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灰かぶりは王子様の手ではなく、魔法使いの弟子を選びました  作者: 海坂依里
第2章「灰かぶりと魔法使いのお師匠様」
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第2話「願い」

「生活費を望んだ方が、楽なのに?」

「私の願いは大金を手にすることではなく、ポルダ家を出ることです」


 アルバーノ様に関わる誰かが、私に親切にしてくれたところまでは分かっている。

 私を助けてくれた恩人さんが今もアルバーノ様の元で働いているとは限らないけれど、それでも私と恩人さんを繋ぐ唯一の手掛かりはアルバーノ様。


「願いを叶えるには、城で働く魔法使い様にお仕えすることが一番の近道だと思いました」


 アルバーノ様の元で働くことは、私の人生を幸せにすることに繋がっていくと信じたい。


「もともと、アルバーノ様に恋心は抱いていません」

「アルバーノ様が悲しまれそうな発言だね」

「あんな一時の時間で、人は恋に落ちることはできないみたいです」


 魔法使い様は苦笑いをされるけど、そこに不快さというものは感じられない。


「お恥ずかしい話ですが、私はアルバーノ様の財産目当てだったので」

「恥ずかしくないよ。生きていく上で、お金は大切なものだから」


 幼い頃に憧れを抱いた物語の世界では、お金目当ての主人公なんて望まれていない。

 現実を生きる私だからこそ溢れる本音を、魔法使い様は肯定してくれる。


「アルバーノ様への恋心はありませんから……たとえお義姉様のいじめが継続したとしても、意外と上手くやっていけるのかなと」


 後悔のない選択ができた私は、ようやく綺麗な笑みを浮かべられるようになった気がした。


「魔法の力が必要のない願いを託されちゃったなぁ」


 穏やかな笑みを浮かべながら、魔法使い様は深く呼吸をした。


「もしも叶えてくれるのなら、私が失態をしたときに助けてください」


 魔法と呼ばれる力が存在していることは知っていても、こうして身近に魔法の存在を感じられるようになったのは初めてのこと。

 魔法使いという知り合いができたことに喜びを感じながら、満足げな態度でお茶を口にする。


「難しそうでしょうか?」

「どうせなら、僕の弟子になりませんか」

「…………え?」

「随分と素っ頓狂な声をありがとう」


 素っ頓狂と言われたと同時に、お茶を吹きこぼしそうになるほど驚いた。

 女性が喜ぶ言葉が投げかけられたわけではないけど、私はおとなしく魔法使い様の言葉を待った。


「今は何一つ魔法が使えないだろうけど、将来的には城で働くよりも良い給金を得ることができると思う」


 笑顔を浮かべている魔法使い様に対して、私は魔法使い様の提案に呆然としてしまっていると思う。


「魔法という力は、消滅寸前だと伺っています」

「だからこそ弟子を必要としているんだ。魔法と呼ばれる未知なる力を絶やさないためにも」


 人々の生活を豊かにするために使われ、人々の平和を脅かす脅威にもなりえる魔法と呼ばれる存在。

 代々、親から子へと継承される力ではないからこそ、今は魔法を使うことができない私でも魔法の才能を開花させる可能性は十分にあるのかもしれない。


「……稼ぐことはできますか」

「あなたが独り立ちする頃には必ず」


 壮大な夢物語のはずなのに、魔法使い様は自信を込めた言葉を与えてくれた。


「エルミーユ様が、幸せになるための手伝いをさせてほしい」

「……どちらかというと、私の幸せというよりは」


 もちろん、魔法の才を開花させることなく終わってしまう可能性もあるということ。


「民を幸せにするための力を得られそうで、わくわくします」

「民の幸せが、あなたの幸せに繋がるといいね」


 ポルダ家という貴族の家系で育っても、家族の中で末端を生きてきた私に平民を幸せにする権力も財力もなかった。

 でも、魔法という新たな力は、私以外の誰かを幸せにできるんじゃないかという初めての希望を与える。


「師匠と弟子から始まる関係ではあるけど、必ず幸せにする」


 まるで、名案が思いついたときのような楽しそうな笑みを浮かべる魔法使い様。

 突然の展開を受け止めきれない私を置いていくところが相変わらずすぎて、私も自然と笑みを浮かべられるようになってしまうから不思議だった。


「僕の手を取ってくれる?」


 差し出される手。

 まだ、迷っている。

 宙をさ迷う自分の手が格好悪いと思うけれど、私の物語を紡ぐのは私しかいない。

 そう自覚できた私の手は、迷うことをやめた。


「はい」


 覚悟を決め、私は魔法使い様の手を取った。

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