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たぬきの嫁入り4  作者: 藍色 紺
第16章 腹に一物、背に荷物
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179話 旦那様とドン・ドラドの計略①

「まさか主となれる方と知り合いだとはな」


 化け合戦の片付けをしていたら、パパに捕まった。

 他のたぬきと片付けの最中の旦那様に断って、パパと二人きりで先に下山している。


 何がパパの目的だろう。二人きりだなんて初めて。いつだって忙しいパパが私のためだけに時間を取ってくれるはずがない。


「試練を乗り越えたのだから、ぽこは旦那様と結婚します」


「あぁ、そうだな」


 てっきり難癖つけられると思っていたのに、あっさり許可が出て拍子抜けしてしまう。


「ただの人間ではない。赤壁山の主をご降臨させた人間だ。赤壁山の生き物から一目置かれるようになるだろう」


 パパと二人きりという高揚感が萎む。

 結婚を認めて欲しい気持ちの根本には、私を認めて欲しいというのがあった。

 自分の力でいい男を選んだと褒めて欲しい。

 権力や建前なんてどうでもいい。


「まぁ、そんなことはどうでもいいか。なぁ」


 パパが夕日に向かって背伸びした。こちらを振り返る表情は逆光でよくわからない。


「え?」


「結婚に不安はないか?」


「ないけど……?」


 突然の父親モードに気持ちがついていかない。

 騙されている気がする。


「あれだけの男だ。きっとモテることだろう。英雄色を好むというしな。たぬきなら一夫一婦制だが、オズワルドさんは人間だからな」


 旦那様は俺を好いてくれるのはぽこだけだというけれど、実はそうじゃない。

 インマーグのクエスト屋受付のエミリアさんと、昔の恋人だったノエルさんが脳裏によぎった。


「でも、旦那様は誠実だから、大丈夫です」


「そうだろうとも。誠実なお方だよ。オズワルドさんは自分から道から外れることはないだろう。だが、積極的に押されたらどうだろう。優しいのだろう?」


 心臓が飛び跳ねる。

 何しろ、私自身が押しかけ女房だ。

 迷惑そうな旦那様に押しかけ、旦那様からやんわり断られたら、仕事について行き、周りの人から外堀を埋めていった。今振り返ると、逃げられない罠にかけた気がしなくもない。

 でも、旦那様は私を愛してくれている。

 優しいから、私を受け入れてくれた?

 そんなことない。旦那様も私を求めてくれている。


 余計なことに集中してしまい、木の根に足を引っかけた。

 前を歩いていたパパが私を抱きとめてくれる。

 パパの腕は太くて、力強い。恰幅のいいパパはぶつかってもびくともしない。


「オズワルドさんが、押されれば誰にでも優しいか知りたくはないかね?」


 抱きとめた私を地面に降ろしながら、パパが囁いた。


「大丈夫ですよ。旦那様はぽこだけを愛してくれていますから」


 返事が震えていて、自信がないのがバレバレだ。


「じゃあ、こうしよう」


 パパの提案を受け入れるしかなかった。

 パパは、私に自信があってもなくても、旦那様に第三の試練を与えるつもりだったんだ。



  ❄



 奥座敷の床の間に飾られている茶釜に化けた後、作戦は決行された。


「ここに入るのは久しぶりですね」


 ジョアンがパパの前に座った。緊張しているみたいで、瞬きの回数が多い。


「なぁ、息子よ。このままだとぽこはあの人間の嫁になるぞ。それでもいいのか?」


「いいわけありません。でも、おっさんが先に試練をやってのけました。ドン・ドラドの言葉は俺には絶対ですから、従います」


 ジョアンが苦笑いするけど、目は怒っている。

 化け合戦の後、ジョアンとは会えてない。僅かに安堵している自分が嫌で、それを利用するパパはもっと嫌いだ。

 ジョアンとは話しをしなくちゃならない。


「お前がうまくやれば、まだぽこを取り戻せるかもしれん」


「どういうことですかね?」


 パパがジョアンを手招きして、耳打ちする。

 話しを聞いたジョアンが目を見開いた。


「それを俺が?」


 パパが黙ったまま頷く。ジョアンが口を開いたり閉じたりして、パパの顔を見ている。


 断っていいんだよ!


 心の中でジョアンを応援するけれど、実の娘の私でさえパパの企みを阻止できていない。

 パパはずるい。

 人の弱みに付け込んで、断れない条件を突き付ける。


「やります」


「じゃあ、オズワルドさんを呼んでおいで」


 ジョアンが神妙に頷いて、奥座敷から出て行った。


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