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4th Stage

 翌々日、青田は『青田と風野のツーショット』の収録で配信番組対応のスタジオへ入室した。このスタジオの窓を挟んだ向かいには、シンゴーキがレギュラー出演するテレビ局の放送センターが姿を現している。


 番組は『CeroTube』(セロチューブ)を通して配信されるので、アクセスすれば誰でも無料で見ることができる。風野とのコンビで番組がスタートしたのは、『コントグランプリ』の決勝進出で注目を浴びた直後の2018年1月のことである。


 ちなみに、番組タイトルで青田が先にきているのは、シンゴーキのメンバーとしての知名度が上がってきたからに他ならない。もしも、2年ぐらい前に番組が始まっていたらタイトルの冠が逆になっていただろう。


 いくらお笑いコンテストに優勝しても、その勢いを維持することはたやすいことではない。青田と風野の置かれている状況は、仕事のオファーが現時点で多いか少ないかを端的に表している。


「風野、まだきていないのか」


 青田は風野がスタジオにくるのを待ちながら、構成作家や制作スタッフと打ち合わせをしている。事前に4回分を収録するフリートークの番組なので、台本というのはあってないようなものである。


 収録まで30分を切ったが、風野はスタジオに入ろうとする気配がまだない。青田がいるテーブルの向かい側では、複数のスタッフがひそひそと小声で話をしている。


「もうすぐ収録なのにまだこないとは……」

「収録ギリギリというのは今に始まったことじゃないからな」


 スタッフがそういうのも無理はない。この番組がスタートしてからというもの、相方がくるのは収録直前という状態が当たり前のようになっている。


 固定されたセットの左側の席に座った青田は、誰も座っていない右側の席を目にしながら収録が始まるまでリラックスしている。


 そんな時、スタジオ内に姿を現した1人の男が青田の隣に座った。


「風野、遅いぞ」

「ごめんごめん。急に仕事が入ったもので」


 この言葉が言い訳にしか聞こえないのは、青田だけではないはずだと思う。相手への不信感も芽生えてきそうだが、とりあえず今は番組収録に集中することが先決である。


 本番が始まると、コンビやトリオでの立ち位置が異なる2人がいい意味での化学反応によって軽快で爆笑を呼ぶトークが展開された。スタッフも、青田がメインで進んだおかげで無事に収録が完了したのでホッと胸をなでおろしている。


 阿吽の呼吸で番組収録を終わらせた2人だったが、現実に戻ってお互いの認識にずれが生じていることにはまだ気づいていないようである。

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