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たぬきの嫁入り4  作者: 藍色 紺
第16章 腹に一物、背に荷物
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177話 ぽこたちときつねの化け合戦④

「俺が勝ったら、おっさんの試練はなくなる。俺が勝ち、おっさんは不戦敗になる! そうなりゃ、ぽこは俺のもんだ‼」


 声援とブーイングが混じる中、ジョアンは胸を張って戦場へ出て行った。

 男にとって、敵がいるのは誉れである。

 誰も彼もにいい顔をしては、守るものも守れない。


 堂々としたジョアンは、男の俺から見てもかっこいい。


 先刻、ぽこが化け術に使った葉っぱの束を思い出した。

 見事な束は、俺には真似のしようがないほどセンスが良かった。ぽこが葉っぱコレクションを点検するのを脇から眺めることもあるが、力説されても俺には葉っぱの違いがよくわからない。だが、ぽこのコレクションはセンスがいいし、弾かれた葉の束はそうではない。

 俺にはわからない世界だ。


 それにジョアンは里の人気者でもある。ドン・ドラドの意向はわからないが、アルベルトよりも次期里長に適しているだろう。

 そんな男に一途に好意を表されるというのはどんな気分だろうか。


 ジョアンを応援するぽこを横目で見る。つい己と比べてしまいそうになり、意識を切り替えた。

 邪魔はすまい。

 俺は俺のするべきことをするだけだ。



 観客からどよめきが起きて、目の前に集中する。

 戦場には戦艦があった。こいつも大きい、そして勇壮だ。


「どうだ! 王都で見た戦艦だぞ!」


 戦艦からジョアンの声が挙がった。十四匹のたぬきが甲板に現れて、左右七門ずつの大砲に化ける。


「こんな大きな船が王都に?」


「大砲つきだそ!」


「強そうじゃあ!」


 会場の反応はいい。


 大砲が自動で動き、標準を合わせている。


「ってぇ!」


 ジョアンの掛け声で、大砲が一斉に爆風を上げる。


 ぽてん ころころ


 発射されたのは玉ではなく、丸まったたぬきで、大砲も消えてなくなった。


「これは血威無恨暗(チームジョアン)! 残念な大砲となりました! きつね側はどうでしょうか!」


 ジョアンの見せ場が終わると、きつね側から鼻の長い灰色の生き物が現れた。


 パォォン!


 戦艦や男神ほどではないが、充分大きな生き物で、鼻の根元から長い牙が生えている。

 鼻の長い生き物は、ゆっくり戦艦に近づいて来た。

 派手なパフォーマンスはないが、戦艦の底に頭と牙を突き付けて力いっぱい押し始める。


「はんっ! そんな力で倒れるもんか」


 鼻の長い生き物は、懸命に戦艦を押しては引き、押しては引きを繰り返す。太い脚が地面を掻いて土が盛り上がる。


 最初は小さな揺れだったが、押し引きを繰り返す内に、大きな戦艦は小さな象によって大きく揺れ始めた。


「せーの! せーの!」


 二尾のきつねの声に観客が声をあわせる。

 戦艦からたぬき型の脚が四本突き出て、踏ん張るが、陸の上にある船は安定が悪い。


 とうとう、ジョアンの戦艦は大きく左右に傾き始めた。

 東西の観客席に穂先がぶつかって、客席が大破していく。大慌てでたぬきときつねが避難する中、鼻の長い生き物はジョアンを押し続ける。


「死なばもろとも!」


 ジョアンの出した脚が地面を大きく蹴った。

 戦艦が鼻の長い生き物の方へ傾いて、ひっくり返り、押しつぶした。


 爆風の後には、たぬき相の悪いジョアンときつねが目を回している。。


 カンカンカンカーン‼


「この勝負、引き分けとします!」


 やんややんやと会場が湧いた。人間姿になったジョアンが肩を落とし、歯噛みしながら選手席に戻ってくる。

 出迎えたぽこを見て、自嘲気味に笑った。


「悪ぃ、おっさんまで順番をまわしちまった」


「おじさん、何か策はあるの?」


 肩をすくめるしかない。俺に化け術は使えない。


「どら、一丁やるか」


 声も出ない四人を置いて、戦場へ向かった。

 目の前には、既に巨大狼がいる。


 どうもたぬきもきつねも、何でもかんでも大きくすればいいと思ってるな。これでは、狼の衣を借るきつねではないか。


「オズワルド選手! さぁ、何に化けるでしょうか⁉」


 会場中の注目を浴びる中、特に気負いもなく返事する。


「俺は人間姿のままだ。この術、決して解けまいよ」



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