第4話「歯車の戦場」
慧は神域の中心で、目の前に立つ男性――自身を創り出した存在の言葉に衝撃を受けながらも、まだ理解しきれていなかった。
「俺が世界を修復するために創り出された兵器…?」
その言葉に、慧は深い疑念を抱く。自分が人間であるという記憶を失ってまで、「歪み」を修復する役割を担うために作られたとは、あまりにも不自然すぎる。
「だが、君が求める答えは、すぐには与えられない。」
男性は冷たい眼差しで慧を見つめ、静かに手をひらめかせた。その瞬間、神域全体が震え、巨大な歯車が音を立てて動き出した。
「君は本当に世界を修復したいのか、それとも壊したいのか。選べ。」
その言葉と同時に、周囲の空間が歪み始め、無数の歯車が空中に浮かび上がり、彼を取り囲んだ。
慧は瞬時に周囲の状況を把握した。歯車が飛び交う中で、彼が動ける場所は限られている。だが、すぐに理解した。戦わなければ、答えにはたどり着けない。
「なら、戦うしかない…!」
慧は一歩踏み出すと、体内のエネルギーを解放し、全身の機械仕掛けが反応し始めた。
「フラストレーション、解放。」
その瞬間、慧の右腕から鋭いエネルギー刃が発生し、周囲の歯車を切り裂く。反応するように、歯車たちが空中で光を放ちながら集結し、巨大な戦闘形態を形成した。
「来い…!」
巨大な歯車が一気に向かってきた。その動きは計算され尽くしており、まるで生き物のように慧を追い詰める。だが、慧は冷静にその動きに対応した。
「確かに、この体は兵器だ…でも、だからこそ無駄に死なない。」
慧はエネルギー刃を振り回し、飛んでくる歯車を次々と切り裂く。そのたびに、歯車は爆発を起こし、光の粒子となって消えていった。
だが、歯車の数は増え、ますます激しく攻撃してきた。慧は次第に追い込まれ、ついに大量の歯車に囲まれてしまう。
「まずい…!」
その瞬間、慧は自分の体内から「別の力」を感じた。それは機械的な力ではない。人間としての残りの感覚が呼び覚まされていくような感覚だった。
「これは…力の源?」
慧はその力を自覚し、何かが体内で目覚めるのを感じた。突然、胸部から蒼い光が溢れ出し、周囲の歯車がその光に吸い寄せられるように動き出す。
「これが…人間の力…?」
その力を引き出した瞬間、周囲の歯車が急激に動き出し、空間全体が歪み始めた。慧はその力をコントロールし、歯車の動きを自在に操ることができるようになった。
「動け、歯車たちよ…!」
慧の意志で、無数の歯車が動き、彼の指示に従う。歯車の一部が敵の歯車を押し戻し、次々と倒していった。
その中で、慧は再び戦いの中で冷徹さを取り戻し、強烈なエネルギー刃を解放して、残りの歯車を次々に破壊していく。
「今だ…!」
そして、最後の一撃を放つと、全ての歯車が爆発し、周囲の空間が静寂に包まれた。
戦闘が終わり、神域の中心部が静けさを取り戻す。だが、慧の心はまだ揺れていた。
「これで終わりか…?」
そのとき、再び男性の声が響く。
「お前は、まだ本当の目的を知らない。歪みを修正するためには、さらに深くその力を理解しなければならない。」
男性の言葉に、慧は無言でうなずく。
「君が望む未来は、これからの選択によって決まる。だが、その道の先には…」
その言葉と同時に、再び空間が歪み、何かが現れる。
「新たな試練が、待っている。」