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アイアリス・レジェンド ~虹の女神と闇の王  作者: RIKO(リコ)
第三章 虚無の王宮 水晶の棺
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幕間 ~ 双子の記憶

 黒馬亭の柱時計が午前0時を知らせる鐘の音を鳴らした。


 ラピスが時計の方に目を向ける。ラピスは、双子の姉弟 ― 迦楼羅かるらとグウィン ― に、彼らの母親(ココ)に替わって、ゴットフリーと、その仲間たちの物語を聞かせてたのだが、

 

「さぁ、約束の午前0時を回った。今日の話はこれで終わりだ」


「ええっ、もっと話の続きを聞かせてよ。レインボーヘブンの6番目の欠片を探しに、エターナル城の迷宮に入っていったゴットフリーと母さんがどうなったかも知りたいし、王妃の正体も滅茶滅茶、気になる! ねぇ、グウィンもそう思うでしょ!」


 迦楼羅はそう言って、横にいるグウィンに視線を向けた。すると、グウィンも、


「うん。それに、ラピスさんの目のことも……」

「俺の目?」


 ゴットフリーに似た灰色の瞳をラピスに向けて、グウィンは言葉を続ける。


「だって、今のラピスさんは目が見えるのに、何で、昔はそうじゃなかったの? 誰がその目を直したの? 確かレインボーヘブンの欠片”大地”であるジャンは怪我を直す力を持っていたよね。ラピスさんはジャンに見えない目を直してもらったの? それに、見えなくてもこの世のすべてが分かっただなんて、その話だって信じられないよ。色々なことが謎だらけだ。このままじゃ、帰ったって先が気になって眠れやしない」


「あ~、でも、この話は長すぎて、とても一日じゃ最後まで話すのは無理だ」


 ラピスは困り顔をした。その時、彼の傍にいた天喜あまきが、助け舟を出してくれた。


「迦楼羅もグウィンも無理を言っちゃ駄目でしょ。ラピスだって忙しいのよ。午前0時までって約束したんだから、それをちゃんと守らなきゃ」


 天喜は優しく、迦楼羅の頭に手を置いてそう諭した。ふくれっ面のままの迦楼羅を見て、ラピスは笑う。


「そんな顔をするなよ。話の続きはまた次の週末にしてやるから。俺だって、二人にはきちんとゴットフリーたちのたどってきた道を知ってほしいし」


 天喜はまだ不満げな双子の背中をぽんと押して、彼らを急かせた。


「分ったなら、みんなの家まで送ってゆくから、さっさと用意しなさい」


*  *


 渋々、ラピスの提案を受け入れて、家への帰り道を歩く双子。二人の前を歩いている天喜とラピス。親しげに話を交わす彼らを見て、迦楼羅が言う。


「ねぇ、グイン、あの二人はなかなかお似合いだと思わない?」

「まぁね、でも、ラピスさんには、小さな子どもだっているし、奥さんには逃げられたって聞いたけど」

「あの変わった子どもの世話が嫌んなったんだろうけど、ラピスって、やたらに女の子にモテるから、奥さんが嫉妬したんじゃないの?」


 「かもね」と頷くグウィンに、迦楼羅は人の悪い笑みを向けて言った。


「でも、天喜を見るラピスの目は、絶対に本命を見る目よ。天喜だって、まんざらでもなさそうじゃないの」


 グウィンはそれには首を傾げ、


「僕が思うに、天喜には忘れられない人がいるんじゃないかなぁ」

「誰よ? ゴットフリーとか?」

「いや……、僕、うっすらと覚えているんだ。小さい時の記憶。天喜の家に大きな男の人がいて、よく抱いてくれたことを。すごく大きくて優しい手だった。顔の髭がこそばゆくてっさ」

「それって、タルクのこと?」


 迦楼羅はしばらく考える。大きな男の人……そういわれてみれば、そんな人がいたかも。


「グウィンに言われて、私も色々と思い出してきたわよ! 私たちの家の近くにある”虹の丘”に、いつも黒い服を着た男の人がいたでしょう? 近寄りがたくて遠くから見ているだけで、顔はよく覚えていないけれど…… その人って…もしかしたら……」


 迦楼羅はグウィンと顔を見合わせた。弟の方もその男のことを覚えているようだった。グウィンが言う。


「あれが、ゴットフリーさんだったのかな?」

「う~ん……でも、だとしたら、二人はどこへ行ってしまったの? その話もラピスは教えてくれるのかしら」


 そうこうしているうちに、四人は双子の家の前までやって来た。ココが点けておいてくれた玄関燈の前で、


「じゃ、話の続きはまた来週の週末にな」


 そう言って去ろうとするラピスを、迦楼羅が慌てて呼び止めた。彼にどうしても言っておきたいことがあったのだ。


「ラピス、一つだけお願いっ! 私、ゴットフリーと母さんが迷宮にあった二つの扉のどちらを選ぶか、ものすごく気になってるんだ。だから、次の話はそこから始めて」


 笑って頷くラピス。その時の彼の緑青色の瞳は夜空に輝く星のように綺麗だった。


「おやすみなさ~い」

「おやすみなさい」


「また、来週、黒馬亭でな」


 そう言って双子に手を振ると、ラピスは天喜と連れ立って、それぞれの家に帰って行った。



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