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アルトマギヤ  作者: タコタコ


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序章:白銀の星が生まれた日

はじめまして、タコタコです。

初投稿になります。

異世界冒険百合の物語を描いていきます。



 ヴァルト大陸中央部、ソレイユ家が暮らす集落。

 その夜、空は異様なほど澄みわたり、星々が強く瞬いていた。


 家の中では、一人の女性が新しい命を迎えようとしている。


ルナ「……っ、はぁ……!」


 白銀の髪を汗に濡らしながら、ルナは必死に息を整える。

 まだ二十五歳。

 その細い身体からは想像できないほどの強さが、その眼差しには残っていた。


ミリヤ「大丈夫です、奥様。もう少しですよ」


 落ち着いた声でそう告げたのは、茶髪を後ろで束ねた女性――ルーメ・ミリヤ。

 二十四歳のメイドで、ソレイユ家に仕えてから数年になる。


 働き者で気配りが行き届き、

 家族からの信頼も厚い存在だ。


ミリヤ「ご主人様、奥様の手を」


レルネン「ああ……!」


 同じく二十五歳の夫、レルネンは強くルナの手を握る。

 その手は、長年剣を握ってきた者のものだった。


レルネン「ルナ……君は一人じゃない。俺が、ここにいる」


ルナ「……ええ……」


 かつて一流の冒険者として名を馳せた二人。

 今はただ、一人の母と父として、この瞬間に向き合っていた。


 ミリヤは冷静に状況を見極め、的確に指示を出し続ける。

 その声が、二人を現実につなぎ留めていた。





 やがて――

 夜の静寂を破る、小さな産声が部屋に響いた。


 その瞬間、窓の外で星が強く瞬いた。

 まるで、この集落そのものを見守るかのように。


ミリヤ「……生まれました」


 腕の中に抱かれた赤子は、驚くほど静かだった。


 雪のような白い髪。

 ゆっくりと開かれた瞳には、淡く輝く金色が宿っている。


ルナ「……この子……」


 ルナは震える手で小さな命を受け取った。


レルネン「白銀の髪に、金の瞳……」


ミリヤ「……とても、落ち着いた子ですね」


 その瞬間、部屋の灯りがふっと揺れた。

 誰も魔法を使っていない。

 それでも、確かに空気が柔らかく震えた。


 だが、それ以上の異変は起きなかった。





 夜明け。


 穏やかな朝日が差し込む中、三人は赤子を囲んでいた。


ミリヤ「本当に……お疲れさまでした、奥様」


ルナ「ありがとう、ミリヤ……あなたがいてくれて、心強かったわ」


レルネン「名前は、もう決めてある」


レルネン「雨のように優しく、

     それでいて世界を潤す存在になるように」


ルナ「……レイン」


 その名を呼ばれた瞬間、

 赤子は小さく指を動かした。





 後に、この少女はこう語られることになる。


 かつて数々の大陸を巡り、

 数々の依頼と戦いを成し遂げた伝説の勇者パーティ――

 《オロチ》。


 その一員であった、

 ルナ・ソレイユと、レルネン・ソレイユ。


 二人が剣と魔法を置き、

 静かな集落で選んだ未来の中で、

 一人の少女は生まれた。


 千年に一度、世界を覆う厄災。

 それに対抗するために現れるとされる存在――

 勇者アルトマギヤ


 それがどのような運命を背負い、

 どのような力を授かるのか。


 この時点では、まだ、誰も知らない。


 その名は――

 レイン・ソレイユ。


 これは勇者と呼ばれる以前の少女たちの物語の始まりである。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

次章もお付き合いいただけたら嬉しいです。

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