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29話 人形が住む洋館(1)


「これより、メイド服作戦を開始します!」


 瑠依は今までにないくらい張り切っている。チーム015の4人は、任務でとある洋館に訪れていた。その洋館は、他の魔法使いから様子がおかしいとの報告があった建物で、チーム015が調査する事になった。


―――それはよかったのだが、問題は4人ともお揃いのメイド服を着ている事だ。蓮はスカート部分を押さえながら、力なく呟いた。


「どうしてこんな事に…」


 時は数時間前に遡る。





 チーム015がBランクに上がってから2回目の任務。2回目からはもう錐野は同行しないが、蓮が心配だったのか、彼は待ノ間まで見送りにきていた。錐野はまるで息子を心配する母親のように、蓮に声をかける。


「魔視石は持ったか?チョコに魔力を与えたか?後は…」

「お前は俺の保護者か!」

「違うのか?」

「違うだろ!」


 そんな2人のやりとりに、瑠依が口をはさむ。


「兄ちゃーん。私の事は心配しないの?可愛い妹だよ?」

「お前はしっかりしているから大丈夫だろう。でも、蓮はマジで抜けてるところがあるから…」

「あー、まあね。そこが蓮の可愛いところだし!」


 俺はそんなふうに思われていたのか。幼馴染み2人にそう言われて、蓮は軽くショックを受けた。助けを求めるように、夢乃の方を向く。


「夢乃…俺、そんなに抜けてる?」

「えっ。まあ…はい。そうかもです」


 夢乃にまでそう言われて、蓮は言葉を失ってしまった。日衣菜は同情するかのように、彼の肩を軽く叩く。


「来条君、これから頑張ろう?」


 しょんぼりとしている蓮を連れて、チーム015は待ノ間の扉を開くと、いつも通り藤井が出口付近に立っていた。


「チーム015だね。君たちには印番号214の地点へ向かってもらう。あそこには鏡界内でも有名な立派な洋館があるんだが、どうやらそこに影が入り込んだらしいと、他の魔法使いから報告があった。今日の任務は、洋館内の調査と解決だ」

「藤井さん、何で今回の任務は俺たちが選ばれたんですか?」


 藤井の話を静かに聞いていた蓮が挙手をして質問をする。


「今回の任務は、4人の少女で構成されたチームじゃないと務まらないからだよ。君たちはそれに当てはまる」

「待ってください藤井さん。俺は男ですよ」

「……それと、今回の任務は赤崎さんの特殊魔法が役に立つとのことだ」

「無視しないでください」


 藤井が蓮から気まずそうに目を逸らす。魔法使いは万年人手不足だ。藤井も、蓮が男である事は知っているが、任せられそうなチームが他にいなかったのだろう。後ろめたそうにしている藤井からその背景を感じ取って、蓮は仕方なくその任務に参加する事にした。


 目的地の洋館は森の中にある。深い森を抜けると、蓮達の前に黒いレンガ造りの立派な洋館が姿を現した。建物の前には黒いバラの庭園があり、全体的に厳かな雰囲気が漂っている。


「はーい!こんにちは!貴方たちが今回の依頼を受けてくれる子たちね!私は糸形(いとがた)(めい)。目の前にある洋館を管理している魔法使いです!」


 洋館の門の前まで来た蓮達を出迎えたのは、艶やかな銀色の髪を持つ大人の女性だった。黒のドレスを纏ったその女性は、落ち着きのある身なりからは想像ができないほどに陽気な声で瑠依達に話しかけてきた。


 リーダーである瑠依は、チームを代表して迷に挨拶をする。


「チーム015のリーダー、瑠依です。よろしくお願いします。洋館の様子はどうですか?」

「んーそれなんだけどね…実は私、まだ建物の中に入ってないの。というのも、洋館全体に魔法がかけられていてね…ある条件を満たした者じゃないと入れなくなってしまったの」

「どんな条件ですか?」

「メイド服を着た女の子しか入れないの」

「なるほど、メイド服ですか…」


 メイド服が中に入れる条件とか、魔法をかけた奴は何をお考えなのだろうか。蓮は真剣な表情で話し合う2人を見て、どう反応していいのかわからなかった。蓮が遠い目をしていると、瑠依が突然「フッフッフ…」と怪しい笑い方をし始めた。


「この任務、どうやら我々のためにあると言っても過言ではありません」

「過言だろ」

「あるんですよ。メイド服が。ちょうど4着…私の自宅にね!」

「何でそんなにあるんだよ」


 蓮のツッコミに耳を貸さずに、瑠依は塊を呼び出してメイド服を4着用意させた。塊には武器を召喚するだけでなく、自分の所有物を自由に出す事ができる機能がある。


「はい皆、メイド服着て。はい」


 渡されたメイド服は以前、瑠依に着させられたものだった。フリルがついた丈の短いスカートを見て、蓮は憂鬱な気分になる。


 そんな中、蓮達にメイド服を手際よく配る瑠依を見て、何故か迷は目を輝かせていた。


「なんでそんなにメイド服を持っているの?」

「このメイド服は、ハロウィンの時にチームの皆と一緒に着るために準備していたもので、全て丹精込めた私の手作りです。美少女に可愛い服を着せる事が、私の生きがいなんですよ」

「瑠依ちゃん、アナタ…最高よ!将来必ず大物になるわ!」

「フフ、褒めても何も出ませんよ?迷さん」


 迷と瑠依はどうやら波長が合うようで、一瞬で仲良くなった。そんな2人を見て、置いてきぼりになった日衣菜と夢乃、蓮はお互い顔を見合わせて苦笑いした。


―――そんなこんなで今に至り、瑠依が妙に張り切っているのは、迷と仲良くなったからである。メイド服を着たチーム015を見て、迷が腕を組んで静かに頷く。


「素晴らしいわね。これなら洋館に難なく潜入できるわ。それで本題なんだけど、瑠依ちゃん、特殊魔法で人形を操作できるんだって?」

「はい!でも、それが今回の調査に何の関係が?」

「そうね。これは順を追って話をしなければいけないわね…」


 迷は今までの経緯を話しはじめた。



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