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5th Stage

 収録を終えた青田は、先に帰ろうとする風野を呼び止めた。


「ちょっと話があるんだけど」

「話って?」


 風野は、相手から突然声を掛けられてきょとんとしている。青田は、風野の左手をつかんで誰もいない廊下へ出ると小声でひそひそと話し始めた。


「さっき言った急な仕事って何なのか?」

「どうしても外せないイベントの仕事が入ってきたもので……」


 共演者が耳打ちしていると、青田はスマホで見た気になるニュース記事の内容を口にした。それは、お笑い芸人にとって無視することのできない重大な出来事である。


「風野、まさか闇営業とかじゃないだろうな」

「闇営業って、そんなものには一切手を出していないぞ」


 仕事が少ない芸人は、リスクがあっても事務所を通さない闇営業に手を出しやすい。青田が懸念しているのは、反社会的勢力が絡む闇営業に風野が関わっている可能性が皆無ではないからである。


「本当か?」

「本当だ! 信じてくださいよ」

「そうか……。それならいいけどね」


 たった1つの事柄で揉めたくないのは、青田も風野も同じである。小声での会話を終えると、2人はスタジオが入居しているビルの出入り口で別れることにした。


「闇営業に手を出していないと言うけど、いつもギリギリでスタジオに入る時に言い訳をしているとなあ……」


 青田は、風野に対するモヤモヤがまだ完全に消えていない。それでも、さっきのことで次の仕事まで影響を及ぶのは避けたいところである。


「赤井や黄島を待たせるわけにはいかないなあ」


 他のメンバーは、向かい側にあるテレビ局へ番組収録のために一足先にきている。青田は、スマホ画面に表示された今日のスケジュールに従いながらテレビ局の中へ入った。




 この日の仕事を全て終えた俺たちは、本拠となるマンションの一室へ戻ってきた。テーブルの周りには、3人の男が大の字のように床の上で仰向けになっている。


「なあ、赤井」

「青田、どうしたんだ」


 青田は、この日に配信番組の収録へきた風野のことを俺に聞いてきた。少なくとも、風野は時間にルーズであることは俺と青田の共通認識になりそうだ。


「急に仕事がって、風野は何の仕事をしているんだ」

「闇営業ではないとは言っていたけど……」

「たまたまならともかく、毎回のように収録ギリギリだとなあ……。あえてクズ芸人として演じているかもしれないけどね」


 俺たちは、笑ジャックをコント師として越えなければならない存在として見ている。それだけに、同じコンビ内で野村と比べて風野の仕事量が少ないことにどうしても気になってしまうのは俺たちだけだろうか。

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