになるわけだな。今のうちに両親への手紙を書いておこう。

『泣』

これだけで十分だろうな。

「……ナオ、なんでメモ用紙に『泣』っていう字を書きまくってんの?」

蘭が自分は全く関係ないような感じで聞いてくる。加害者めが。今手に持ってるそいつをケースごと真っ二つに折ってやりたい。

「……だるい。さっさと終わらせよう」

いかにもだるそーなアピールをしてきた優人だが、つまりお前はあれか? キスという命令は実行するということなのか? 萱沼にでもしておいてくれ。一部の人間は喜ぶから。

と、あたしが心の中でいろいろ考えていたのだが、優人があたしの目の前に来て顔を近づけてきたのでいったん考えるのをやめ、よける。

「……動くなよ」

「いやいや、ふつーは避けるよ今の。で、その行動に出た真意はなんだい☆」

めちゃくちゃイライラいてるんだ。けどなぜか笑顔になってしまう。

「……命令されたから」

「拒絶しまくるよお前のこと」

お前はロボットかよ、マスターの命令がすべてです、って感じなのかお前は。

「ナオ、いくらあがいても結果は変わらないからさ、早めに終わらせた方がいいよ」

……物わかりのいい主人公とかならばここで『仕方ないかな…………もう』みたいな心理描写を挟んで実行するんだろうけど、あいにくあたしはそんな奴じゃない。

「絶対にやんない」

「ナオ、マジでちょっと規制かかるような行為するよ?」

「なんだ? 蘭の首が飛ぶのか? それとも内臓が飛び散るのか?」

なんかよくわからんが規制がかかるらしい。

「……本当にやるよ。っていうか優人君の前で裸にするよ」

「あたしの裸なんて見てもなんもおもわねぇだろ」

と、思った通りのことを言ったのだが、こういう否定をしない言葉を使うと蘭の頭の中では了承を得たという結論に達するらしい。

いきなりあたしのシャツを脱がそうとしてきたバカ野郎を振り払おうとするが……え? なんかすでに腹の上――胸のすぐ下までシャツがまくり上げられている。あたしは急いでシャツをつかむ。

「……ナオ、どうしたの? 別にみられても平気なんじゃないの?」

「そんなことは言ってねぇ!」

「……あっ、やばい。スイッチはいりそう」

ちなみにこいつのスイッチというのは、ドSモードになるということだ。経験したことがあるからわかる。…………急いで回避せねば!

「……抵抗されると余計やる気出る…………くふ☆」

やばいやばいやばいやばい! なんかおかしくなってるよこの人! ちょ、お前らも見てないで助けろって!

「絢香! 助けて!」

俺が助けを呼ぶと絢香はしばらくきょろきょろした後、「え? 私?」と確認するように自分を指でさした。そうだよお前だよ!

すでにあたしの服はきわどいラインまで来ており、絢香があわてて止めてくれた。

あたしはもちろん蘭と距離を取って服を直す。

「……わかったから、やればいいんだろ。」

承諾、しなくてはいけないだろう。もしかしたら本気で蘭にやられるかもしれないからな。

「……だからさ。もう、いじめるのはやめてくれよ」

何度か経験した黒歴史がよみがえってくる。トラウマになりそうだ。今回の件も。

「……でも、あたしからやる。それでいいよな?」

みんな首を縦に振ってくれたのでオッケーだろ。優人に任せると危険だ。

「優人、少ししゃがめ」

優人はあたしに言われた通りしゃがむ。命令された瞬間ダルそうな顔をしたが。

…………よし。

あたしは意を決して優人の顔に自分の顔を近づける。

こういうのはしっかり描写すべきなんだろうが、しない! 少女マンガとかじゃねぇンだよ!

ほっぺたにキスして、一瞬で離れる。

「……ナオ…………」

「な、何だよ! どこにキスするかは指定されてねぇだろ!」

何でもいいからって言ったし!

「いや、そうじゃなくて…………さすがだよ」

なんかよくわからんが蘭が喜んでるっぽい。ほっとこう。

ちらっ、と優人の方を見るとやっぱり何もなかったかのように平然としている。お前がうらやましいよ。俺もそんな風になりたい。こんなことで動じないようになりたい。

でも、簡単にキスできるような人間にはなりたくない。優人がしてこようとしたのは口にだったからな! 警戒する!


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