開始前
蘭の家についてまず思うこと、それは……
「でけぇ…………」
そう、でかいのだ。蘭の家は豪邸ほどではないものの普通の人間からしたらでかいという言葉が出るであろう。現に井口君が言葉に出した。
実は俺、蘭の家に来るのは初めてだったりする。俺達が行くところなんてカラオケかゲーセンだったからな。
というわけで、土曜日の正午、蘭の家に到着した。
みんなわかってると思うがこいつらが俺の家に来たのは午前中だ。
「とりあえず中に入って~」
蘭に言われた俺たちは家の中に入っていく。
……で、蘭の部屋を拝見………したのだが。なにこれ、ちょいちょいポスターが貼ってある。しかも積み上げられたDVD‐RMのジャンルは……なんだこれ、R‐18とか書いてある。うん、見なかったことにしよう。部屋の端っこだ。ほかの人は気づかないだろう。
「松川、お前なんてもん持ってんだよ」
そういったのは優人だ。そういうのは口に出さないほうがいいぞ、ほかの奴らが気付いちまうから。いきなり気まずくなるのは避けような。
「……おい松川。これ……」
今度は萱沼が声を上げる。バカ優人、こういう風になるから黙っとくんだろ。第一発見者の俺が黙ってたのになんでしゃべっちまうかな。
「松川、かしてくれ」
…………はい? 今何がおこった? 萱沼、お前今何を言った? 俺の耳が守護霊の戯言を聞いたのではないとしたらお前は今貸してくれといったよな? 何をだ? 一体なのを借りようとしているんだお前は。
「ん? 別にいいけど、空のRMに入れたやつでいい? 大事に保存されてるからコピーしたやつじゃないと時間がかかるんだよ」
「うん、それでいい。ほかに何かおすすめはあるか?」
蘭がパソコンの電源を入れてRMにデータをコピり始めると萱沼も蘭のパソコンのデータをチェックし始めた。お前ら、みんなのいる前で何やってんだよ。女子がいるんだぞこの野郎。……いや、その女子の一人が持ち主なんだけどさ。
「……目的忘れてないか?」
なんか井口まで混ざってるし。絢香は「はぁ……変わってないんだね」という風にあきれてるし、ってか知ってたのか。そして俺はこんな状態だし……。
「……優人、てめぇは何やってんだ」
「整理」
「女子の部屋を勝手に整理してんじゃねぇ!」
なんだこいつ! なんで女の部屋という聖域を汚してんだ! 男子禁制だぞ! っていう感じのテイションで優人を怒鳴りつける。が……。
「あっ、ありがとね~」
蘭は気にしてなかった。お前が昔言ってたんだろ! 女の子の部屋は男子禁制の聖域だって! もっと自分のプライバシー守れよ!
「じゃあ王様ゲーム始めようかな~」
パソコンの画面は「RMに転送しています。残り三十秒」と表示されているが、蘭はやっと今日の本題を思い出したようだ。……優人はこのままでいいのか?
「じゃあ、割りばしはここにあるから、早速引いてこーか」
蘭が始めたので井口と萱沼も集まる。俺と絢香も割りばしを一本選んで握る。整理に没頭してやがった優人は蘭が回収してくれたので、全員が一本の割りばしを握っている。
「じゃあとりあえず、『王』って書いてあるのが王様ね。いっせーのっ――」
蘭の掛け声で一斉に引き抜いた。始まるぞ。俺か蘭が死ぬまで終わらない戦いがっ。
今更ですが、ナオって女っぽいところありませんね。
そういえば前の複線覚えてますか? 昔の屈辱とかいうやつです。あれはそろそろ消化しますので楽しみにしててください。