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「ディコ・ピンゾロは何もしない」
ナレーション
ちゃぶ台の上に置かれた黒電話が、今日も鳴っている。
ジリリリリ……
ディコ・ピンゾロ:
「……はい」
受話器を取る男は、逆モヒカンにヨレヨレのスーツ姿。
異世界に転生して三年。
彼は、いまだに何者にもなっていなかった。
ギルド職員:
「至急です!
街の北にS級モンスターが出現しました!」
ディコ・ピンゾロ:
「……明日やる」
ガチャ。
ナレーション
それだけ言って、ディコは受話器を戻した。
やる気はある。
ただし、明日からだ。
夜。
ナレーション
なぜか、S級モンスターは彼の家の前にいた。
モンスター:
「我こそは災厄を――」
ディコ・ピンゾロ:
「……近い」
彼は立ち上がらない。
スーツの袖を軽くまくり、指を鳴らす。
カツン。
ナレーション
乾いた音と同時に、モンスターは気絶した。
正確には、半分ほど消えていた。
ディコ・ピンゾロ:
「……明日、本気出すつもりだったんだけどな」
そう呟いて、彼はちゃぶ台に戻る。
ジリリリリ……
ディコ・ピンゾロ:
「……はい」
ギルド職員:
「討伐、完了しました……?」
ディコ・ピンゾロ:
「まだ」
ガチャ。
ナレーション
翌日。
街は平和だった。
ディコ・ピンゾロは、今日も何もしない。




