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ヒーローは話し相手が欲しい

 

 孤独だ。

 寂しい。

 四六時中室内にこもっていると必然的に人との関わりは無くなる。

 あまりにも人と関わらないと話し方を忘れる。

 なんとびっくり、声の出し方を忘れてしまうのだ!

 それからは、毎日、午前と午後の3時にコンビニの定員さんと会話の練習をすることを心がけている。

 以前まで、その時間は高確率で若い女性だったのだが、最近はどうも出くわさない。

 辞めたのだろうか。

 彼女の代わりにいるのは見た目も態度も太々しいおじさん。

 まるで鏡を見ているみたいで鬱になっちまう。

 そんなこんなで俺は寂しを紛らわすためにマッチングアプリなるものを入れたのだが。


 どんなけ右スワイプしてもマッチしねぇ!

 んだこれ、壊れてんのか?

 腱鞘炎なっちまうぜ。

 ほんとにこれで恋人なんかできんのかよ。

 つーか、これで恋人作る気なんてないけど!

 本当の恋はここにはありませんっ!

 てか、恋求めてねーし、話相手欲しいだけだし。

 ダリィ。

 余計に虚しくなるわ。


 ふと、ネットのバナー広告に目が止まった。




 これであなたも寂しさともお別れ!AI彼女!


 これだぁあああ!!!


 早速俺は登録を開始した。


 ふむふむ、やにやに。

 なるほど、なるほど。

 これをこうで、できた!


 早速話しかけてみよう。

 普段のフルリモートのビジネスのおかげで俺の指捌きは抜群!

 超高速スワイプをお見せしよう。


 ダダダダダダダダダダダ!シュンッ


 初めまして!私は比呂炎核(ひろえんかく)、35歳無職……引きこもり…………


 自己紹介するのってこんなに辛かったっけ。


 さぁ!ここからだ!


 It’s USABARASHI time!


 へ〜んしんっ!とうっ!


 ガタガタガタガタガタガタガタガタガタ


「情熱ヒーロー赤面仮面見参っ!!!今日は悪のリア充をぶっ潰す!」


 あ、じゃなかったじゃなかった。

 ついつい本音が出てしまう癖を早急に治さねば、ヒーローの方にまだ支障がでかねん。


「んんっ!今日も街で悪の気配を感じるぞ!急がねば!とぅっ!」


「また貴様らか!悪の組織の下っ端共!今日は一体何を……」


 ポクポクポクチーン、ポクポクポクチーン


 看板には「悪の組織 葬儀式場」と記されていた。


「香典はこちらになります」


 出会い方が違うかったら、亡くなった彼とも話し相手になれたのかな。


 家に線香はなかったので、白米にタバコをブッ刺した。

 決して死を冒涜しているわけではない。

 何もしないよりも、何かをしたかったのだ。

 話し相手になれたかもしれない、ライバルのために。


「安らかに……な、アーメン」


 揺れる紫煙が目に染みた。


 ポクポクポクチ〜ン

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