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21st Stage

 月曜パーソナリティ担当の『オラジ通り』の生放送を終えると、俺は局舎から出て晩秋の街並みを歩きながら進んでいた。


「あと1カ月でクリスマスか……」


 彼女いない歴が長い俺は、店頭に飾られるようになったクリスマスツリーを目にしながらため息をついていた。街路樹の木々も、緑豊かな葉っぱが赤く染まるようになってきた。


「もうすぐ冬がやってくるなあ」


 足元に落ちている落葉の数々は、秋の終わりと冬の前触れをこの目で感じ取る機会となっているようだ。


 そんな俺は、大手書店が入っている多目的ビルの中へ足を運ぶことにした。4階のフロアにあるその書店へ行くと、入口前に週刊誌等を入れているマガジンラックが鎮座していた。


「確か、あれの発売日は昨日だったな」


 ラックのほうを見渡すと、実話誌などが占める一角に『実話KQナイト』の表紙があることに気づいた。無名の女性タレントのグラビアをメインにしながら、煽情的でドギツイ裏ネタの見出しが並べているのがこの雑誌の特徴だ。


「よし! 誰も見ていないようだな」


 その雑誌に手を伸ばそうとした時、俺の隣に見覚えのある男の姿がいることに気づいた。よく見ると、その男も同じ雑誌を手に取ろうとしているところだ。


「あっ!」


 俺が横に振り向くと、そこには放送作家の坂塚が雑誌を手にしながら立っていた。予期しない出来事に、俺たち2人は互いに驚きを隠すことができない。


「どうしたんだ、これが買いたいんだろ」

「い、いや……。ここで堂々と話すのはどうか思うけど」

「それなら、わしが行きつけの居酒屋でいっしょに話そうか。そこは完全個室になっているし」


 坂塚に連れられて向かった先は、『矢倉乃太鼓』の看板が掲げられた居酒屋だ。店内に入ると、2人専用の個室が空いていたのでそこへ入ることにした。


 幸いなことに、今日は歩きで入店したので気兼ねなくお酒を愉しむことができそうだ。テーブルの上には、中ジョッキに注がれたハイボールが2本置かれている。


 俺たちは、ハイボールを口に運びながら串焼きやタコのぬた和えを味わっている。


「それじゃあ、勘定は別々でということで」

「ああ、分かった」


 お互いの会話が弾む中、坂塚は書店で手に入れた例の雑誌を俺のほうへ差し出した。表紙の見出しには、『追及スクープ第2弾』と前号で取り上げた記事の続報が目に入った。


 けれども、前号みたいにXやZのような記号をこの見出しには使っていない。なぜなら、表紙の見出しにはこのように載っていたからだ。


「追及第2弾! 『コントグランプリ』王者芸人Kが行った犯罪の瞬間」


 ここまで言い切る見出しに釣られるように、俺は『実話KQナイト』の本誌を開くことにした。

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