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23rd Stage

 坂塚は、表からでは分からない風野の家の裏側を撮影した写真をこの目でじっと確かめている。その姿は、感情を出すことなく冷静に証拠と向き合っている。


「やっぱりなあ……」

「えっ? 家の中へ入ったの?」

「赤井さんと違って、僕は家に入ったことはないよ。事前に下見に行ったことはあるけど」


 シンゴーキチャンネルで配信した共同生活企画を行う際に、坂塚は風野の家がどの場所にあるのか事前のロケハンで確かめたそうだ。


「ロケハンの時に撮った写真をここへ置いておくから見てごらん」


 俺の前に坂塚が差し出したのは、風野の家を外観から撮影した写真の数々だ。しかし、カーポートを取りつけた駐車場に置いているのは自転車しか写っていない。


「ここには、ワンボックスカーもあるはずなのだが……」

「ワンボックスカーって?」

「実はなあ、4カ月近く前にネタ探しを兼ねて散歩した時にコーポに横付けしていた軽のワンボックスカーがあって……」


 カバンの中からネタノートを取り出すと、ページの途中に書かれたナンバープレートの番号を坂塚に見せることにした。


「どれどれ、『品川58× そ××-××』か……」

「風野の駐車場にも同じようなワンボックスカーがあるけど、ナンバープレートがここに記したのと全く同じ番号だ」


 俺は、坂塚の証拠写真に車が写っていないのを見てため息をついていた。いくらナンバープレートの番号が分かっていても、実物がなければ何の意味をなさないからだ。


 すると、坂塚は実話誌の記事にコメントを出した人物の名前を指差した。その名前は、俺がかつてコンビを組んだ相方の名前とそっくりだ。


「赤沢彰吾って、まさか……」

「他の番組で放送作家として仕事したことが何度もあるからね。赤井さんも、お笑いコンビを組んだことがあるみたいだし」


 それはまさに図星だ。コンビを混んでいた当時は。相方の名前がカタカナで『赤沢ショーゴ』と名乗っていたけど……。


「今日は酒を飲んでいるから車を運転することができないけど、後日改めて今回の件について赤沢さんに聞いてみようと思う」


 坂塚は、放送作家仲間の赤沢と同じ現場で仕事しているから気心が合いそうだ。俺からすれば複雑な心境だが……。


 赤沢とのコンビが解散した時に、一部の雑誌が『ケンカ別れで解散』などと書き立てた記事は今も忘れていない。しかし、それらの事実は全くのデタラメだったし、コンビを解散する時も相方と納得した上で決めたことだ。


 そうはいっても、これまで赤沢が放送作家として構成を担当した番組に出たことはシンゴーキを結成してからは一度もない。円満で前向きにコンビを解散したのに、かつての相方と顔を合わせるのに二の足を踏むことに俺は自己嫌悪に陥ってしまいそうだ。

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