表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たぬきの嫁入り4  作者: 藍色 紺
第16章 腹に一物、背に荷物
24/45

176話 ぽこたちときつねの化け合戦③

「後がなくなったぞ!」


「レナにプレッシャーをかけないで!」


 ジョアンが叫び、ぽこが諫める。

 歩き姿だけでも艶やかで品のあるレナが登場すれば、敵味方関係なく応援の声が飛び交う。

 レナは返事一つせずに、対戦相手のきつねと向き合った。


「暁の異名を持つこの美しさ! 我々きつねからも大変な支持を得ています! たぬきにしておくには惜しい!」


 レーナー‼


 野太い大合唱がきつね側から起こった。


 レナが華麗な動作で右腕を上げた。手から銀杏の葉が無数に零れ落ちるのを、左手の扇で仰ぐ。

 銀杏の葉が舞い上がり、レナの身体が覆われて見えなくなった。

 息を飲んで見守る観客。

 爆風が上がって、銀杏が吹き飛んだ。


 レナのいたところには、女神像があった。


「あぁ……なんて美しさだ」


 司会の二尾のきつねが言葉を失った。観客から吐息が漏れる。

 身体のバランスがこれ以上なく完璧だ。出るところは出て、出すぎない。引っ込むところはひっこみ、引っ込みすぎない。肩にかかる髪の一筋でさえ、うっとりするほど美しい。


「ならば! 像対決だ!」


 相手のきつねが爆風を上げた。

 レナの女神像の前に、巨大な男神像が立ちふさがった。


 おぉーぅ……。


 たぬき側だけでなく、きつね側からも残念なため息が零れた。


 でかすぎる。


 アルベルトが最初に化けたドラゴンほども大きく、男神像の全容は見難い。

 下から見上げてよく見えるのは男性のシンボルで、それで観客からひんしゅくを買っている。


 カンカンカンカーン!


 怒り気味に鐘が鳴らされた。


「レナ様の勝ちぃ‼」


「早よどけー! レナ様が見えんわい!」


 化け術を解いたきつねが、罵声に驚いてそそくさと退場した。レナが元の姿に戻ってきつねとたぬきの両方の観客に手を振る。


「レナ様―!」


 なるほど。レナが人気枠というのは、こういうことか。


「ぽこ!」


 レナが会場の真ん中で、ぽこを呼ぶ。


「旦那様! 行ってきます!」


 俺に手を振ったぽこが、レナの隣に並んだ。

 美の権化であるレナの隣にぽこが立つと、華聯で儚さが増す。


 露出の激しいレナに対し、ぽこの衣装は露出は控え目で、健康的な脚線美だけだ。腰元で結んだ大きなリボンが身体の小ささを強調する。


 レナがぽこの腰に腕を回し、ぽこはレナの肩に頭を寄せた。


 うぉぉぉん‼


 会場中から唸り声が起こった。


「尊いぃぃ!」


 二尾の狐が二人の前に跪いて崇めた。演出がかってはいるが、わからなくはない。


 金属が地面にぶつかる音が響いた。

 レナとぽこの前に大柄な金属鎧が立ちふさがった。ただし、頭はない。


「これはデュラハンだー!」


 首無し騎士の魔物で、死を予告するとして恐れられている。

 化け術とはいえ、重厚なプレートメイルも見事だし、あるはずの首がないのもおどろおどろしい。

 右腕で頭を抱え、逆手で長剣を引き抜いた。

 レナとぽこを長剣で挑発する。


 ぽこが、巾着ポシェットから葉っぱの丸い束を出した。

 昨日、ジョアンから貰ったものだ。泣いて花鳥庵(かちょうあん)から出てこなかったから心配したが、ちゃんと受け取ったらしい。


 選手席に座っているジョアンは、嬉しそうな顔でぽこを見つめている。嬉しそうで、恋する男の表情に、俺までどきりとした。


「誰ぞ彼、彼は誰ぞと問ふならば~」ぽぽん♪


 ぽこが葉っぱの束を片手に歌いながら舞い始めた。たぬきたちの腹鼓が合いの手に入る。


「白みゆく空、紫だちたる雲こそをかし」ぽぽぽん♪


 ゆっくりした舞なのに、一挙手一投足に見入ってしまう。一朝一夕に習得できる舞ではなく、長年練習を積んできた迷い一つない舞は見事だ。


彼誰時(かはたれどき)のぽこ、参る!」


 大爆発の煙が消えた後には、花鳥庵(かちょうあん)があった。


「これは、茶室でしょうか⁉ ぽこ様は⁉」


 突如として出現した茶室に、デュラハンが戸惑いながらも、近づく。

 狭い入り口が、音もなく自動で開き、デュラハンは先に頭だけを入れ、後に大きな身体を屈めて中に入った。

 入った途端、茶室の外壁が透明になって中が見えるようになった。


 あの茶室、ぽこか?

 そうでなければ、扉が自動で開くわけも、壁が透明になるわけもわからない。


 デュラハンを内部に納めて、どうするつもりだ?


「頭部がない分、入りやすそうではあります! さて、デュラハンにお茶のたしなみはあるのか⁉」


 司会者の言葉に、デュラハンは親指を突き立てて任せておけとジェスチャーした。


 プレートメイルで全身を包んだデュラハンが、脚を畳んで座り、奇妙な釜で湯を沸かした。

 茶碗に竹の道具でお茶を作り始める。


「おぉっと見事なお点前!」


 続いて中に入った二尾のきつねが、出されたお茶をすすり、茶わんを指でぬぐった後、しげしげと茶碗を眺めてから床に置いた。

 戻された茶碗を回収しようと腰を上げたデュラハンが、倒れる。

 金属と金属がぶつかる激しい音がした。

 デュラハンが、草のじゅうたんの上で脚を抱えてひっくり返っている。


「脚が痺れて立てない! 重い鎧が響いたか! デュラハンの負けです‼」



 もはや、何を持って勝負がついているのかは不明。


「旦那様勝ちました! これで王手です!」


 爆風と共に、選手席にいた俺にぽこが飛びついた軽い衝撃があった。


 会場中の雄たちから、冷たい視線を感じる。

 ジョアンがぽこと俺へ指を突き付けた。


「よく見てろよ!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただきありがとうございます

おいしい食べ物を通して、人と人の反応が生まれる瞬間――
そんな場面を書くのが好きです。
あなたの楽しみになるよう、更新していきます!


bizgg6qccafulxhy3du9mafehft3_gcb_ic_uk_98ii.png
『たぬきの嫁入り 短編』へ



〇 更新情報はX(旧Twitter)にて

▶https://x.com/aiiro_kon_



〇 ご感想・一言メッセージをどうぞ

→ マシュマロ(匿名)
https://marshmallow-qa.com/ck8tstp673ef0e6



〇 新しい話の更新をお届け

こちら ↓ で、『お気に入りユーザ登録』お願いします。
(非公開設定でも大丈夫です)
▶▷▶ 藍色 紺のマイページ ◀◁◀




いいねや反応を伝えてもらえると、
新しい物語の活力になります☺️


本日もお読みいただき、ありがとうございました。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ