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アイアリス・レジェンド ~虹の女神と闇の王  作者: RIKO(リコ)
第三章 虚無の王宮 水晶の棺
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第37話 浄化の力

「こいつの体をとりまいている嫌な空気……これって、いったい何なんだ?」


 呼吸と呼吸の間を数えるように、ラピスはゴットフリーの息遣いに耳をすませながら言う。どうも、その嫌な空気の出所は彼の体の中のようなのだ。


「私には、はっきり見えますよ。ゴットフリーの吐く息が黒く濁っているのが……」


「だから、その黒い息は何なんだよっ」


 ラピスは、我慢がならない様子で叫んだ。BW(ブルーウォーター)の遠まわしな物言いが彼を余計に苛立たせていた。


「闇の戦士。だが、今はただの破壊者にすぎませんが」


「ちっとも、言ってる意味がわかんねえよ!」


 無意識にラピスは、自分が感じているゴットフリーの回りの“嫌な空気”を払いのけるように手を振った。すると……


「何っ」


 ぎゅっと握りしめる手の中に、うごめく者がいる。


 これが、闇の戦士? こんなちっぽけなモノが。

 だが、


「痛っ」


 鋭い痛みとともに、ラピスの手の中から血がしたたり落ちてきた。


 この野郎! 俺の手を食いちぎる気か。まさか、ゴットフリーの体の中でも、こんな悪行を働いてやがるのか。


 そう考えると、無性に腹がたってたまらない。ラピスは手の中のうごめくモノをひねりつぶすように、ぎゅっとその手を握り締めた。その瞬間、


 きらりと空間が輝いた。


そして、一瞬のうちに消え去った黒い靄

BWは、ただ唖然とその様を見つめていた。


 闇の戦士を浄化した……?


 BWの驚きなど気づきもしないで、ラピスは次々とゴットフリーが吐き出した闇の戦士を灰汁をすくいとるように握り締め、消し去ってゆく。


「畜生っ、こんな奴らがまだ沢山、ゴットフリーの体の中にいて、悪さをしてるんだな。こいつら、どうにかして外へ出せないかな」


「……私にはどうにも……」


 珍しく弱気なBWに目をやり、ラピスはちっと舌を鳴らした。


「お前もレインボーヘブンの欠片なんだろっ」

「何か勘違いされてませんか。私はジャンみたいな癒しの力は持ち合わせていませんからね」


 そう。それなのに、人間のラピスがその力を持っているなんて……


 苦しげに息を荒げるゴットフリーの胸に、ラピスは心配げに手をあてた。


「この傷、この傷が熱を出させるんだ。でも、前に診た時は闇の戦士なんて影も形もなかったのに」


 前みたいに解熱剤くらいでは効きそうもない。それに今回はマジで命が危ない。


ゴットフリーが死ぬ? 俺は嫌だ。それだけは絶対に嫌だ。


  知り合ってから、1ヶ月もたってやしない。それでも、ラピスはそう思わずにはいられなかった。


  だが、どうすればいいんだ?


  ラピスは苛立つ気持ちをぶつけるように、そばにあった机の上に拳を打ちつけた。すると、ばんと打ち鳴ったその音と同時に……突然、床が小刻みに揺れ出したのだ。


 BWがラピスに目を向ける。

「地震……?」


 だが、ラピスは、

「にしては、揺れが変だ」


 小さな揺れは輪を縮めながら、確実にこちらへ向かってくる。ラピスは鋭い感覚でそれを察すると、ゴットフリーの横へぴたりと身を寄せた。

 小刻みな揺れが急に大きく波を打った。……とその時、


「あっ……」


 BWはあまりの眩しさに、一瞬、あたりが見えなくなった。


  ゴットフリーの体を突き抜けてゆく蒼の光。


  そして、ぶわりという音と共に大量の黒い靄が彼の中から飛び出してきたではないか。


「闇の戦士か! 畜生、お前ら全部、消えてなくなれっ」


 ところが、ラピスの声が届く前に、黒い靄は蒼の光に溶かされ、あっという間に姿を消してしまったのだ。


 静寂だけが跡に残った。地面の揺れも今はもう感じない。そして、ゴットフリーの息遣いまでが、少し軽くなったように思われた。


「何が起こった? 闇の戦士はどこへ行った?」


 きょとんと不思議な面持ちのラピスにBWが言う。


「ジャンだ! あそこまで眩い蒼の光を放つのはジャン以外には考えられない……あんなに大量の闇の戦士を浄化させるなんて、本当に凄まじいまでの力を持っている」


 ラピスはいささか不満げな顔で言う。


「なんだ……あいつがやったことだったのか」


 けれども、BWは眉をひそめながら、窓の外に目を向けた。


「心の準備をしておいた方がいいですよ。グラン・パープル島を媒体にして、彼はゴットフリーの居所を知ってしまった。多分、ジャンはもうすぐ、こちらへやってきます。こんな状態のゴットフリーを見て彼が逆上しなければいいんですが……」

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