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第3話「神域の影、潜む真実」

アストラは、咲との記憶を胸に抱きながら、目的地である「忘れられた神域」への道を進んでいた。道中、どこまでも続く荒野が広がり、まるで世界そのものが無限に歪んでいるかのように感じられる。


「この世界は、どこまでが現実で、どこからが作り物なんだ?」

慧は自問自答しながら歩き続ける。


体の中で、機械音声が再び響いた。


「警告:覚醒度45%到達。強制オーバーロードモード解除。慎重な行動を推奨します。」


「オーバーロード…?」


その言葉を聞いて、慧は背筋に冷や汗を感じた。覚醒度が上がるごとに、自分を保てる自信が薄れていくのが分かる。この体の中で何かが確実に変わっている。


「もし、俺が本当にこの世界の“歪み”を修正しなければならないのだとしたら…」


そのとき、前方に異常な光景が広がっていた。数百メートル先に、巨大な遺跡が見える。歯車のような構造を持つ神殿のような建物。その建物の周囲には、無数の機械が集まり、動き続けていた。


「あれが…神域?」


慧は一歩一歩慎重にその場所へと近づく。周囲の異常な静けさが、ますます不安を募らせた。建物に近づくにつれて、彼の体内の“機械”が強く反応し、胸の奥で異常な感覚が湧き上がった。


建物の入口に立つと、目の前に大きな扉が現れた。精緻に彫られた歯車の模様が、まるで命を持つかのように蠢いている。慧はその扉を押し開けようと手を伸ばす。


すると、扉の隙間から一条の光が漏れ、慧の手に触れると同時に、全身に衝撃が走った。目の前に現れたのは、無数の記憶が結びついた「映像」だった。


「記録を解放…過去の設計図を確認しますか?」


慧は再びその言葉を選択する。すると、映像の中に自分の過去が再び浮かび上がった。


映像に映るのは、機械と人間が共存していた過去の世界の一片。そこにいるのは、若き慧と、異様に美しい女性だった。彼女はどこか不安げな表情を浮かべながら、慧に向かってこう言った。


「覚えてる?あなたが私に渡した、あの星のかけら…あなたは必ず帰ってくるって約束してくれた。」


その女性は、慧にとってまるで見覚えがあるかのような顔をしていた。しかし、記憶は完全に封印されており、名前すら思い出せない。


「俺が…帰る?」慧は呟きながらその映像を見続ける。


そして次の瞬間、映像が途切れ、現在の神域の中心部に移る。ここには、巨大な歯車の構造が無数に積み重なり、世界を支えているような光景が広がっている。その真ん中に、1人の男性が座っていた。


「お前が来るのを待っていた。」


その声は、まるで慧の記憶の中から引き出されてきたかのように懐かしい。


「君…どこかで…」


その男性は、冷たい視線で慧を見つめながら言った。


「お前は、俺が創り出した存在だ。君の名前はアストラ。だが、お前の記憶はすでに消されている。」


慧はその言葉に驚愕した。


「創り出した…って、俺は人間じゃないのか?」


その問いに、男性は静かに頷いた。


「お前は、世界を崩壊させる“歪み”を修正するために作られた、最後の兵器だ。しかし、君の役目はまだ終わっていない。」


慧はその言葉を受けて、ようやく自分がどのような存在なのかを理解し始める。自分は、最初から世界を修復するための「道具」であり、記憶や感情を持つことを許されていなかった。しかし、なぜ自分は人間性を持つようになったのか、その理由は未だにわからない。


「俺は、何のために戦っている?」


その問いに、男性は答えなかった。ただ、目の前に広がる歯車のような世界を指差して言った。


「君が選ぶ道によって、この世界の未来は決まる。」


その言葉の意味を理解したとき、慧は再び強い決意を抱いた。


「選ばなければならない…何かを守るために、何かを壊さなければならない。」


そして、次の瞬間、目の前に巨大な歯車が回り始めた。


「この世界の歪みが、再び動き出す。」

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