表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/116

25話 探索任務


「私たちチーム015は、Bランクに昇格しました!」


 待ノ間に集まったチームメンバーの前で、瑠依が嬉しそうな口調でそう言った。


 蓮がチーム015に入ってから1か月が経っていた。


 ここ数週間は獣型の影の退治がメインとなり、チーム015は任務を着実にこなしていた。その結果チーム015の実力が認められ、Bランクへの昇格が決定したのであった。


「それは凄いな!でもBランクになると何か変わるの?」

「今までは公園とか、決められた場所で影を倒してきたけど、これからは探索任務もできるようになるのよ!」


 Cランクのチームに与えられる任務は、比較的弱い影の退治である。Cランクが退治する影は、決められた場所に意図的に集められている。一方、Bランク以上のチームには、鏡界内で探索を行い、赤色の影を見つけ出す任務が追加される。


 探索任務では、人型などの戦闘能力が高い影に遭遇する事も少なくない。探索任務を行うチームは、虫型等のCランクでも倒せる弱い影を見つけた場合、魔光会が指定した場所に転送してCランクのチームに退治を任せる。強い影だった場合は転送せずにその場で退治する。


 Cランクのチームには探索任務はなく、Bランク以上のチームが転送した影がいる場所へ行き、退治する事が主な任務となる。


「えー、じゃあ危険が増えるって事じゃん」

「何言ってるのよ蓮。特殊魔法っていうのは、危機的な状況に陥った時に発動しやすいといわれているのよ。だから使えるようになるには、より刺激的な任務が必要なの!」

「む、それもそうか…」


 今までの虫型の影ですら大変だったというのに、探索任務で強い影と遭遇する機会が増えるなど、蓮にとっては到底喜べるような話ではなかったが、特殊魔法を使えるようになるには弱い影の相手をしているばかりでは駄目だというのも事実。変化を怖がっていては何も得られない。苦い顔をしている蓮の横で、やる気に満ち溢れた目で日衣菜が言う。


「やっぱ私は、戦うなら手ごたえがある方が燃えるかな!夢乃ちゃんは?」

「え、私ですか?やっぱり平和が一番というか…あ、でも戦うのも嫌いじゃないんですけど…」


 どこか煮え切らない様子の夢乃は、いつもより小さな声でそう答えた。





 チーム015が待ノ間の外に出ると、いつもと同じように藤井とドラゴンがいたが、その隣にもう1人、人の姿がある。


「兄ちゃん!何でここに?」


 人の姿の正体は赤崎錐野だった。瑠依は驚きながらも、嬉しそうな顔で兄に話しかける。すると、藤井が説明をし始めた。


「君たちは晴れてBランクのチームになったわけだが、探索任務は初めてだろう?だから最初の1回目はAランク以上のチームに所属している魔法使いが1人、同行する決まりになっている。錐野君はSランクチームの魔法使いだ。今日は彼が君たちと一緒に任務に参加する」


 Sランク、と聞いて蓮は目を丸くする。魔法使いとしての実力がある事はわかっていたが、一番上のクラスのチームだったとは。


「錐野、お前凄いんだな」

「そうか?よくわからん」

「わからんって…お前なあ」


 高校生でSランクチームに所属している魔法使いはほんの一握りしかいない。間違いなく錐野は実力のある魔法使いだが、自分の事について無関心な錐野は特にその事についてなんとも思っていなかった。


 お互い軽い挨拶を済ませた後、チーム015と錐野は、探索任務へと向かう。


 探索任務は赤色の影を見つけ出す事が目的なので、影が多く生息する場所へ行く必要がある。錐野はジャンパーのポケットから紙の地図を取り出す。


「この地図には影が発生しやすい場所に印をつけてある。影は、路地裏やトンネルのような暗い場所を好む傾向があるから、そういった場所を重点的に探せ」


 瑠依は錐野の広げた地図を覗き込む。


「この地図の印がついているところにいけばいいの?」

「地図の印には番号がついているだろ?任務で探索する場所は魔光会側が指定する。俺たちは今回、150の番号がついたところへ行くようにって藤井さんから言われた」


 150の番号が付いた場所は今いる地点からそう遠くない。チームが徒歩でその地点まで向かうと、そこは長いトンネルだった。


「え?ここ入んの?マジで?お化けとかいそうなんだけど」


 暗いところとお化けが苦手な蓮は、怯えながら錐野の右腕を無意識につかむ。トンネルの中は暗くてよく見えない。この中を歩くとなると光が必要だった。


「んもう。蓮は怖がりちゃんねえ。私が便利アイテムを使ってあげますからねー」


 赤ん坊をあやすような口調でそう言った後、瑠依はウエストポーチから黄色いアヒルのぬいぐるみを取り出す。そのアヒルは次第に体全体が光りはじめ、周りを明るくした。アヒルが放つ光に反射的に蓮は目を瞑る。


「うわっ。アヒルが光った」

「これをライト代わりにしましょ。さ、トンネルの中へレッツゴー!」


 チーム015と錐野は、瑠依の掛け声と共にトンネルの中へと入っていった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ