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相談者02: 善意と感謝と愛情と…

お昼過ぎの授業が無かったジョナスは、食堂で少し遅めの昼食を取ろうとメニューを見ていたら、「すみません」と声を掛けられた。振り返るとそこには新卒か1〜2年経ったくらいに見えるスーツ姿の男性がいた。男はニコリと笑みを浮かべているが、なんだか社交辞令で笑顔を作ったという印象である。

「ここのメニューってやっぱこの日替わりっていうのがおすすめになるんですかね?」

そう質問され、もしかしてまた何か相談事かと思っていたが、そもそもここの学生でもないようだと理解した。

「今月だとパスタの日以外はそんなでもないので…今日とかだとお好み定食かな。まぁ…友人とかとそう話すこと多いだけで、全員が全員同じ意見て訳ではないですけどね。」

ジョナスがそう答えると男は「なるほどねぇ」と言ってメニューを少し眺めた後、ふと食堂の出入り口を見てから、さっさと定食を注文して行ってしまった。

ジョナスも注文を済ませて昼食を食べようと席に着いたら、2人の男子が声をかけてきて向かいに座った。片方はジョナスの友人のジェイコブである。

「ジョナス、悪いんだけどさ、コイツの話聞いてくれね?」

そうジェイコブに紹介された男はなんだか不機嫌そうにしている。彼の名前はルイスと言うらしい。

「別に…わざわざ他人に話すことじゃないっつか。まず言う必要ないし。」

ルイスがそう言うと、ジェイコブはハアと大仰にため息をついて怒りも露わに「だからさ」とジョナスの方に視線を移しながら口を開く。

「コイツ本当にやばいんだよ。なのに何言っても全く聞かないし。絶対他人の意見聞いて冷静になるべきだと思って。」

そう言われたルイスは「意味わかんね」とだけ言うと、2人とも黙ってしまう。ジョナスも迂闊に口を挟むこともできずに場が沈黙してしまった。

気まずい沈黙の中、モリモリとは食べる感じになれず、遠慮がちに食事を続けているジョナスの手元を眺めていたジェイコブが数分か、十数分したかくらいに口を開いた。

「は…なんか…。まぁちょっと、俺も…気が立ってたつうか…冷静じゃなくて酷いこと言ったかもな…。」

そう言うと、ルイスの方へ顔を向ける。

「でもさ、やっぱ友人としてルイスのこと心配だし…。だから、余計かもしんないけどコイツにお前の話、してみてくれないか?」

ルイスの方も最初よりかなり気分が落ち着いたのか、少し考える風に視線を逸らした後「わかったよ」とつぶやいた。


「オレ…結構前の話なんだけど、女の子に助けられたことあって…ずっとそのお礼を言いたいのに…なんかタイミング掴めないでいるっていうか。」

それだけ、とでも言いたげにルイスはそれだけ話した。なんとなく本人も何か悩んでいるような雰囲気は垣間見ることができる。

「ええと…例えば、その子がどこの学校か分からないとか…っていう話?」

ジョナスには何故その話を自分が聞かされるのかも、何故2人がそんなに険悪になっているのかも検討がつかなかった。「いやこの学校にいるよ」とジェイコブが質問に答えた。

ルイスは言いにくそうな表情で口を開く。

「なんか…他の学校とかでもあるらしいけど、最近ガラ悪い感じの他校かなんかの奴が入って来てるみたいな話あるじゃん。

その時もそういうのに絡まれてさ…。全然知り合いでもないのに、近くたまたま通ったら唾吐いてきて…うわって避けたら、なんか笑いながら寄ってきて背中蹴られて…。携帯取られてどっか投げられて…。」

話しながら、ルイスは伏し目がちになる。

「それで、そいつらそのままどっか行っちゃったんだけど…。その後になんか、怖くて助けには入れなかったって言いながら女の子が投げられた携帯一緒に探してくれたんだよ。乗りかかった船だからって最後まで探すの手伝ってくれたけど…結局投げた方向と全然違うとこの、しかも土に埋められてて、メチャクチャ時間かかって。なのにお礼言おうとしたタイミングでその子電話かかってきてすぐ帰っちゃったから言えなかったんだよ。」

それだけ聞くと良い話に感じるが、そうではないらしく、「その後なんだよなぁ…」とジェイコブが顔を両手で擦るみたいに覆いながら言葉を挟んだ。ジョナスが不思議そうに2人を見ていると、ちょっと気まずそうにルイスは話を続けた。

「いや、その後は普通にちゃんとお礼を言いたくて…どの授業受けてるかわかったから、その時にと思ったけどなんか人多いし声掛けにくくて、休み時間とかにと思ったけど…なんかその子の友達とか一緒にいるとこに話しに行くのもやっぱ気が引けてさ…。そんで登下校中とか?で1人になるタイミング探してって思って、声掛けられそうなタイミング見つけて…声かけようとしたら…なんか走って行っちゃったり…その、なんかあったのかなぁ…なんて。」

そう言って話すのをやめると、苦いものでも噛み潰したような顔でジェイコブが話を繋げる。

「ちなみにその登下校に声掛けて逃げられんの何回かやってる。しかも1回くらいその子の前に立ち塞がろうとして追いかけてる。」

そう言ってから、更に何か言いたげに口を開こうとしたのをギュッと閉じた。ジョナスも「それは…なかなか」と言ってその後の言葉をどう繋げたものかちょっと悩んでしまった。

「…あの、ルイスに聞きたいんだけど…。」

とりあえず話を繋げようと、ジョナスは悩みながら質問を投げる。


「今はどうしたいと思ってるのかな…?

今も直接会って話したいかとか…どんなことを伝えたいかとか…そういうところについて。」

彼自身、何を聞いたものか思い付かず、とりあえず意思を確認しようという程度の中身である。ルイスは少し考えるように腕を組んだ。

「うーん…そりゃ…直接会って礼を言いたいよ。それに…もし仮にその子にその気があるなら付き合うかもとは思うし…。確かにさ…その、ジェイコブが言ってたけどストーカー?っぽく見えるかもしんないけど。でももしかしたら…この前の奴らとその子がなんかあって…そういうのが原因で、例えば避けてる感じになってるってこともあるかもしんないじゃん。…否定できないだろ。だからもしそうなら、力になりたいし。」

ルイスの言い分に「そっか」と相槌を打ちながら、ジョナスはジェイコブの方を見ると、こめかみの辺りを指先で弄って何か考えている。また口論になるかと彼は身構えたが、よく見ると、怒るというより困るに近い表情をしていた。

「ルイスは…悪いヤツじゃないんだよ。今回の件はちょっと頑張りすぎただけっていうか、最初の巡り合わせが悪かったみたいな感じだろ。俺はどうにかしてやりたいんだよ。」

そう言って、ジェイコブは真顔でジョナスを見つめる。

「だから、コイツが誤解を解く手伝いしてくれないか?」

まともに目が合ったジョナスは少し困ったような苦笑いを浮かべ「うーん」と曖昧な返事をすると、彼は少し不安げに話を続けた。

「いや、ダメならしょうがないとは思うけど…。できたらなんだけどさ、ルイスがちゃんとその子に誤解だって説明する場を作ってやりたいんだよ。」

ジェイコブの真剣な表情を見て、できれば手伝いたいという気持ちがジョナスにも芽生えてはいた。

「まあ…できることがあればとは思うけど。その子の話って聞いたことないし、たぶん知り合いでもないと思うから、できることあるかな…?」

「いやいやあるよ。て言うよりさ、実は相手側の子の友達ってのと何度も連絡取ろうとして事情話して誤解解こうとしてたんだよ。…ああでも俺も男だから、女子友達経由でな。そしたらホラ、揉め事の解決にはジョナスだろ?お前も間に入って危険の少ない状況ならって話になったんだよ。」

ジョナスの回答に半分くらい食い気味で話し、目を輝かせてジェイコブは喜んだ。少しだけ何か言いたげだったジョナスも、その嬉しそうな表情を見ていたら、まあいいか、という気持ちになっていた。


それからの流れは本当にほぼいるだけと言っても過言ではないくらい何もしなかった。ただ、話し合いの場で相手側の子達はジョナスを見ると少し安心した表情をしていた様子だったので、彼の参加は無意味という訳ではなかったようである。

「流石にやったことがやったことだけに、そういうつもりじゃ無かったとしても、知り合い以上としては関わることは避けたいって。」

ジョナスとジェイコブはいつもの食堂で食事をしながら話していた。

「うん…まぁそうだよな。いちおうルイスにも…そういう感じにはなるだろなって、前から伝えてはいるよ。」

「…というか、本音としてはできるだけ関わりたくないって思ってるくらいだって。でも…それ言ってまた、その…付け回したりされるのが一番怖いから、そういう意味での善処ってことらしいね…。」

ジョナスは最後の最後で相手側の子の友人から伝えてほしいと依頼された内容を話した。ジェイコブも「だよな」と言って、後はルイスにどう説明したものかと悩んでいるようだった。

きっとその説明にもジョナスは参加する流れになるのだろうな、と考えた。

それと同時に、間違いをこんなに必死に正してくれる友人のいるルイスを羨ましく感じる。そしてもし自分が何か間違いを犯してしまった時、ジェイコブや、他に仲良くしてるみんなは果たしてどの程度助けてくれるのだろうかとも考えた。

そんなジョナスの不安など関係なく、また彼の元には相談者がやってくる。

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