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8話 初☆スカート 


 大変な事になった。今まで起きた事が夢なのではないかと思うくらい、全てが非現実的だ。自分の部屋に戻ってきた蓮は、ごちゃごちゃになった頭の中を一旦整理し、深呼吸してから言った。


「何でズボンの在庫が切れてんだよ!」

「そこ?」


 錐野が思わずツッコミを入れる。加藍から受け取った服は、初心者魔法使いが修行をする時に着る専用の服で、最初のうちはそれを着ないと初心者は魔法が使えない。

 出来る限りスカートを穿きたくない蓮にとって、渡された服がスカートだった事は、自分の命の次に重要であった。しかし、だからといってズボンの在庫が準備できるまで待つ時間も惜しい。


「なあ、錐野。私服じゃ駄目なの?」

「駄目だ。その服には特別な魔力が込められている。最初のうちはそれがないと魔法が使えない。そんなに嫌なら俺が使ってたやつをあげようか?もう使わないし」

「お前のじゃサイズが合わないだろ…わかった。このスカートを穿くよ」


 嫌だなあ、と言いながら渋々着替えを始める蓮。着替えている間、錐野は蓮を見ないように後ろを向いて、推理小説を読んでいた。しばらくして、「着替え終わった」という声が聞こえたので、錐野は読んでいた本から視線を蓮の方に移す。

 

 蓮は複雑な心境だった。上のケープコートはいいのだが、問題はスカートだ。ズボンと違って、太ももに外の空気が当たる。スカートが肌に触れる感覚も、少しくすぐったくて落ち着かない。


「やっぱり落ち着かないな…」

「そうか?似合ってるよ。可愛い」

「可愛いって…お前なあ」


 思った事を率直に伝えた錐野に対し、蓮は呆れた顔をする。


 錐野は端正な顔立ちをしているので、女子からの人気が高い。彼がバレンタインの日、大量のチョコレートをもらっているのを蓮は知っている。もし錐野の事が好きな女子が今の台詞を聞いたら、飛び跳ねながら喜ぶんだろうな…蓮はスカートの裾をヒラヒラ揺らしながらそう思った。


「好きな服が着たかったら早く腕を上げることだな」

「はあ。そもそも、どうやって魔法なんて使えるようになるんだよ」

「それをこれから俺が教えるんだが…まあ、簡単に言うと場数を踏む、だな」


 場数を踏む、それは魔法使いに限らず全ての物事に通じる事なのでは…そう思った蓮だったが、それ以上は何も言わなかった。錐野は手にしていた本を閉じ、椅子から立ち上がって言った。


「今日はもう休んだ方がいい。色々あって疲れたんじゃないか」

「ああ、そうするよ」

「ところで、明日は学校には行くのか?」

「あ」


 錐野に言われてハッ、と気付いた様子の蓮。色々な事があってすっかり忘れていたが、問題は山積みである。

 まず、学校に行くにはどうすればいいのかという問題。顔立ちも身長も変わってしまった今の蓮の姿では、まず男装で誤魔化すのは不可能だろう。正直に今までの事を伝えるにも、信じてもらえるかどうか…頭を抱える蓮の手に、錐野は黒色のチョーカーをそっと持たせて言った。


「何だこれ。首輪?」

「俺の魔法を使って作ったチョーカーだ。それを首につけていれば、一般人がお前を見ても元の男の姿に見えるようになる」

「えっ何それ、すげえ便利じゃん!じゃあ、もうこれで学校に何も問題なく行けるな!」

「だが、魔法使いと影には通用しないし、女の姿がバレる事になるから気を付けろよ」


 大丈夫大丈夫、と蓮は軽い調子で答えると、チョーカーを首につける。特に何も変わった様子はなかったが、これで明日から何事もなく学校に通える、そう思った蓮は安堵した。





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― 新着の感想 ―
[気になる点] 待って…待って… しぶしぶスカートをはくのはとてもいいです。刺さります。 とてもいいんですが、しかし・・・パ下着は? [一言] お母さんがいなかったのってそういうことか!
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