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相談者03: 見栄と建前と…表層と

「よっ」と言ってジョナスの向かいに腰掛けたのは、ミオナの一件で彼女に同じ異能者として引き合わせた男子のウォンだった。

「おぉジョナスも今日は冷麺か、仲間じゃん。」

「まぁ…ここ麺類割といいよね。」

そう話して2人は少しの間麺を啜っていた。先に異能者として申告をしていたウォン達だったが、ミオナの悩みについて条約機構の方へ相談したところ、移住時期を一緒になるよう調整してくれたらしい。


ジョナスの麺も残り半分くらいかというところまで差し掛かった頃、「あのさ」とウォンが話しかけてきた。

「ちょっと前くらいから、なんか他所のヤツが学内に入り込んで悪さしてるって話あるだろ?

ちょっと頼みたいんだけどさ…。」

何かと思って食事の手を止めてウォンの方を見ると、彼は少し待てと手で示して器を持って残ったつゆを飲み切った。ジョナスは「早いね」と苦笑いをした。

「へ…悪い。そんで…頼みなんだけど。別に大した話って程じゃなくて、その他所モンの情報集めたいんだよ。だからジョナスの伝手で見たとか絡まれたとかってヤツ集めて話させてほしくて。」

「つ…伝手って…?

まあいいや…友達とかに知り合いでいないか聞くって事だよね…。」

前の一件のせいか、顔が広いと思っているらしいウォンに訂正したい気持ちを押し留めて返事をしつつ、ふと気になったジョナスは続けて質問をした。

「そう言えば学生課の方から似たような話があった気がするけど…。なんか不良だから見ても近づかないで学校側にすぐ連絡…とかなんとか…?」

そう言ってウォンの方を見ると、「ああ」と少し学校側を嘲るような表情で答える。

「まぁだいたい同じ。てかココだけの話な…。」

そう言って周囲を見回した後、少し声を抑えて話を続けた。

「ソイツ等もしかしたら異能者かもって話でさ。実はちょっと噂もあったし。まぁ俺とかは能力的にも加減とか?公式の訓練受けてないからっていうのと、そもそも許可制みたいな感じだしキホン規定外使用ダメだけど…でももしもに備えてこのプロジェクトには参加ってなってんの。」

へへ…と少し嬉しげな表情をして、彼やミオナなどは過去に遭遇した者からの情報収集をする流れになっていると話した。学校内の事は学校に所属している人間の方が適任という判断らしい。

「で…そういう情報集まりやすいとこあるかってなって、学校の方は学生に情報収集なんかさせるより集会で呼び掛けとか掲示出せばいいって言ってたけど、俺等的にはジョナスかなぁって話したらじゃあそんな感じでってなったわけ。」

ジョナスは何故そこで自分の名前が出るのか…という疑問を飲み込みつつ、確かに集会とかでそんな話はあったけど大して記憶していないな、ともちょっと考えた。また恐らくだが、過去の目撃者を呼んで話を聞くだけなら、ウォン達がその他所者に遭遇する危険も少ないからということもあるのだろう。

「てかさ、生徒を不安にさせるからとかってさ、内容省いて危険かもしれない他校生みたいな扱いで説明しててさ、どうなのよって感じ。そんな説明聞いてちゃんと情報集まらんでしょ」

そう言ってウォンは少し不服そうに頬杖をついた。「俺等が参加するのにも反対してんだぜ」と口を尖らせている。

「まぁ…何かトラブルがあったら学校が責任取らされちゃうとかそんな感じなんだろし…しょうがないよ。それに結局参加できてるわけだから…意見?とかは尊重されてるんじゃないかな。」

そう言ってジョナスが宥めると、ウォンも「まぁね」と言ってちょっと嬉しそうな表情をした。調査に参加できることが、彼にとっては大きな意味のあることのようだった。


情報収集に際して、まずはジョナス自身がそういう話を直接聞いたことのある友人や知人から話を聞き、その後他にそういう話が無いか聞いていくという流れで進めることになった。特別何か凄いことをするわけではない、と思いつつも、ジョナスも何か聴き取りの開始が少しだけ待ち遠しい様な気持ちになっていた。


「久しぶり…突然でごめんね。なんかこういう困った時って、やっぱりジョナスが頼りになるから…。」

ミオナはそう言ってウォンと一緒にジョナスの隣に座った。「もう1人来るから」と言われ、それから少し経ったくらいに1人女性がやって来た。彼女はエクレアと名乗り、「美味しそうでしょ」と満面の営業スマイルを向けてきた。

「あ…私、スタンダードなチョコとカスタードが好きです。」

「そうそう、良いよねぇ!」

と反応したミオナと話し始める。2人の会話に花が咲くかというところで聴き取り相手がやって来たので、ジョナスとウォンは少し安心したような表情になった。


やって来たのはジェイコブとルイスで、軽くお互いに挨拶を交わし、例の少女との一件の際の話を改めて確認した。エクレアは学校側が雇った相談員のような立場だという説明を行った。

「あんまり重い空気にならないように雑談みたいな雰囲気にしたかったから、この子達には居てもらってるけど、1対1で話した方がいいってことだったら外してもらうから言ってね。」

そう言ってニコリと笑顔をルイスの方に向ける。彼は目が合うと、慌てたように両手を左右に振った。

「いや、全然…!むしろジョナスがいたおかげで冷静になれて…前に自分の気持ちばっか優先させてヒトに不快な思いさせちゃって、それもちゃんと理解できて…。

だから、ジョナスいる方が落ち着くし…つか、今日話すことって確かにそんな重い空気にしたい話じゃないから、そういう意味でジョナスとエクレアさん以外もいるってのも確かにって思うんで。」

そう言って畏まるルイスに対し、困った表情で何か言いたげなジョナスを無視して「なら良かった」とエクレアが笑顔のまま答える。彼女は終始笑顔を崩さずに説明を聞いて、なんとなく聞いていたウォン達も巻き込んで質問し、比較的明るい雰囲気での聞き取りになった。ルイスの話しにくい部分についてはジェイコブとジョナスが話を逸らしたり濁していてウォン達は不思議そうにしていたが、エクレアは特に追及せずに話を進めていた。

一通り聞き取りが終わり、ルイスが帰り際に、あ、と思い出したようにジョナスの方を向いた。

「あのさ…あの子にも話聞くんだよね?

あの…しばらくこの辺りできるだけ近づかないようにするから、もし気にしてそうだったらだけどさ…そう伝えてくれれば…。まぁ、格好つけるつもりじゃないけどさ…過去は変えられないから、せめて今できるだけ近づかないから…少しでも安心してもらいたい…っていう、それだけ。」

そう言って彼は気まずそうな表情を隠すようにくるりと背中を向けた。ジョナスは「わかった」と言い、ルイスはジェイコブと一緒にその場を離れた。

それからも数日かけて目撃者達からの聞き取りを行った。ジョナスは一緒に聞くメンバーは固定かと思っていたがそうではなく、エクレアの他に1人だけの場合や、以前彼が見かけたウォンの友人が来ることもあった。彼らは学内の地図に印を付け、メモ帳にいろいろと書き込んでいる様子だった。


聞き取り人数がそこそこの数になったくらいの頃、ジョナスの元にミオナから悪さをしていた犯人が捕まったとの連絡が来た。どうやら夕方頃に大捕物になったらしい。残りの聞き取り予定の生徒達は、学校側が正式にカウンセラーを雇い、また彼らがもう学内に来ないことを説明するという形になるようである。

そうして短い期間の異能者達とジョナスのプロジェクトは終了した。

彼は寂しさを紛らすかのように、自分がもし超能力者だったなら…学校に入り込んでた者達のような嫌がらせの為の能力の使い方はしないのに、といろいろと考えてしまった。

そんな心情に関係なくジョナスの元にはまた、人が訪ねてくるのである。

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